Livio Suppo Track Report Livio Suppo Track Report

Vol. 157

天候に翻弄されたイギリスの週末。タフな戦いが続く

グランプリの舞台に復帰して7年目を迎えたシルバーストーン。伝統あるサーキットで開催された第12戦イギリスGPは、今年も不安定な天候が続き、選手とチームは厳しい戦いを要求されました。

フリー走行が行われた金曜日は、気温も路面温度も低く、加えてバンピーな路面コンディションであったこともあり、タイヤがグリップしない状況に苦戦しました。そして、フリー走行と予選が行われた土曜日は、午後になってから雨が降り、Q1、Q2ともにウエットコンディションの中でタイムアタックが行われました。

マルク・マルケスは、ドライコンディションのフリー走行でトップタイムをマーク。ウエットコンディションとなった予選前のフリー走行(FP4)でも、続けてトップタイムをマークしました。しかし、上位12台で競われるQ2では、セッション終盤のタイムアタックで痛恨の転倒を喫して5番手。4年連続のポールポジション獲得は果たせませんでした。

ダニ・ペドロサは、前戦チェコGPの後に行われた公式テストでセットアップを進めることに成功。その成果は、厳しいコンディションが続いたイギリスGPでも明らかで、着実にタイムを更新してフリー走行では総合8番手。ウエットコンディションになった予選では4番手までポジションを上げました。シーズン中盤戦に入って苦戦が続いていたペドロサですが、完全復活とは言えないまでも、本来の走りに確実に近づいていることをアピールすることになりました。

そして迎えた決勝レースは、ドライコンディションとなりますが、低い気温と路面温度は変わらず、タイヤ選択が難しい状況となりました。最終的にフロントにハード、リアにミディアムと前後ともにハード側を選択した選手、前後ともにソフト側を選択した選手と大きく分かれましたが、今回はハード側の選択した選手が表彰台を独占することになりました。

そうした状況の中で、フロントにソフト、リアにミディアムを選択したマルケスと前後ともにソフトを選択したペドロサは、カル・クラッチロー(LCR Honda MotoGP)、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)らとセカンドグループを形成しました。

マルケスは、フロントにソフトを選択したため、前半はタイヤをセーブし、終盤になってペースを上げる作戦を取りました。そして、終盤になって2番手に浮上するも、ブレーキングミスによるオーバーランを喫して5番手へとポジションを落とし、最終的に4位でフィニッシュ。そのマルケスと最終ラップに4番手争いを繰り広げることになったペドロサは、現状では前後ソフトがベストと判断。タイヤをセーブしながら5位でフィニッシュしました。

第12戦イギリスGPは、Repsol Honda Teamにとっては表彰台に立てないレースとなりましたが、マルケスは総合首位を堅持して2年ぶりのタイトル獲得にまた一歩前進。ペドロサも復調を感じさせるレースとなり、後半戦の巻き返しに期待させるものとなりました。

―今回もRepsol Honda Teamにとっては、厳しいレースとなりました。今大会のレース戦略はどういうものでしたか?

「今大会も、レースウイークを通じて、不安定な天候でした。そのためタイヤ選択がとても難しいレースになりました。特にマルクは、プラクティスセッションで、ハードのフロントタイヤをテストする時間がなかったので、安全面を考えてレースではフロントにソフトを選びました。彼の戦略は、序盤にあまりプッシュしないでタイヤを温存することでした。その判断は間違っていなかったし、最後まで2番手争いをすることができました。ダニはフロントもリアもソフトだったので、できる限りタイヤを持たせる作戦でした」

―今大会のよかった点と悪かった点があればそれも教えてください。

「ポジティブな点は、マルクがチャンピオンシップでわずか3ポイントしか失わなかったことと、ダニがレース全体を通して力強いペースをキープできたことです。ネガティブな点は、マルクが2番手争いをしながら表彰台を逃したことですね。そのマルクと2番手争いをしたカル・クラッチローが、2週間前のブルノでMotoGP初優勝を遂げ、今回もいいレースをしたことは、とてもポジティブなことでした。また、ここ5戦でHondaが3勝し、コンストラクターズチャンピオンシップをリードしていることも、とても重要なことです。Hondaのすべての人にとってすばらしいことだと思います」

―レース中、ピットウォールから見ていて、どんな気持ちでしたか?

「ピットにいた私たちと同様にテレビでレースを観ていたすべてのファンも激しい表彰台争いに、とても興奮したと思います。今日、すばらしい仕事をしたマーベリックにはおめでとうと言いたいです。そして、マルクはもちろんのこと、カルやダニも戦闘的だったし、RC213Vがよくなっていることを実感しました。HRCの技術者がいい仕事をしていることを証明でき、とてもうれしいです」

―今回のサイドストーリーを教えてください。

「トニー・ボウがトライアル世界選手権のインドア、アウトドアで合計20回目のタイトルを獲得、ティム・ガイザーがMXGPで初のタイトル獲得を達成と、HRCにとっては特別な週末になりました。ライダーたちと彼らのチームに、このすばらしい結果に対して祝福したいです」

―今年は12戦を終えて7人のウイナーが誕生しました。この現象についてどう思いますか?

「今シーズンは、特別なシーズンになっていることは間違いありません。ファンにとっては、多くのライダーの優勝を見ることができているし、よかったと思います。これには主に3つの理由があると思います。1つ目が不安定な天候、2つ目が今年、新しいタイヤサプライヤーになったこと、そして、3つ目はマニュファクチャーの戦闘力です。

今年は何度も難しい天候になりました。”フラッグ・トゥ・フラッグ”になれば、いつもそうですが、ベストな戦略を選択したライダーがいい結果を得ることになります。タイヤに関しては、ミシュランがすばらしい仕事をしています。しかしライダーもチームも初めて経験するシーズンなので、正しいタイヤ選択をすることも、ミスをすることもあります。その結果、ライダーたちはアドバンテージを得られたリ、失ったりしています。

3つ目のマニュファクチャーについては、ドゥカティとスズキがこれまでよりも戦闘的になっていることです。これは共通ソフトウェアの採用という新しいレギュレーションが関係しているのかもしれません。とにかく全体的に今年のチャンピオンシップは、これまでにない最もエキサイティングなチャンピオンシップになっていると思います」

シーズンの後半はオーストリアGPとチェコGPの2連戦があり、1週間のインターバルのあとにはイギリスGP、サンマリノGPの2連戦と、選手にとってもチームにとっても集中力を要求されるレースが続いています。

そして今週は休む暇もなく、第13戦サンマリノGPが開催されます。総合首位のマルケスは、今季4勝目を狙うのはもちろんのこと、総合首位をキープしてリードを広げることが最大の目標になります。調子を上げてきたペドロサは、今季3度目の表彰台とシーズン初優勝を目指すことになります。Repsol Honda Teamの両選手の戦い、そしてHonda勢の走りに注目が集まっています。

HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート