Livio Suppo Track Report Livio Suppo Track Report

Vol. 155

苦戦を強いられるも、貴重なポイントを獲得。総合順位をきっちりとキープする

後半戦のスタートとなった第10戦オーストリアGPは、Repsol Honda Teamにとって、厳しいレースとなりました。レッドブル・リンクのコースレイアウトが、現状のRC213Vとは、それほど相性がよくなかったことが一番の理由ですが、そのため、ライダーとマシンのパフォーマンスを十分に発揮することができませんでした。

さらに、天候の変化がその状況に拍車をかけることになりました。金曜日の最高気温は15℃でしたが、土曜日は24℃まで上昇。終日、青空が広がった決勝日は最高気温が27℃を記録するすばらしい天候となりましたが、これにともないセットアップも目まぐるしく変わることになりました。

フリー走行初日は、8月としては寒い一日となりました。気温も路面温度も低い中で、ダニ・ペドロサが転倒を喫し、それからリズムを崩しました。その結果、予選は12番手。さらに、前戦ドイツGPからの連勝を狙っていたマルク・マルケスも、土曜日のフリー走行で、ロングストレートからのブレーキングでバランスを崩して転倒し、左肩を脱きゅうするというハプニングに見舞われました。幸い、午後のフリー走行と予選に出場して5番グリッドを獲得しましたが、完全ではない体調で決勝を迎えることになりました。

その中でマルケスは好スタートからトップグループに加わります。後半は、ドゥカティとヤマハ勢の4人にじりじりと遅れますが、5位でフィニッシュしました。マルケスが表彰台に立てなかったのは、転倒して再スタートを切り、13位でフィニッシュした第5戦フランスGPに続き、これが今季2度目。「左肩の脱きゅうの影響はなかった。言い訳にしたくない」とコメントしていたマルケスですが、完全な体調ではなかったことが、厳しい戦いを強いられた要因の一つでした。

しかし、厳しい状態の中でも5位でフィニッシュ。総合2位で今大会3位のホルヘ・ロレンソ選手(ヤマハ)にチャンピオンシップで5ポイントを縮められはしたものの、43ポイントのリードで依然として総合首位をキープ。表彰台には立てずも、タイトル争いを考えれば、非常に重要な5位フィニッシュとなりました。

また、フリー走行で転倒を喫し、その影響で予選12番手だったペドロサも、決勝レースでは徐々に本来のペースを取り戻し、7位までポジションを上げてフィニッシュ。総合4位をキープしました。

―初開催となったオーストリアGP。今大会のレースはどうでしたか?

「簡単な週末ではありませんでした。このサーキットについては、ほかのマニュファクチャラーの方がより相性がいいことは分かっていました。つまり、目標は表彰台争いでした。それ以上を求めることは、ほとんど不可能だということも分かっていました。そして、マルクが土曜日のFP3で転倒したあとは、目標がロレンソや(バレンティーノ)ロッシ(ヤマハ)とのギャップをできるだけ減らすことになりました。マルクはすばらしいレースをしました。序盤でプッシュして、レース後半は(マーベリック)ビニャーレス(スズキ)とのギャップをキープできましたからね。

ダニは金曜日から問題を抱えていました。転倒もしました。タイヤの温度が上がらず、ペースを見つけられませんでした。予選では12番手と、あまりいい結果を出せませんでした。そのため、決勝に向けての目標は、いいスタートを切って、序盤のトラブルを避け、自分のペースを見つけることでした。彼はとてもいいスタートで、そこから徐々に追い上げました。しかし、序盤でタイムをかなり落としていたので、ビニャーレスには近づけませんでした。でも、レースではいいペースを見せたと思います」

―Repsol Honda Teamにとっては厳しい結果でしが、今大会のレースでよかったところ、悪かったところは……。

「ポジティブな点は、最も相性がよくないサーキットで、マルケスが一番のライバルに対してわずか5ポイントしか落とさなかったことですね。つまり、マルクがロレンソに対して43ポイントの差をつけてチャンピオンシップのリードを保ったことです。ネガティブな点は、アクセレーションがよくなかったことですね。そのためマルクとダニはレースウイークを通して、十分に戦うことができませんでした」

―レースをピットウォールから見ていて、どんな気持ちでしたか?

「マルクは、不必要なリスクを負わずに、できる限りの結果を出してくれました。そして、今回もしっかり走ってくれたし、貴重なポイントを獲得したことを、うれしく思います。また、ダニがとても難しい状況だった金曜日と土曜日のあとに、いいレースをしたこともうれしいですね」

―今大会のサイドストーリーを教えてください。

「ピットにスペシャルゲストが来てくれました。モトクロス世界選手権の最高峰クラスMXGPで総合首位を走るティム・ガイザーです。彼はレッドブル・リンクから約100qのスロベニアに住んでいて、MotoGPのイベントは彼にとって初めての経験でした。彼はMXGPですばらしいシーズンを過ごしています。わずか19才で世界チャンピオンになるかもしれません。

また、私たちにとってもレッドブル・リンクは初めてとなりましたが、全員が感激したと思います。サーキットの施設はMotoGPカレンダーで一番よかったと思います」

―Repsol Honda Teamは、7月の公式テストに参加しませんでした。結果論になりますが、やはり、テストに参加した方がよかったのではないでしょうか?

「今大会に向けて、ここでテストをしなかったことは正しい選択だったと今も思っています。マルクとダニにとって、今シーズンのプライベートテストはあと2日しか残っていません。この2日間を2017年のテストにとっておきたいと思っていました。もしテストをしていたとしても、レースの結果はそれほど変わらなかったと思います。このサーキットの特徴は私たちのマシンにはあまり合っていませんでした。つまり、今回の結果は、いいセットアップを見つけられたかどうかの問題ではなかったと思います」

ここまで10戦の中で、レッドブル・リンクでのオーストリアGPは、今季最多の観客を集めました。決勝日に9万5000人、3日間では21万を超える大観衆が集まり、大成功の大会となりました。オーストリアGPに続いて、2週連続の開催となるチェコGPも、これまで最多入場者数を何度も記録してきたサーキットです。昨年の大会は、マルケスが2位、ペドロサが5位でしたが、タイトル奪還を目指すマルケスは、2013年以来、3年ぶりの優勝を目指し、ペドロサは、2014年以来2年ぶりの優勝にチャレンジすることになります。

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