モータースポーツ > ロードレース世界選手権 > HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート > vol.142雨のもてぎを制したペドロサが今季初勝利、マルケスは4位

Vol.142

雨のもてぎを制したペドロサが今季初勝利、マルケスは4位

2015年シーズンも終盤戦を迎え、第15戦日本GPが10月11日(日)に栃木県ツインリンクもてぎで開催されました。Hondaのホームグランプリであり、さらにホームコースでもあるこのサーキットで争われた24周の決勝レースで、Repsol Honda Teamのダニ・ペドロサ選手が劇的な優勝を達成しました。フルウエットコンディションでスタートした戦いは、周回を経るごとにレーシングラインが少しずつ乾いてくる難しい状況になりましたが、序盤にタイヤを温存していたペドロサ選手は、後半にめざましい追い上げでライバルたちを次々とオーバーテイク。最後は8秒573の差を開いてドラマチックなレースを制し、最高の笑顔で表彰台の頂点に登壇しました。

チームメートのマルク・マルケス選手はレース前週のトレーニング中に左手第五中手骨を骨折するケガを負ってしまいましたが、手術を無事に終えて来日。土曜の予選では負傷を感じさせない力強い走りでフロントロー3番手を獲得しました。決勝レースでも、厳しい戦いに最後まで耐え抜いて、表彰台こそ逃したものの、ケガの状態を考えれば期待以上ともいえる4位でフィニッシュしました。

目の前に次々と立ちふさがる困難に選手とチームが力を合わせて敢然と立ち向かい、強い意志と全員の結束力で最高の結果を獲得した第15戦の一部始終を、HRCチーム代表のリビオ・スッポが振り返ります。

―日本GPは、Hondaにとって非常に重要な一戦でした。今回のレースには、どのような戦略で臨んだのですか?

「今朝は未明から雨が降っており、難しい戦いになるであろうことは確実でした。強い降りではなかったので、ダニとマルクはともに、リア用にハードコンパウンドのウエットタイヤを装着してピットアウトしたのですが、他陣営の様子を見て両名ともグリッド上でソフトコンパウンドに交換をしました。状況が刻々と変化し、雨脚が強くなるのか、あるいは弱まっていくのか、予想ができない天候だったので、事前にレース戦略を組み立てることは事実上不可能でした。とはいえ、ダニはウォームアップセッションでもトップタイムだったので、雨のレースで速さを発揮してくれることは明らかでした。マルクも、ウエットコンディションではいつも安定して速いので、表彰台争いをしてくれると信じていました」

―今回のレースで得た収穫と問題点を教えてください。

「今日の収穫は、前戦のアラゴンGPからのいい流れを維持して、ダニが力強い走りをみせてくれたことです。この勝利で、ダニはキャリア通算50勝を達成しました。シーズン前半は手術と欠場で苦しい展開でしたが、それを乗り越えて再び表彰台の中央に戻ってきてくれたことを本当にうれしく思っています。一方、予想以上にマルクが苦戦してしまったのは、今回の課題といえるかもしれません。しかし、先週に骨折の手術をした直後であることを考えれば、4位というリザルトは上々の結果だと思います」

―決勝レースはどんな思いで見ていたのですか?

「レース序盤にダニは前方集団と8秒の差が開いていたので、この大きなギャップを埋めるのはかなり厳しそうだ、というのが正直な印象でした。しかし、しばらくするとロレンソ選手とロッシ選手のペースが落ちてきたのに対して、ダニは相変わらず好調なタイムを維持していたので、これはチャンスがあるぞという思いが、やがて確信へと変わっていきました。ダニのチーフクルー、ラモン・アウリンはこれが初勝利になりました。ラモンと全スタッフにとっても、今日の優勝は非常に喜ばしい結果です。マルクは、レース序盤から問題を抱えていることが明らかでした。シルバーストーンやミサノでは、ウエットコンディションでも速さをみせてくれましたが、今日は本来のいいフィーリングを得ることができませんでした。さまざまな事情を考えれば、それもやむを得なかったと思います。それでも4位でゴールしてくれたのだから、すばらしい結果だといえるでしょう」

―日本GPの裏話のようなものは、なにかありましたか。

「今回の日本GPでは、今年から本田技研工業の社長に就任した八郷さんがレース現場を訪問してくださいました。表彰式では、八郷さんに優勝のコンストラクタートロフィーを受領してもらうこともできました。ダニからシャンパンを浴びせかけられても、きっと不愉快ではなかったと思いますよ! シーズンもいよいよ残り3戦になりましたが、我々はさらに高い結果を目指して挑戦を続けていきます。次戦のオーストラリアGPでも、引き続き力強い応援をよろしくお願いします」