Testingカタール公式テスト
2018.03.01(木)-3(土)
ロサイル・インターナショナル・サーキット
1月下旬のマレーシア・セパン・テスト(1月28日~30日)、2月中旬のタイ・ブリーラム・テスト(2月16日~18日)に続き、開幕戦に向けて最後の調整の場となるカタール・テストが、カタールGPの舞台となるロサイル・インターナショナル・サーキット(5.380km)で行われました。カタールGPは、2004年に第1回大会が行われ、08年には史上初のナイトレースとして開催されました。しかし、深夜に及ぶタイムスケジュールは、ライダー、関係者への負担が大きいということで、11年からは、通常3日間の開催を4日間に分散する変則スケジュールで行われてきました。今年はナイトセッションの走行時間を減らし、午後1時から午後8時にかけてタイムスケジュールが組まれ、再び、3日間開催となります。
そのため、テスト時間も午後1時にスタートして午後9時に終了。デイタイムが約5時間、ナイトセッションが約3時間という時間帯で行われました。
Honda勢でトップタイムをマークしたのは、カル・クラッチロー(LCR Honda CASTROL)。3日間で153ラップを消化、トップから0.428秒差の総合4番手で最終テストを終えました。セパン・テストで総合3番手、ブリーラム・テストで総合4番手と、いずれのサーキットでも順調にメニューを消化したクラッチローは、カタール・テストでは、フロントのフィーリングに課題を残しましたが、本番を想定したロングランでは表彰台はもちろんのこと、優勝を狙えるラップを刻み、順調な仕上がりをアピールしました。
クラッチローは、この冬は身体作りに多くの時間を割きました。自転車トレーニングで走った距離は実に7000km。一段と引きしまった身体でウインターテストに挑んだクラッチローは、加速と最高速を改善し、乗りやすさも加わった2018年型RC213Vのエンジンパフォーマンスを遺憾なく発揮、今季の活躍を期待させるものでした。
マルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、3日間で最多周回数となる181ラップをこなして総合7番手。今回のカタール・テストでは、一度もトップタイムをマークすることはありませんでしたが、着実にメニューを消化、万全の状態でウインターテストを切り上げました。セパン・テストは総合8番手、タイ・テストは総合3番手。今回のテストも総合7番手と、ロングランに多くの時間を割き、最終日に行ったセミロングランでは1分55秒台前半のタイムで連続周回し、ライバルを一歩リードするハイペースで最終確認を終えました。
今年のテストでは、セパン・テストではテストに参加した24選手中2番目、ブリーラムとカタールでは最多周回数を刻み、長いシーズンに向けてデータ取りに集中しました。カタールGPの行われるロサイル・インターナショナル・サーキットは、14年に優勝経験はありますが、シーズンを通して苦戦するサーキットの1つ。そのサーキットのリザルトが2018年型RC213Vの仕上がりの1つのバロメーターになりますが、セパン、ブリーラム同様、ロングランの安定した走りは、3年連続5回目のタイトル獲得に向けて一歩前進したことを印象付けました。
チームメートのダニ・ペドロサは、3日間で116ラップをこなし総合12番手。2日目の走行で転倒した際に左手を痛め、その影響で最終日はペースを抑えての走りを強いられポジションを落としましたが、セパン、ブリーラムの好調をそのままキープして本番を迎えることになりました。昨年は、ウエットコンディションで苦戦。それがチャンピオンシップに大きな影響を与えましたが、今シーズンは、ウイークポイントを補強し、念願のタイトル獲りに挑みます。
2017年Moto2チャンピオンのフランコ・モルビデリ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、3日間で169ラップをこなし総合13番手。セパン、ブリーラム、そしてカタールと着実にRC213Vを乗りこなし、ポジションを上げてきました。開幕に向けて最後のテストとなったカタールテストの3日目は、これまでのベストとなる13番手。セパン、ブリーラムでは転倒が多く、Moto2からの乗り換えに苦戦していましたが、開幕戦カタールGPに向けてMotoGPマシンの攻略に成功しました。
セパン、ブリーラムとルーキー勢トップの走りを見せてきた中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)は、165ラップをこなし21番手でした。今回のテストは、初日14番手、2日目13番手と相変わらず好調な走りを見せていましたが、最終日の走行開始直後に2コーナーで転倒、その影響でセッティングの出ている1号車が使えなくなり、2号車で走行しなければならず、それが影響して21番手へとポジションを落としました。リザルトは3回のテストでもっとも悪い順位となりましたが、依然として好調で、開幕戦カタールGPではルーキー勢トップはもちろんのこと、デビュー戦でトップ10入りを目指します。
トーマス・ルティ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、3日間で161ラップをこなし24番手。昨年の11月からテストを開始している中上、モルビデリに対して、ケガのためにテスト開始が遅れたルティでしたが、セパン、ブリーラム、そしてカタールと、着実にRC213Vのパフォーマンスを引き出すことに成功、これからの走りに注目されます。
優勝とチャンピオン争いが期待されるマルケスとペドロサ、そしてクラッチローの3選手。ルーキーながらも今年の活躍に注目される中上、モルビデリ、ルティの3選手。3チーム6人のHonda勢は、カタールでの調整を終えて、いよいよ開幕戦カタールGPに挑みます。
カル・クラッチロー(LCR Honda CASTROL) 1分54秒457 総合4位
「3日間を通して、マシンのフィーリングはよく、チームもいい仕事をしてくれました。ロサイルのナイトセッションは、時々、とても難しいコンディションになりますが、今回のテストは全体的にそれほど悪くありませんでした。そのおかげで3日間のテストスケジュールを無事に乗りきることができて、とてもハッピーです。初日はいくつか異なるセッティングにトライしました。昨年と最も違うのはエンジンなので、エンジンの特性に合わせてベストパッケージを見つけなくてはいけません。初日は順調にメニューを消化しましたが、2日目はフロントのフィーリングにてこずりました。クリップからのターンが思うようにいきませんでした。しかし、全体的にはまずまずで、ユーズドタイヤでたくさんの周回をこなすこともできました。また、ソフトタイヤで10ラップを走ることもできました。最終日は、開幕戦に向けて最後の調整の日となりました。まだまだ改善しなくてはいけないポイントはありますが、ドライコンディションでのフィーリングは、かなりポジティブです。課題は、フロントのフィーリングが完ぺきではないことですが、その理由は、どれも自分のライディングスタイルとタイヤが合っていないことだと思います。ただ、連続周回のアベレージは悪くなかったし、レースウイークにその部分を確認していきたいです。全体的にはとてもハッピーです。雨のテストでも、心配された視界は大丈夫だと感じました。ただ、トラックは非常に滑りやすく、この問題については、セーフティコミッションで報告したいと思っています」
マルク・マルケス(Repsol Honda Team) 1分54秒591 総合7位
「3日間のテストを終えました。これで、セパン、ブリーラム、そしてカタールとすべてのテストスケジュールを終了しましたが、全体的には満足のいくテストとなりました。今年のウインターテストは、レースペースでたくさんの仕事をこなしました。これはマシンをセットアップしていくうえで最も大切なことです。確かに、最後のテストとなったカタールは、他のサーキットに比べて少したいへんでしたが、最終日は1分55秒台で連続ラップすることができ、いい形で終えることができました。初日はベースのセットアップを見つける作業と電子制御に集中しました。エンジンのフィーリングは、最初は少しアグレッシブに感じましたが、最終的にはスムーズに乗れるようになりました。まだまだセットアップしていく必要があります。カタールは他のサーキットに比べてやらなくてはいけないことがたくさんあるのですが、とにかく、楽しんで乗ることができたのは大きな成果でした。2日目はいろいろ試し、途中で悪い方向にいきました。それもあってハードタイヤを履いたときに2コーナーで転倒しました。この転倒で2号車に乗ることになったのですが、2号車のフィーリングがよかったのは、とてもポジティブなことでした。さらにペースを上げるための方向性が見いだすことができたことも大きな成果でした。それが最終日の1分55秒台という連続ラップにつながることになりました。最終日はカーボンスイングアームを一度だけためし、かなりいいペースで走ることができましたが、もっと時間が必要だと感じました。開幕戦カタールGPは、当然、厳しい戦いが待ち受けていますが、レースを楽しめることを願っています。また、ウエットテストでは、照明の反射で白線など通常より見えにくい部分があり、とてもすべりやすいコンディションでしたが、雨が降ってもレースは可能だと感じました。とにかく、2週間後の開幕戦が楽しみです」
ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team) 1分54秒774 総合12位
「すべてのテストを終えて全体的にとてもハッピーです。最後のテストとなったカタールではトップタイムではありませんが、たくさんのメニューを消化して、多くのことを理解することができました。気温と路面温度の変化でどんな風にグリップが変わっていくのかということも学べたし、レースウイークでは、さらにステップを刻めると感じています。テスト1日目は、全体的に順調でしたが、2度の転倒を喫しました。カタールはいつも初日の路面コンディションがよくなく、加えて、ラインを外したためにフロントから転んでしまいました。いずれにしても自分のミスでした。この転倒をのぞけば、マシンのフィーリングはかなりよかったし、いいリズムで走ることができました。2日目は、初日の転倒の影響で左手が痛くて思うように走れませんでした。そのため、慎重に走らなくてはいけなかったのですが、少しでも多くメニューを消化しようとがんばりました。やり残したことはありますが、最終日はその遅れを取り戻すことに集中しました。セパン、タイに比べて、カタールは我々にとって難しいサーキットです。初日の転倒で左手を痛めたことで、すべて予定通りにはいきませんでしたが、レースウイークに向けてやるべきことは最低限やれたと思います。最終日にはウエットコンディションでテストを行いました。今日のようなコンディションでは、レースを行うかどうかはみんなで話し合いが必要だと感じました」
フランコ・モルビデリ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS) 1分55秒132 総合13位
「カタールはタイテストの状態で走り始めました。ロサイルは、いつも初日はとても汚れているので、路面がきれいになるまで待ちたい気分になるのですが、今回のテストは思っていたよりも汚れがなく順調に周回することができました。そのおかげで、ロサイルのライディングスタイルをつかむことができたし、ライディングスタイルもいろいろ試すことができました。ラップタイムをあげていくためには、コーナーの出口がとても重要になります。今はまだ完全にパワーを生かし切れていないし、もっとしっかりリアのグリップを使えるようにしなければいけません。今はその部分を攻略することに集中しています。2日目は、コーナー出口のウイリーをいかに抑え、そして、ミディアムタイヤでの連続周回のペースを改善することに取り組みました。それまであまり大きなセットアップの変更はしないでここまで来たのですが2日目はセッティングを大きく変えてみることにもトライしました。最終日はベースのセッティングを調整する程度にして、できるだけ連続周回することにしたのですが、結果的にペースを改善することができました。最終的にかなり気持ちよく乗ることがで、いい形でウインターテストを締めくくれたと思います。2週間後の開幕戦がとても楽しみです」
中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU) 1分55秒539 総合21位
「最終日の走行が始まってすぐに2コーナーで転倒し、その転倒でマシンに大きなダメージがあり、2号車でテストを続けることになりました。1号車は、セッティングが出ている方のマシンで、加えて、走行距離に余裕がある方のエンジンが搭載されていました。2号車の方のエンジンは、走行距離が寿命に近づいていることもあり、それほど多くの周回数をこなせませんでした。自分のミスで最終日は1号車が使用できなくなり、チームには申し訳ない気持ちです。ケガがなかったのは幸いでしたが、テスト最終日をこういう形で終えることになり、とても残念でした。しかし、3日間を振り返れば、ベストタイム、連続周回と着実にタイムを上げることができたし、成果あるテストになりました。カタールは、Moto2時代に表彰台に立っている好きなコースです。自分の走りのスタイルにあっているコースですが、中速コーナーでは、さすがにMotoGPマシンはスピードが速く、コーナーの進入ポイントが不安定になり、安定性に欠けました。2日目はそれが改善されてきて、3日目最終日は、さらにその部分をよくしようと思っていただけに、残念な最終日になりました。これで開幕戦を迎えることになりましたが、セパン、ブリーラムとMotoGPマシンを乗りこなすためにはどうすればいいのかということはわかってきました。ブリーラムでは、目標とするトップ10、トップから1秒差という目標も達成できたし、開幕戦までに、フィジカル面など、しっかり補強していきたいです」
トーマス・ルティ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS) 1分56秒122 総合24位
「思っていたよりもコースがきれいだったので、初日から周回数をこなすことができました。カタールの初日はコース上に砂が浮いているのがあたりまえですが、今回はそれほどでもありませんでした。確かに路面にラバーが乗っていないのでグリップはそれほどよくはありませんでしたが、少しでも多く周回したかったので、とても助かりました。このコースは、Moto2時代から得意にしていますが、MotoGPマシンはスピードが速いので、Moto2に比べてマシンの上での運動量が必要になります。加速時のウイリーを抑制するために体重移動も必要になるし、いろんなことをたくさん学ぶ必要があります。2日目は、少し雨が降ったせいで時間をロスしましたが、その後は順調に周回をこなすことができました。今はまだMotoGPマシンに慣れること。特にコーナーの立ち上がりでいかにうまくスピードを乗せていけるかを学んでいるところですが、確実に正しい方向に進んでいると思うし、一歩ずつ前進していると感じています。すべてを一度にはできませんが、マシンのセットアップやライディングスタイルを学び、走行する毎に快適に走れるようになっています。今は、同じことを繰り返している状態ですが、毎日、確実に前進しています。フィーリングはどんどんよくなっています。シーズン開幕に向けて、これからも前進していきたいです」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 5 | J.ザルコ | ヤマハ | 1:54.029 |
2 | 46 | V.ロッシ | ヤマハ | +0.247 |
3 | 4 | A.ドヴィツィオーゾ | ドゥカティ | +0.302 |
4 | 35 | カル・クラッチロー | +0.428 | |
5 | 25 | M.ビニャーレス | ヤマハ | +0.442 |
6 | 29 | A.イアンノーネ | スズキ | +0.557 |
7 | 93 | マルク・マルケス | +0.562 | |
8 | 42 | A.リンス | スズキ | +0.621 |
9 | 9 | D.ペトルッチ | ドゥカティ | +0.630 |
10 | 99 | J.ロレンソ | ドゥカティ | +0.663 |
11 | 43 | J.ミラー | ドゥカティ | +0.720 |
12 | 26 | ダニ・ペドロサ | +0.745 | |
13 | 21 | フランコ・モルビデリ | +1.103 | |
14 | 38 | B.スミス | KTM | +1.150 |
15 | 41 | A.エスパルガロ | アプリリア | +1.203 |
16 | 55 | H.シャーリン | ヤマハ | +1.244 |
17 | 17 | K.アブラハム | ドゥカティ | +1.271 |
18 | 19 | A.バウティスタ | ドゥカティ | +1.318 |
19 | 53 | T.ラバト | ドゥカティ | +1.436 |
20 | 44 | P.エスパルガロ | KTM | +1.460 |
21 | 30 | 中上貴晶 | +1.510 | |
22 | 45 | S.レディング | アプリリア | +1.566 |
23 | 10 | X.シメオン | ドゥカティ | +1.914 |
24 | 12 | トーマス・ルティ | +2.093 | |
25 | 36 | M.カリオ | KTM | +3.189 |