初めてでも、よく分かるトライアル日本GP

Repsol Montesa Hondaのライダーはどんな人?

チャンピオン、トニー・ボウのすごさ

今年も6戦5勝と圧倒的な強さを発揮しているボウ選手はモンテッサHondaの地元でもあるスペイン出身ですが、どんなところがすごいのでしょう?

「いまトップにいる選手達は、みんな自転車トライアルを経験してきています。自転車はエンジンが無いので駆動力を使えないというところから、身体能力をすごく問われますし、タイヤの幅も無いところでバランス感覚を鍛え抜いてバイクのトライアルに入ってきますので、最初からかなり高いレベルにあるんです。そして、その中でもずば抜けているのがボウ選手であり、自転車トライアルのテクニックをそのままバイクでも使ってきますので、『これがバイクの動きなのか?』というようなビックリする動きをするのです」

「とくに、日本では『ダニエル』と呼ばれている、前輪を持ち上げ後輪だけで車体をホップさせて向きを変えるテクニックがありますが、ボウ選手は前輪が接地する時間が本当に短く、後輪だけで走るようなテクニックを持っています。もちろん体力もありますし、身体のバネなど身体能力の高さもずば抜けています」

ボウ選手は、どんな場所が得意なのでしょう?

「とくにダニエルが使いやすい狭い場所での方向転換ですね。バイク1台分のスペースが無いような場所では、このテクニックを使わないと向きが変えられません。向きを変えられるかコースアウトするか、つまりクリーンするか失格かという際どい状況で有利になれるわけです。また、条件の悪い沢のセクションなどは、後輪だけで走ったほうがより高いトラクションを得られます。条件のよいところでトリッキーな動きを得意としながらも、そのテクニックを生かした走りで、条件の悪いところもより走りやすくしてしまう。そういった意味では、今のボウ選手には『死角がない』といってもいいかもしれません。そんなボウ選手のマニアックな走りを見たいというファンの方もいますので、日本GPではそのテクニックを使わないと抜けられない場所も作っています。宝探しではありませんが、そういう場所を探していただくのも楽しみですね」

トニー・ボウ選手 トニー・ボウ選手

スペイン出身、1986年生まれ。03年世界選手権デビュー、07年にRepsol Montesa Hondaに移籍して、初めての4ストロークマシンでいきなりチャンピオンに。以来、10年まで4年連続チャンピオン獲得。今年も第6戦まで、7戦5勝という圧倒的な強さでランキングトップを独走中。後輪でマシンをホップさせるテクニック=ダニエルに注目