モータースポーツ > 全日本ロードレース選手権 > SPOTLIGHT ON THE FIGHTERS 「Hondaで戦うライダーたち」 > 高橋 裕紀

MotoGPで活躍していた高橋裕紀が全日本ロードレースに戻ってきました。10年ぶりの舞台に選んだのは、シーズン5年目を迎え、トップライダーたちがひしめき合うJ-GP2クラス。同じく10年ぶりの全日本復帰となる名門モリワキレーシングとともに、全開でリターンチャンピオンを狙います。

■10年ぶりの全日本の舞台はなんだか不思議な感覚でした

10年ぶりの全日本ロードレースの舞台は、ちょっと不思議な感覚でした。僕が世界に行く前に追いかけていた先輩たちがトップランカーとして活躍されているし、10年前には見たこともなかった若い選手が上位に食い込んでいて、僕だけが「新鮮な浦島太郎」といった感じでした。もちろん、感慨にふける余裕もなく、僕自身のライディングをするのに必死でしたけどね。世界を戦ってきたプライドというより「負けられない」というプレッシャーを味方にして、レースウイークに臨みました。
注目されているのは分かっています。「勝って当たり前」という感覚でお話しされる方も少なくありません。だからこそ、勝つだけではなく勝ち方にこだわりたいのです。



■はじめから全開で優勝を狙いにいく

練習走行から予選、そして決勝と余裕はありませんでした。チームは着実にマシンの方向性を絞り込み、いい状態に仕上げてくれましたが、僕の中にはプランらしいプランはなく、全力で優勝を狙いにいくというだけでした。意外かもしれませんが、10年ぶりのポールポジションも無我夢中で臨んだ結果。チェッカー直前の周回でタイムを更新してポールポジションを奪い返すことができたのも、後ろを振り向くことなく前だけを見てアタックした結果なのです。ほっとする間もなく予選終了後はすぐに「負けられない決勝」に気持ちをスイッチしていました。



■レベルの高い全日本ロードレースこそ世界へのステップになる

決勝は全日本ロードレースのレベルの高さを思い知らされました。幸先よくホールショットを奪い、そのまま後続とのギャップを開いていこうとしましたが、ピタリと背後につかれて予断を許さない展開に。レース後半になり集団の距離が開き始めたものの、デチャ(クライサルト)選手(ヤマハ)が何度もしかけてきて、一つのミスも許されない緊迫したレース展開となりました。最終ラップにデチャ選手が仕掛けてくることも十分把握していました。勝ったからこそ言えるのかもしれませんが、最終コーナーからコントロールラインまでの攻防は、だれよりも僕たちが楽しんでいたのかもしれません。いずれにしても世界へのステップは甘くないことがよく分かりました。



■世界への最短ルート、それが全日本ロードレースの舞台

ところで、全日本ロードレースに復帰した理由は大きく2つあります。一つは世界に戻る最短距離だと考えたからです。シーズン途中でシートを失った昨年度も、シーズン後半に向けて複数のチームからオファーがありましたが、世界に踏み留まるだけの実力がないチームと契約するのは得策ではありません。どんな理由があるにせよ、3シーズン連続で成績を残せないライダーは二度と世界の舞台に戻れないのがMotoGP。10年もいたらそのあたりの厳しさは十分理解しています。だったら、日本から再出発しよう。そのほうが確実でもっとも有力な方法だと判断したのです。



■世界へのリベンジを誓うチームとともにチャンピオンを奪取します

同じような発想をお持ちだったのがモリワキさんでした。二つ目の理由になるのですが、モリワキさんも世界にリベンジするためのプランを画策されていて、その始動年度に僕が相談しにいったというわけです。同じように辛酸をなめさせられたモリワキさん。「このままでは終われない」「このままでは納得できない」。そう思った者同士が、世界へのステップとして全日本ロードレースという舞台を選んだというわけです。
甘くないのは分かっています。厳しい視線が待っているのも知っていました。初戦でそのことも実感させられました。だからこそ、きちんと成績を残してチャンピオンを奪うことで、前に進むしかないのです。
チャンピオンを獲ります。だれもが称賛してくれるような勝ち方で。ぜひ期待してください。



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