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■チャンピオンに王手をかけた昨シーズンの悔しさ

昨年はふがいないシーズンになったと反省しています。未勝利でしたが最終戦MFJグランプリを前にした岡山国際サーキット終了時点ではランキングトップにいて、鈴鹿での残り2レースでチャンピオン獲得が決まるという展開でした。場合によっては表彰台の真ん中に立たなくてもチャンピオンを獲得できないこともありませんでしたが、それでは僕もファンの皆さんもきっと納得できないと思っていました。結果は、第1レースで4位。この時点でチャンピオンになるために僕に残されていたのは優勝しかありませんでしたが、微妙な天気に翻ろうされて中須賀選手に逃げられてしまいました。2009年にJSB1000にステップアップしてからすでに5シーズン。カタチ的には最もチャンピオンに近いシーズンに映ったかもしれませんが、僕自身は最も悔いの残るシーズンとなりました。



■ケニーさんに学んだオフロードトレーニングを今オフから本格化

ただ反省ばかりでは前に行けません。このシーズンオフはオフロードバイクに本格的に取り組みました。勝つためのトレーニングです。きっかけは3年前から取り組んでいるケニーランチでのオフロードキャンプです。かつての名ライダーであるケニー・ロバーツさんのお宅にホームステイさせてもらって、ケニーさん所有のダートコースで約1週間トレーニングしてきたのです。そのトレーニングをベースに、今シーズンははじめて国内でもミニ合宿を行いました。先輩の清成(龍一)さんや浦本(修充)君、(山田)誓己(せな)君などとかなりの日数を走り込み、滑りやすい路面でマシンをどうコントロールすればいいのかを身体で覚えていきました。



■ライバルだけど仲間、そんな環境の中で速さのヒントをつかむ

どうすれば速く走れるのか、タイヤのどの部分を使って曲がればコーナリングスピードを殺さず加速につなげられるのかなど、ロードレースに使えそうな要素がいっぱいでした。もちろん、丁寧に教えてもらえるはずがありません。同じ現役のレーシングライダーですからね。それでもミュー(摩擦係数)の高いサーキットと違って路面状況が変化しやすいダートをみんなと一緒に走ることで、バランスや体重移動、アクセルやブレーキコントロールにデリケートな操作性のヒントを得られた気がします。なにより、一緒だと楽しいですから。連日のように、爆笑、全力、爆睡の繰り返し。とても充実した時間を過ごせたと思っています。



■レース前半からもっともっとアグレッシブな攻め方をするために

このトレーニングの目的はレース前半でのタイヤの使い方を改善すること。僕のレース展開は後半に追いつくパターンが多かったのですが、タイヤが冷えている段階でも前で勝負できるようにしたかったのです。中須賀さんや秋吉さんにいつも置いていかれるパターンで、後半巻き返してもパッシングする前にチェッカーというケースが少なくありませんでしたから。もっと早い段階で前に出るレース展開をすることで、チャンピオンをつかむことができると考えています。もともとスタート時点であまり緊張するタイプではなく、むしろリラックスした状態でグリッドに着いているので、前半さえまとめられるようになれば、勝機は十分にあると信じています。



■これまでの2位とは違う。優勝につながる価値のある2位でした。

開幕戦は優勝こそ逃してしまいましたが、かなりいい感触を得ることができました。途中、渡辺(一樹)選手(カワサキ)にパスされたときも余裕があったし、秋吉(耕佑)さんをとらえて中須賀(克行、ヤマハ)さんの動きをじっくり観察できました。バックマーカーの処理に手間取ってチャンスをつぶしてしまいましたが、パッシングポイントもシミュレーションできていたので、開幕戦の2位はこれまでの2位とは内容が違います。次につながる2位、優勝につながる2位だと確信しています。



■第2戦オートポリスでは、うれしい優勝。自信につながりました。

スタートを失敗するとは思っておらず、大きく出遅れてしまい、とても焦りました。レース後半が厳しくなっても構わないのでトップに追いつこうと、予選と同じペースで周回しました。トップグループに追いついて、仕掛けられるところで仕掛けていこうと思いました。昨シーズンは一度も勝てなかったので、久しぶりの優勝はうれしいです。最後まで集中して走りきりました。第3戦のツインリンクもてぎでも、この好調さを維持していきたいと思います。



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