全日本モトクロス2012 TEAMHRC現場レポート
Vol.04いまさら聞けない!? モトクロス用語集

HRC監修“モトクロストリビア”

モトクロスライダーのコメントやレースレポートには、専門用語がひんぱんに出てきます。そこで今回は、わかっているようでわからないアレやコレを、TEAM HRCのライダーとスタッフに解説してもらいました。題してHRC監修モトクロストリビア!

アイエー / IA

MFJ競技ライセンス国際A級(International A)のこと。日本国内で最高峰のクラス(IA>IB>NA>NB)。

アイビー / IB

MFJ競技ライセンス国際B級(International B)のこと。国際A級の一つ下のクラス(IA>IB>NA>NB)。

アップサイドダウン / Up-side Down

倒立フロントフォーク(上が太く、下が細い)のこと。通常のフォーク(上が細く、下が太い)を上下逆さまにしたことからこう呼ばれる。1980年代後半からモトクロス用マシンに装備され、現在では主流の方式。

ウィップ / Whip

空中でバイクを寝かせるアクション。ジャンプの飛び出しで寝かせるスクラブとは異なる。

うであがり

ハンドルを握る手に力が入りすぎて、前腕の筋肉が硬直すること。英語ではアームパンプ(Arm Pump)と言う。

エーエムエー / AMA

アメリカン・モーターサイクリスト・アソシエイション(American Motorcyclist Association)。アメリカ国内のモーターサイクルスポーツを統轄する団体。FIMに加盟している。

エヌエー / NA

MFJ競技ライセンス国内A級(National A)のこと。国際B級の一つ下のクラス(IA>IB>NA>NB)。

エヌビー / NB

MFJ競技ライセンス国内B級(National B)のこと。国内A級の一つ下のクラス(IA>IB>NA>NB)。

エフアイエム / FIM

国際モーターサイクリズム連盟(Federation Internationale de Motocyclisme)。世界中のモーターサイクルスポーツ&ツーリング活動を管理する国際機関。傘下に各大陸のユニオンと各国の協会を持つ。

エムエフジェイ / MFJ

日本モーターサイクルスポーツ協会(Motorcycle Federation of Japan)。日本国内のモーターサイクルスポーツを統轄する団体。FIMに加盟している。

オーバーオール / Overall

総合結果のこと。アウトドアモトクロスでは、ほとんどの大会が2ヒート制で行われ、第1ヒートと第2ヒートのポイント合計により総合順位が決まる。これがオーバーオールリザルト。「ヒート結果は1位/3位で、オーバーオール2位」というように用いる。

カチパン

ドライで超硬質となったコースコンディション。カチカチパンパン。

気象庁

気温計と気圧計をセットしたコンテナのことを、HRCでは気象庁と呼ぶ。

キッカー / Kicker

ちょうどジャンプの着地点あたりに、意地悪く設けられた人工的なコブのこと。

キャメル / Camel

ラクダの背中のように、コブが2つあるジャンプセクション。

グーン / Goon

上級者が故意にヘタの真似をする、ウケ狙いの「ヘタ乗り」のこと。真剣に走ってもヘタなのは、グーンとは呼ばない。

クラッシュ / Crash

衝突する。転倒する。

グランプリ / Grand Prix

最高位、大賞の意味でモトクロスではモトクロス世界選手権のことをこう呼ぶ。

グルービング / Grooving

路面のコンディションに応じて、タイヤの接地面などに溝を刻むこと。

グルーミング / Grooming

1)土を掘り起こしたり散水をしたりして、コース整備をすること。
2)スタート地点をならしたり、踏み固めたりすること。

クワド / Quad., Quadruple

1)4連ジャンプ。
2)4輪のATVマシン。

ケース / Case

3連ジャンプなどで、飛距離が足らずにジャンプの頂点に着地して、地面にマシンの腹を打つこと。

コンベンショナル / Conventional

正立フロントフォーク(上が細く、下が太い)のこと。ライトサイドアップ(Right-side Up)とも言う。現在は倒立フロントフォーク(上が太く、下が細い)の方が主流。

サイドバイサイド / Side-by-Side

競り合いで横に並んだ状態。

サテライト / Satellite

モトクロスの世界ではファクトリーチームに準じたチームのことを指す。

30分プラス1周

モトクロスはコースコンディションによってラップタイムが大きく変動するので、あらかじめ周回数を設定しておくことができない。そのためスタートから一定時間が経過したところで、ラスト1〜2周が提示される方法が取られている。全日本モトクロスIA1/IA2の決勝レース時間は30分プラス1周。AMAモトクロスでは30分プラス2周、モトクロス世界選手権では35分プラス2周が採用されている。

事前

全日本モトクロスが開催される前に、チームが現地で行う事前テストのこと。エンジンやサスペンションのセッティング、タイヤ選択、ライダーの習熟などがその目的。

ショック / Shock Absorber

リアサスペンションのことを、単にショックと呼ぶ。ショックアブソーバーを縮めたもの。

スーパークロス / Supercross

山の中で行われていたモトクロスを観戦しやすいようにと、都会のスタジアムに持ってきたアメリカ発祥のレーススタイル。連続ジャンプなど人工的に作られたコースは独特のテクニックを生み、アメリカをモトクロス先進国へと押し上げた。スタジアムの観客席からコース全体が見渡せるのが人気の秘密。

スキミング / Skimming

フープスの谷間にタイヤを落とさないように、頂点だけをかすめる走法がスキミング。谷間を利用して2〜3個ずつ飛ぶ走法はジャンピング。

スクラブ / Scrub

スピードを落とさずにジャンプを低く飛ぶために、踏み切りでバイクを寝かせてサスペンションが伸びる力を横に逃がすこと。空中でバイクを寝かせるウィップとは異なる。

スクワット / Squat

リアサスペンションを沈めること。また、リアサスが柔らかすぎて、マシンが尻下がりになってしまうこと。

スタートトゥフィニッシュ / Start-to-Finish

スタートからチェッカーまで、先頭を走りきること。

スタートモード / Start Mode

スタート時に駆動輪のスリップを抑制するため、エンジン特性を最適化する装置。スタート後には通常モードに切り替わる。

ステアリングダンパー / Steering Damper

荒れた路面で前輪が振られにくくするため、ステアリングの動きを減衰力で制御する装置。Honda CRF450R/CRF250Rに標準装備されている。

ステップアップ / Step-Up

1)階段状に作られたセクション。
2)250から450へ、あるいは国際B級から国際A級へ昇格すること。

セッティング / Setting

エンジンやサスペンションを、ライダーの好みやコース状況に合わせて微調整すること。

ターン / Turn

コーナーのこと。右コーナーのことを「ライトハンダー」、左は「レフトハンダー」と呼ぶ。

ダブル / Double

2連ジャンプのこと。また、中ぐらいの連続ジャンプや、フープスなどを2個ずつ飛ぶような走り方を「ダブルダブル」と呼ぶ場合もある。

ティアオフ / Tear-Off

ゴーグルのシールドの上に数枚重ね、泥が付いたら1枚ずつはがして捨てるフイルム。

ディーエヌエス / DNS

不出走。何らかの理由で、スタートラインに並べないこと。DNS=Did Not Startである。

ディーエヌエフ / DNF

完走できずにリタイアすること。DNF=Did Not Finishである。

ティーボーン / T-Bone

コーナリング中に相手の側面に向かって、Tの字にアタックすること。

テーブルトップ / Tabletop

フィニッシュ地点などに作られた、台形のジャンプのこと。

テールトゥノーズ / Tail-to-Nose

競り合いで前車のテールと後車のノーズが接触しそうな状態。

ドナドナ

チームトラックからコース脇のピットエリアまで、スペアホイールなどを運搬する荷車。HRCでは「ドナドナ」と呼ばれている。

トラクション / Traction

路面との摩擦。「トラクションのいいタイヤ」は、路面によくグリップするタイヤ。「トラクションのいいエンジン」は、タイヤをあまり空転させずにマシンを前に進める特性のエンジン。

トリプル / Triple

3連ジャンプのこと。昔は4連ジャンプもあったが、最近はビッグジャンプは3連までとなっている。

ノビータイヤ / Knobby Tire

凸凹のタイヤ。モトクロスタイヤを指す。

バートゥバー / Bar-to-Bar

競り合いで横に並び、ハンドルバー同士が接触しそうな状態。

バーパッド / Bar Pad

ハンドルバーの中央に取り付けられている、ウレタンの衝撃吸収パッド。ジャンプの着地などで、ここにしこたまアゴをぶつけることがある。

バーム / Berm

コーナーの外側の盛り上がった部分。バンク。

バックマーカー / Back Marker

周回遅れになったライダーのこと。

パッシングポイント / Passing Point

コースの中の抜きどころ。テクニックの差が出るところや、コース幅が広くて走行ラインが何通りもあるところが、パッシングポイントとなる。

パドック / Paddock

各チームのトランスポーター、マシンが待機する場所。

パレードラップ / Parade Lap

レースのスタート前に、選手紹介とコースの下見を兼ねて行われる1周。サイティングラップとも言う。

ピージーエムエフアイ / PGM-FI

キャブレターに代わって、Honda CRF450R/CRF250Rに標準装備されているプログラムドフューエルインジェクション(電子制御燃料噴射装置)。パソコンにインストールしたPGM-FIセッティングツールにより、燃料噴射量・点火時期を任意に微調整できる。

ヒート / Heat

2レース制で行われる決勝の呼称。全日本モトクロスでは「ヒート1」「ヒート2」と言う。ちなみにAMAモトクロスでは「モト1」「モト2」、モトクロス世界選手権では「レース1」「レース2」などと呼ばれる。また、AMAスーパークロスでは、ヒート〜ラストチャンス〜メインというフォーマットなので、ヒートは予選レースを意味する。

ビス検

マシン整備の最後にボルトとナットが完全に締まっているかどうか確認すること。HRCでは「ビス検」と呼ばれている。

ピット / Pit

レース途中でトラブルが起きたときにマシンを修復する場所。モトクロスではメカニックがレース中にサインボードを出す場所(サインエリア。主にストレート)がピットを兼ねることが多い。

ピンピン

両ヒートで優勝すること。1/1と書いてピンピンと読む。ポルトガル語でポイントを意味するピンタから派生し、ピン=1として用いられるようになったという説が有力。

フープス / Whoops

小さなコブが連続するセクションのこと。フープデドゥーとも言う。以前はウオッシュボードやロッカーズなどと呼ばれていたが、最近ではフープスとしか言わない。

ファイナル / Final

1)最終の意。ファイナルラップ、ファイナルターンのように用いる。
2)決勝レースのこと。メインと同じ意味で使われる。
3)最終減速比のこと。主にリアスプロケットの歯数のことを差す。

ファクトリー / Factory

市販車のような大量生産ではなく、メーカーが1台ずつ作った特別仕様のレーサーをファクトリーマシンと呼ぶ。それを走らせるメーカー直属のチームがファクトリーチーム、そして契約ライダーがファクトリーライダーである。

フォーク / Fork

フロントサスペンションのこと。食器のフォークのような形をしていることから。

プライベート / Private

ファクトリー、ワークスに対してメーカーからのサポートを受けない体制のこと。またはその体制から出場するライダー(プライベーターとも言う)のこと。

プラクティス / Practice

練習走行。計時予選はタイムドプラクティス。

フラットタイヤ / Flat Tire

パンクすること。モトクロスではタイヤの接地面を稼ぐために、空気圧を下げて走行するのでパンクしやすい。石の多いコースでは、とくにパンクが多発する。

プラトー / Plateau

テーブルトップほど大きくはない、中ぐらいの台形ジャンプ。ステップアップやキャメルと組み合わされることが多い。

プルアウト / Pull-Out

リタイアすること。

プロダクション / Production

ファクトリーマシンやワークスマシンに対して、市販車のことをプロダクションマシンと言う。

ベスコン / Best Condition

路面状況がベストコンディションであること。ドライでもなくマディでもなく、適度に湿ってタイヤが食い込むようなミディアム路面がベスコン。

ホールショット / Holeshot

スタートで飛び出して、一番先頭で1コーナーを回ること。1982年AMAスーパークロスチャンピオンになったHonda所属ライダー、ドニー・ハンセンのニックネーム。

ポディウム / Podium

表彰台のこと。

マシン / Machine

レースで使われるバイクのことで、ワークスマシン、ファクトリーマシン、プロダクションマシンなどのように用いられる。

マディ / Muddy

雨で泥々になったコース状態のこと。

ムース / Moose Foam

パンクを防ぐため、空気入りチューブの代わりにタイヤに詰めるスポンジ。

メイン / Main

決勝レースのこと。メインレースと呼ばれるのが普通だが、単にメインとも言われる。

モトクロス / Motocross

バイクで野山を走り回ること、モーターサイクル・クロスカントリーから付けられた言葉。スーパークロスもモトクロスの一種。

モトクロス・オブ・ネイションズ / Motocross of Nations

年に1度行われる国対抗団体戦。旧称モトクロス・デナシオン。各国代表のチーム編成は、MX1/MX2/オープンの3人。2クラスずつの混走レースが3ヒート制で行われる。

ラット / Rut

タイヤでえぐられてできた、コース上の溝、ワダチ。フープスやジャンプの飛び出し部分、コーナーなどにできやすい。通常は1本のワダチを選んで走行するが、前後のタイヤが別々のワダチに入ってバランスを崩す場合もあり、この状態をクロスラットと呼ぶ。

ラップ / Lap

1)周回。
2)遅いライダーを抜いて周遅れにする。

ルンバルンバ

成田亮選手と新庄剛志氏がスポーツランドSUGOで合同練習した際に、新庄氏がフープスに付けた名前。プロ野球引退後、バリ島でモトクロスを始めた新庄氏によると、インドネシアではフープスをルンバルンバと呼ぶそうだ。

ロールオフ / Roll-Off

ゴーグルのシールドの上に取り付け、泥が付いたら手動で少しずつ巻き取るフイルム。モータースポーツ中継の車載カメラにも、同様のシステムが用いられる。

ワークス / Works

ファクトリーと同義語で、ワークスレーサー、ワークスチーム、ワークスライダーのように用いる。

ワンエイティー / One-Eighty, 180

文字通り180度回るヘアピンコーナーのこと。


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