6月11日にシリーズ第9戦としてスタートしたテキサス・モーター・スピードウェイでのレースは、雨のために71周を終えたところで中断され、8月最終週まで延期されました。77日という長いインターバルを経てレースは再開されましたが、待ったかいのある、とてもエキサイティングなバトルとなりました。最終的に、トータル248周で8人のドライバーがトップに立ち、14回ものリード・チェンジが行われました。
6月のレース中断時にトップを走っていたジェームズ・ヒンチクリフ(Schmidt Peterson Motorsports)は、リスタート後も速さをみせて、レース中盤では、2番手に10秒もの差をつけ、合計188周ものリードラップを重ねました。タイヤの摩耗が少なかったヒンチクリフは、安定したペースで走り続け、1セットのタイヤで一部のライバルたちと比べて10周も多く走りました。
レースは終盤を迎えるとヒートアップし、アクシデントが続けて発生しました。これにより、ヒンチクリフの大きなリードは消滅し、複数のドライバーによる混戦の優勝争いに、展開は移り変わりました。結果、グレアム・レイホール(Rahal Letterman Lanigan Racing)が勝利を手に入れました。
ゴールまで残り8周でリスタートが切られたときは、ヒンチクリフがトップ、レイホールは2番手でした。レースのリーダーと同じ周回に残っていたほかのドライバーは、エリオ・カストロネベス(Team Penske)、トニー・カナーン(Chip Ganassi Racing)、シモン・パジェノー(Team Penske)の3人だけで、このうちカナーンとパジェノーは、リスタート直前にピットに入り、新品タイヤを装着していました。
ヒンチクリフとレイホールは、ピットに入らない作戦を採用したことから、多くの周回を重ねたタイヤを使っていました。しかし、リスタート後も彼らのスピードが衰えることはなく、最終ラップでは2人だけでトップ争いを披露しました。
接近戦で威力を発揮するマシンに乗っていたレイホールは、最終コーナーでヒンチクリフをパスする大逆転により、今シーズン初勝利を達成しました。ゴールでの両者の差は0.0080秒という、わずかなものでした。これは全長1.455マイルのテキサス・モーター・スピードウェイにおいては史上最少、そして、インディカー史上では5番目の僅差での決着となりました。
佐藤琢磨(A.J. Foyt Racing)は、77日間の赤旗中断を利用して新しいマシンセッティングを試しました。ところが、レース前の10分間しかないプラクティスで、サスペンションの破損によるアクシデントが発生。チームはマシンを修復してグリッドに並べましたが、マシンは正しくセッティングされていませんでした。ハンドリングは悪く、タイヤの消耗も激しいマシンでは、走り続けても危険であるとの考えから、チームはマシンを停めることとしました。
テキサスでのレースにチェッカーフラッグが振り下ろされ、2016年インディカーシリーズは14レースを終えて、残るはロードコースでの2レースとなりました。第15戦は休む間もなく、次の週末にニューヨーク州の歴史あるロードコース、ワトキンス・グレン・インターナショナルで開催され、9月18日の最終戦は今年もカリフォルニア州のソノマで行われます。
順位 | No. | ドライバー | エンジン | 周回数 | タイム/差 |
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1 | 15 | グレアム・レイホール | 248 | 2:29'24.8886 | |
2 | 5 | ジェームズ・ヒンチクリフ | 248 | +0.0080 | |
3 | 10 | T.カナーン | シボレー | 248 | +0.0903 |
4 | 22 | S.パジェノー | シボレー | 248 | +0.4773 |
5 | 3 | H.カストロネベス | シボレー | 248 | +9.3424 |
6 | 83 | C.キンボール | シボレー | 247 | +1Lap |
7 | 26 | カルロス・ムニョス | 247 | +1Lap | |
8 | 12 | W.パワー | シボレー | 247 | +1Lap |
9 | 2 | J.P.モントーヤ | シボレー | 246 | +2Laps |
10 | 11 | S.ブルデー | シボレー | 246 | +2Laps |
11 | 98 | アレクサンダー・ロッシ | 246 | +2Laps | |
12 | 27 | マルコ・アンドレッティ | 245 | +3Laps | |
13 | 28 | ライアン・ハンターレイ | 245 | +3Laps | |
14 | 19 | ギャビー・シャヴェス | 245 | +3Laps | |
16 | 7 | ミハイル・アレシン | 231 | +17Laps | |
17 | 41 | ジャック・ホークスワース | 227 | +21Laps | |
20 | 14 | 佐藤琢磨 | 160 | +88Laps | |
21 | 18 | コナー・デイリー | 42 | +206Laps |
順位 | No. | ドライバー | エンジン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 22 | S.パジェノー | シボレー | 529 |
- | 2 | 12 | W.パワー | シボレー | 501 |
▲ | 3 | 10 | T.カナーン | シボレー | 416 |
▲ | 4 | 3 | H.カストロネベス | シボレー | 415 |
▼ | 5 | 21 | J.ニューガーデン | シボレー | 406 |
▼ | 6 | 9 | S.ディクソン | シボレー | 397 |
▲ | 7 | 15 | グレアム・レイホール | 394 | |
- | 8 | 5 | ジェームズ・ヒンチクリフ | 392 | |
▼ | 9 | 26 | カルロス・ムニョス | 382 | |
- | 10 | 83 | C.キンボール | シボレー | 361 |
- | 11 | 28 | ライアン・ハンターレイ | 348 | |
- | 12 | 98 | アレクサンダー・ロッシ | 346 | |
- | 15 | 7 | ミハイル・アレシン | 301 | |
- | 16 | 14 | 佐藤琢磨 | 275 | |
- | 17 | 27 | マルコ・アンドレッティ | 273 | |
- | 18 | 18 | コナー・デイリー | 263 | |
- | 20 | 41 | ジャック・ホークスワース | 191 | |
- | 22 | 19 | ギャビー・シャヴェス | 121 | |
- | 24 | 77 | オリオール・セルビア | 72 | |
▼ | 26 | 19 | ルカ・フィリッピ | 61 | |
▼ | 27 | 29 | タウンゼント・ベル | 55 | |
- | 28 | 63 | ピッパ・マン | 46 | |
- | 30 | 35 | アレックス・タグリアーニ | 35 | |
- | 32 | 88 | ブライアン・クロウソン | 21 | |
- | 35 | 19 | RC.エナーソン | 11 |
グレアム・レイホール(優勝)
「優勝せずにシーズンを終えたくありませんでした。チームのエンジニアたち、クルーたちが本当に一生懸命に働いてくれているからです。今日は終盤のフルコースコーションで優勝のチャンスが自分にもあると感じ、それをつかみたいと考えました。こうして勝つことができ、とてもうれしく思います。ヒンチクリフとカナーンとのバトルはエキサイティングでした。ヒンチクリフは脱帽するほどの速さを保ち、スタートからトップを守り続けていました。しかし、最後の約200ヤードは私がトップを走りました。2人は私とフェアに戦ってくれました。今日のレースはとてもすばらしいバトルになっていました。今晩コースに来てくれたファンの皆さんには深く感謝します。家に帰ったら、みんなにインディカー・レースのすごさを話してほしいですね」
ジェームズ・ヒンチクリフ(2位)
「つらいゴールになってしまいました。すばらしいレースでしたけれどね。私たちのマシンは圧倒的に速かった。私たちはタイヤのグリップが保たれている間、ずっと速さを維持できていました。ところが、最終的にレイホールとカナーンが、終盤のフルコースコーションでタイヤを交換し、それで優位を手にしていたようでした。私たちはピットに入りませんでした。難しい判断だったと思います。私たちのチームは最速のマシンを作り上げていました。今日はレイホールと彼のチームの勝利を讃えます。こうしてテキサスでレースを行うのは、エキサイティングなバトルをファンの皆さんにお見せするためなのですから、今晩はそれができて本当によかったと思います」
佐藤琢磨(20位)
「厳しい夜になりました。プラクティスで部品のトラブルに見舞われ、1周しか走ることができませんでした。チームのクルーたちは懸命に働いて、短時間でマシンをスタートに間に合わせてくれました。しかし、レースでは多くのトラブルが襲いかかりました。何が悪かったのか、すべてはまだ把握できていません。最終的には、次戦以降に向けてのリスクを大きくすべきではないと考え、リタイアすることにしました」