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 「インディ500には2種類のレース・ドライバーしか存在しない。壁に突っ込んだことのある奴か、これから突っ込む奴かのどちらかだ」という古い言い伝えもある。

 幸いなことに、最新型のマシンの信頼性や安全性は過去のものとは比べ物にならないくらい向上しているし、ドライバーがクラッシュによって致命傷を負うケースも少なくなったが、それでもマシンがスライドし始め、タイヤの軋み音とともに壁に叩きつけられるシーンは何回見てもいつも身が縮む思いがする。
 ピットに戻ったマシンに、インパクトレンチやタイヤや燃料ポンプを持ったヘルメットとレーシングギアで武装したクルーが殺到し、千分の1秒を競う各チームのピットストップもエキサイティングなシーンだ。

 統計的には、過去に行なわれたインディ500は、日中の平均温度が18℃と多少涼しいが比較的さわやかな良い天気に恵まれている。しかし、けっして油断はならない。ある年私はワイフをともなってインディ500観戦に行ったことがある。
 出かける前にサーキットはどのくらい暖かいのかと訊くワイフに、「5月後半のインディアナで、曇りの日だとしてもそれほど寒くなることはないだろう」と答えたのだが、その年不運にも強い寒気が北から襲い、サーキット観客席の温度は3℃まで下がり、我々は凍えた。さらに不幸なことに、その日我々はインディアナポリス・モーター・スピードウェイには熱いコーヒーも温かいスウェットシャツも売っていないことを発見したのだった。

 雨でレースが遅れることもあるが、天候が安定しているこの時期そういうことは滅多にない。インディ500を観戦していて退屈することはありえない。むしろ予想外に時間が早く経ち、気がつくとレースは終っている。完走したマシンは、225マイル(約360キロ)という最高時速とともに、たった数時間の内にほぼインディアナポリスからNYまでを走り切ったことになる。
 そしてレース後、サーキットの外に掃きだされた群集の中に、家路を急ぐものは誰一人としていない。それでも、しばらくして帰りのバスでホテルに戻り、仲間や家族と夕食のテーブルを囲みながら今日のレースを語る頃には、自分たちが偉大なるアメリカの伝統に参加して、歴史的な瞬間に立ち会ったのだという喜びがふつふつと湧いてくる。

 私は一度本業のカメラマンとしてインディ500を取材したことがあり、メイン・グランドスタンドの屋根に登って写真を撮るという稀有な体験をしたことがある。第1コーナー近くの屋根の端っこに、昔TV中継で使った小さなスタンドが残っていて、その中に入ってたったひとりでしばしレースを観戦していた。美しく真っ青に晴れた暖かい日で、サーキット全体が一目で見渡せたし、インディアナポリスのダウンタウンも遠くに眺められた。
 レースが終った時、その素晴らしい眺めに妙に感傷的になったことを今でも思い出す。インディアナポリス500は、メジャーリーグのワールドシリーズやラスベガスの輝き同様、アメリカにとって大切な宝物なのだ。

 いや、それ以上かもしれない。各国からのレーサーたち、初期のメルセデスとプジョー、30年代後半のアルファロメオ、60年代のクーパーやロータス、そして現代のHondaというように、長きにわたって他の多くの国や人の挑戦を受け入れてきたことを考慮に入れるならば、インディ500はニューヨークの港にそびえる自由の女神のような存在と呼べるかもしれない。
 インディアナポリス500は、自動車レースを純度100%のアメリカらしさで包み込んだ、どこから見てもアメリカンなものである。そして素晴らしいことにこのアメリカを象徴するレースに、今や全世界からインターネットを通じて簡単にアクセスできるようになったのだ。

http://www.indyracing.com
にアクセスすれば、レースに関するニュースを知ることができるし、

http://www.brickyard.com
にアクセスすれば、サーキットに関するあらゆる情報を得ることができるようになっている。その上、インディ・マシンのロールバーにしがみついた形でヴァーチャル・レーシング・ホット・ラップも体験できるというオマケまでついている。
 是非今すぐこのサイトにアクセスして、この偉大なアメリカの伝統であるインディ500に参加してほしい。(終り)

(写真は2003年時のもの)
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