ROUND15

マレーシアマレーシア セパン・インターナショナル・サーキット 2017.09.28(木)

2017 MALAYSIAN GRAND PRIX - プレビュー

2017 MALAYSIAN GRAND PRIX - プレビュー

Hondaは、FIAフォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)の第15戦マレーシアGP(開催地:クアラルンプール、9月29日~10月1日)に向けて準備を進めています。今大会のサーキット情報や、今週末のレースの見どころなどをレポートします。

※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称

コメント

長谷川 祐介 (株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
長谷川 祐介「今週はアジアシリーズの3連戦の第2戦の地、マレーシアに向かいます。前回のシンガポールに続き、暑さと湿気の中での戦いで、タフなレースになることを予想しています。波乱となったシンガポールGPは、不運なアクシデントによりチームにとっては残念な展開でしたが、その中でも確実にポイントを獲得することができました。全体としては週末を通していいペースをみせられており、その点はポジティブに捉えています。また、アクシデントによるダメージが懸念されたフェルナンドのPUについては、HRDさくらでの確認の結果、問題がないことが分かりました。

セパン・サーキットはグランドスタンドを挟む形で位置する2本の長いストレートと、さまざまなタイプのコーナーが混ざったレイアウトです。パワーサーキットで楽なレースになるとは思っていませんが、雨が多いことも特徴で、先日のシンガポールGPのような波乱の展開も有り得るので、チャンスを逃すことのないように、さまざまなケースを想定して準備を進めます。セパン・サーキットでは1999年からグランプリの開催が続いてきましたが、残念ながら今年が最後のレースになりますので、マレーシアのファンの前でいいレースをみせられればと考えています」

フェルナンド・アロンソ
#FA14 MCL32-05
フェルナンド・アロンソ「シンガポールGPを終え、気持ちは次のレースへと切り替わっています。早くマシンに戻り、今度は1コーナーよりも先へ進めればいいですね! もちろん、前戦で起こったことにはがっかりしていますし、他車のアクシデントに巻き込まれてしまったことにフラストレーションを感じてはいます。年間で最大のチャンスでしたし、本当に高い競争力を発揮するだけのポテンシャルがあったので、完走してポイントを得ることでそれを証明できなかったことは残念です。ただし、ときにこうしたことは起きるものなのです。

マレーシアの環境は、シンガポールによく似ていて、高温多湿でドライバー、マシンの双方に厳しいものです。計算上は相性がよくなさそうですが、全力を尽くします。今季も残り6戦となりましたが、すべてのレースでできるだけいいポジションでフィニッシュできるように、全精力を注ぎます。セパンは長いストレートがあり、最高速とパワーが求められるため、セッティング面では難しいものがありますが、さまざまな特性が混ざったコースでもあるので、低速コーナーで弱点を補うことができるか見てみようと思います。混乱を避け、堅実なレースができればと願っています」

ストフェル・バンドーン
#SV2 MCL32-04
ストフェル・バンドーン「シンガポールでポジティブな結果を出せて、マレーシアに向かうのを楽しみにしていました。前戦では週末の間ずっと手ごたえを感じ、各セッションで安定したパフォーマンスを発揮できました。それだけの力があったのに2台そろってのポイント獲得ができなかったのは残念ですし、フェルナンドは本当に不運でした。ただ、少し自信を持ってクアラルンプールへ向かうことができますし、この勢いを持続させていきたいです。

シンガポール同様、マレーシアも僕にとっては初めてレースをする場所です。これが当面の間は最初で最後のマレーシアGPになってしまうのが残念ですが、だからこそ全力を尽くしたいです。コースはかなり面白そうに見えます。チャレンジングでシンガポールと似た気候ですが、僕らのマシンができることをしっかりと出していければと思います。シンガポールのコースよりも相性はよくないと思うので、なにが起きるか慎重に見ていかなければなりませんが、過去のレースを見ていると波乱があったり、突然の雨の可能性もあり、そうしたチャンスを確実にものにして少しでも上の順位を目指します」

エリック・ブーリエ McLaren-Honda Racing Director
エリック・ブーリエ 「セパンは我々にとって厳しいサーキットであるのは間違いありません。それはパッケージに関しても、ドライバーにとっても言えることで、一年の中でも気温、湿度ともに一番高くなります。我々の選手は、フィジカル的にも高い能力を持っているので、いつものように準備万端にしてレースウイークに臨んでくれると思います。エンジニアに対しては、この環境が独特の技術的な挑戦を求めます。

パフォーマンス向上とともに冷却の面でも週末を通じて最善の策を練らなければなりません。パフォーマンス面では、ここ数戦と同様に予選でQ3進出を目指します。また、こうした気候の下では、信頼性がカギになります。ポイント獲得は、きちんと完走できるマシンで、1周目の混乱に巻き込まれなければ可能だと思いますが、言うは易く行うは難し、というものです。ただし、ドライバーからはMCL32はバランスがよく、低速コーナーでの力強いトラクションがあるという意見が上がっており、どちらもマレーシアのような気候では強みになると思います。19年間開催が続いたセパン・サーキットに別れを告げなければなりませんが、マレーシアのファンの前でいいパフォーマンスをおみせできればと思います」

サーキット情報

名称セパン・インターナショナル・サーキット
初開催 1999年
優勝者 2016 ダニエル・リカルド
2015 セバスチャン・ベッテル
2014 ルイス・ハミルトン

歴史

マレーシアとF1は、長年にわたって有益な関係を築いてきました。クアラルンプール国際空港に近いセパン・インターナショナル・サーキットが建設された1999年から、毎年F1が行われています。このサーキットは、今年のF1カレンダーの中でも10サーキットにおいてその設計を行ったヘルマン・ティルケ氏がはじめて手がけたもので、波打つような5.543kmのサーキットは、ドライバーにとって世界で最も刺激的なサーキットの一つとして認識されています。

高温多湿により、マレーシアGPはカレンダー中でも最高クラスの過酷さで知られます。レース中、コックピット内の最高温度は50℃以上にもなるため、ドライバーは勝利を目指しつつ、水分補給にも気を配る必要があります。また、チームはエンジンの温度にも常に目を見張っていなければなりません。あまり知られていませんが、マレーシアGPは310.408kmと、シーズン最長のレースでもあります。

雨は、マレーシアGPにおいて常に番狂わせを起こす要因の一つです。マレーシアではこれから雨季に入るため、コンディションが急に変わる可能性があります。2009年には、快晴の下でレースが行われましたが、途中で熱帯暴風雨により川が氾濫し、水がトラックにまで押し寄せたため、赤旗が提示されるというアクシデントがありました。

セパン・インターナショナル・サーキットにしかない独特の雰囲気は、多くの人に愛される理由の一つとなっています。20年前に植えられたヤシの木は今や成熟して大きくなり、グランドスタンド全体を覆うキャノピー(天蓋形のひさし)とともに、トラックにトロピカルな雰囲気を醸し出しています。

このサーキットは、マレーシアの第4代首相であるマハティール・ビン・モハマド氏による広範囲にわたる都市計画の一部として建設されました。このプロジェクト「ビジョン2020」は、2020年までにマレーシアを先進国にすることを目標として進められ、F1はマレーシアという国を世界に宣伝するための場として活用されてきました。

McLarenは、2007年に果たした1-2フィニッシュを含め、同地で2度の勝利を挙げています。

コース

全長 5.543km ※カレンダー中8番目の長さ
2016ポールポジション ルイス・ハミルトン 1分32秒850
2016ファステストラップ ニコ・ロズベルグ 1分36秒424
ラップレコード 1分34秒223 (ファン・パブロ・モントーヤ、2004年)
エンジニアリング 日中はアスファルトの温度が55℃にまで達するため、路面温度の高さが最大の課題の一つとなる。ラバーから余計な熱を放出することが難しく、リアタイヤの消耗が早い。また、チームはエンジンの冷却にも気を配る必要がある
ドライビング 高速コーナーが連続するセクター2において、いかにスピードに乗れるかがカギ。特に今年は、5、6、7、8コーナーにおいての高速バトルが予想される。どのドライバーがこのコーナーでアクセルを踏み続けているかに注目してほしい。ドライバーにとって最も厄介なのは最終の15コーナー。今年から適用された新レギュレーションにより、キャンバーが変更されているため、路面に再舗装が施された昨年のレースと比べて、さらに難易度が増している。このコーナーは頂上から下っていくレイアウトなので、マシンの向きを変えるのが難しく、パワーオーバーステアも起きやすい
マシンセットアップ ダウンフォースは中程度で、サスペンションは硬め。新しい路面は非常にスムーズで、オーストリアにあるレッドブル・リンクに似ている
グリップレベル アスファルトが新しく、路面へのグリップ力は非常に高い。レースが進むにつれ、より多くのゴムが路面に転がることでグリップ力はさらに高まる。そのため、マシンは鋭角に走ることができるので、広いコーナーではさまざまなライン取りが可能となる
タイヤ スーパーソフト(赤)、ソフト(黄)、ミディアム(白) ※この組み合わせは今季7回目
ターン1までの距離 660m(カレンダー中最長はバルセロナの730m)
最長ストレート 920m ※ターン15へ向かう直線(カレンダー中最長はバクーの2.1km)
トップスピード 時速330km(ターン15への進入時、カレンダー中最速はモンツァの360km)
スロットル全開率 65%
ブレーキ負荷 中程度。1周につきブレーキングするのは15%
燃費 1周あたり1.79kgを消費。カレンダー中での平均
ERSの影響 中程度。ERSの利用個所はかなり多いが、8つのブレーキングポイントで回生が可能
ギアチェンジ 57回/1ラップ、3192回/レース

レース

周回数 56ラップ
スタート時間 現地時間15時(日本時間16時)
グリッド レーシングラインはスタートグリッドと同じく左。しかしほとんどのレースで夕方に雨が降るため、決勝前にグリッドが無効になることもある
DRS ゾーンは2つ。ターン1へ向かうストレートと、ターン15へ向かうストレート
戦略 路面温度が高く、高速コーナーが連続するサーキットのため、ドライバーは通常よりもより多くのピットストップを与儀なくされる。昨年は3回もバーチャル・セーフティカーが出動した影響を受け、レースで勝利を挙げたダニエル・リカルドは2回、2位入賞を果たしたマックス・フェルスタッペンは3回のピットストップを行っている。ピレリはこのレースに向けてソフトタイヤを使用するため、より多くのピットストップを行うことが予想される。特に、10周目、25周目、40周目において多くのドライバーがピットストップを行う可能性が高い
ピットレーン 420m。1回のストップでのタイムロスは約22秒(シーズン最長はシルバーストーンの457m)
セーフティカー 出動率は20%。セパンでは多くの事故やアクシデントが発生する傾向にあるが、コースが広いため、ほとんどの場合、マーシャルがすぐに救助のための車を出すことができる
注目ポイント レースが15時から開始されるため、レースの終了は夕方になることが多い。マレーシアではその時間は雨が降りやすいため、ウエットレースになるかに注目
見どころ ドライバーにとって走りがいのあるコースレイアウトと、過酷な気候によるコンビネーション。セパンでは、速いマシン、そして優れたドライバーのみしか勝つことができない。マシンは大量のダウンフォースを作り出すとともに、極限の気候にも耐え続ける必要がある。また、ドライバーは50℃の中でマシンを操縦する必要があるため、強靭な精神力も欠かせない

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