MENU

HONDA

検索

#USLETE STORY

勇気は一瞬、後悔は一生

今季創設された女性ドライバーによるフォーミュラレース“Wシリーズ”。厳しいオーディションをくぐり抜け、日本人として唯一参戦する小山美姫は、現在ランキング7位と奮闘を見せている。異国の地へ単身で乗り込み、ライバルたちとしのぎを削る日々。そんなストイックなアスリートはどうやって生まれたのだろうか。そのルーツを語ってくれた。

“何でもできた”子供時代

5歳からレーシングカートを始めた小山。小学校時代は、クラスの男子とドッヂボールで渡り合うような活発な女の子だったという。体育はいつも満点、図工や音楽、算数に漢字の成績もよく、何でもすぐにできるような子供だったと振り返る。しかし、そんな彼女でも、モータースポーツの世界では思うようにいかないことも多かった。厳しい争いの中で、どんなことを感じていたのだろう。

「小学校6年生のときにレースの難しさを痛感し、そんな厳しいスポーツに魅力を感じました。いろいろなことがすぐにできるようになるタイプだったので、簡単には突き詰められないという状況になったとき、真剣にモータースポーツが好きになりました。厳しい世界だと少しずつ理解していく一方で、レースが好き、このまま続けていきたいと思う自分がいて。レースの最高峰であるF1で戦うことが夢だと、この時点でハッキリ認識した気がします」

しかし中学に入ると、遊びに気を取られ、レースに対して中途半端な取り組みになってしまう時期もあったそうだ。

「でも、私の父は本当に努力家で、私が半端なことをしているときでも、私のために常にレースに対して本気。毎日動画サイトなどを見て研究していました。そんな姿を見て、『私は何をやっているんだろう』と考えさせられ、また真剣にレースに向き合おうと決断しました」

しかし、レースに参戦し続けるためには、多くの資金が必要となる。それが理由でキャリアを絶たれたドライバーも数多くいる。小山も決して例外ではなかった。

「レース活動に見切りをつけるためにも、海外のレースに参戦して、負けたら辞める、勝ったら続けていこうと決めて挑みました。そのレースで勝つことができず、私はレースを辞めました。でも、あきらめきれない。だから、ドライビングコーチをしながら、レースに出るために何かきっかけを作りたいと思い、とにかくできることを考え行動していきました」

甘さのあった自分を変える、自立を目指して

そして、小山はアルバイトを始めた。甘さのあった自分を変えたくて、ひたすら自分に厳しくしようと誓い、学校以外はすべて仕事という生活に明け暮れる。

「1年間その生活を続けて貯めたお金を何に使おうかと考えたとき、“留学”だと思いました。意味のあることをしたかったし、時間を無駄にしたくなかったので、F1ドライバーになっても困らないように英語を学ぼうと思ったんです。何よりも、最後にしたレースで、英語ができていたら多少でも結果が変わっていたのではないかとも思っていたので」

こうして旅立った語学留学の地では、またも壁にぶつかる。

「中学校ではほとんど勉強していなかったので、最初に渡されたのは幼稚園児レベルの教科書。馬鹿にされたようにも感じましたが、その悔しさが力になって、図書館にこもって寝ずに勉強しました。中学で勉強しなかったのはこのためだったんだなと思うほど、紙とペンを使いましたね」

ストイックに自分を追い込むスタイル。それは、レースを離れた環境でも変わらなかった。そんな生活の中で、自然とさまざまな思いが芽生えてきたという。

「一つは、『感謝』の気持ちです。日々当たり前だと思っていたことが、実はそうでないと気づけて、当たり前だと思えることが、そもそも幸せなことなんだなと。人は、人に支えられて生きていけるということを実感しました」

「そして、もう一つは『クルマが好き』『レースが好き』ということでした。どん底だと感じる状況でも、レースに対する想いがなくなることはなかった。これは本物の気持ちなんだなと思いました。それまでも頑張っているとは言っていたけど、まだまだ甘かったなと。今ならもっと頑張れる、そう思ったので、すぐに帰国してレースに出るために再スタートしました」

超えたいと思う自分がいるのか、逃げたいと思う自分がいるのか

帰国の半年後、多くの人の助けを得られたこともあり、レースシートを獲得できた小山。普通の生活ではないかもしれないが、そのおかげで色々な経験を積み、濃い時間を過ごせたという。

「やはり、私は悔しい気持ちが一番の力になります。現実を受け止め、その上で『越えたい』と思う自分がいるのか、『逃げたい』と思う自分がいるのか、よく自分と向き合います。それでも、私はレースが“好き”という想いを超えて“愛”があるので、辞めたいと思う自分はいません。そのためなら、どこまでも、何を捨ててでもやりたいと思えるので、その愛と悔しさと、未熟だった自分、それらを力に変えて何倍も強く歩み出す、その繰り返しです」

今季は世界で戦うWシリーズと国内のFIA-F4選手権とに参戦する小山だが、今も勉強の毎日だと言う。トレーニングはもちろん、英語の勉強も欠かさない。さらに、それぞれのマシンの予習と復習をし、車載カメラの映像を見たり、先輩からアドバイスをもらったりしながら、次のレースの組み立てを考え、24時間365日レースのことを考える日々が続いている。

「こうした取り組みは、質が大切なので、どれだけモチベーションを上げられるかです。毎日メンタルコントロールをして、ここでも自分との戦いです」

怖いからこそ、それに打ち勝って怖さを消したい

最後に、戦い続ける上で、大切にしている言葉を聞いた。

「勇気は一瞬、後悔は一生」

「後悔は、やり残しから生まれます。踏み出した後の後悔は経験になり、次につながるので、結果として後悔のまま終わることはないと思います。私は、どんな結末だろうと結果を知りたい。そのためには一歩踏み出すしかありません。それは、恐怖と好奇心の戦いだと思いますが、私はビビりだからこそ、ビビっている自分でいることがまた不安になってしまいます。怖いからこそ、それに打ち勝って怖さを消したいんです」

レースでは攻めのドライビングを見せ、常に強気に見える小山だが、その内面はいつも怖さとの戦いを繰り返している。

「人生は一度しかないから、思い残すことのないようにやりきろう!これ以上最高の人生はなかったと思える終わりを迎えたい!そう思って、最後に笑えるように、日々精進です」

Wシリーズでは4位が最高位。前戦のオランダではクラッシュにより1周目でリタイアし、初めてポイントを獲得できずに終わった。思うような結果は残せていないが、それでも一戦ごとに学びを深め、次への改善に活かしている。だから、レース後の反省はあっても、後悔はない。

これまでの悔しさを力に変えて、また次の一歩を踏み出す。それを繰り返してここまで進んできた。Wシリーズ最終戦で、小山美姫は、どんな走りを見せてくれるのだろう。

小山美姫
レース結果と参戦予定レース

Wシリーズ 2019 RACE CALENDER
FIA-F4 2019 RACE CALENDER

Wシリーズへの参戦によりFIA-F4のレースに参加できない可能性があります。
詳しくは、各報道機関の発表する最新の情報をご確認ください。

Powerwd by #USLETE Honda Racing