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#USLETE STORY

人にどう思われるかを気にするのではなく、
自分がどうしたいかを考えて進んできた

Honda HEAT 竹内佳乃(アナリスト)

ラグビー国内最高峰のトップリーグに参戦する「Honda HEAT」。このチームを支える23歳の女性スタッフがいる。彼女の仕事はプロ契約の「アナリスト」。試合や練習でのプレーをデータ化してチームを勝利に導く役割だ。「ラグビーが好きで、どうしてもこのスポーツに関わる仕事がしたかった」。その想いに沿って行動し続け、アナリストという職業にたどり着いた。

80分の試合の映像を毎試合4〜5時間ぐらいかけて分析しています

アナリストは、スポーツ現場での戦略立案に欠かせない役割を担う。試合の映像を確認してプレーを数値化したり、対戦相手の試合を分析して対策を立てたりといったことが日々の仕事だ。Honda HEATで彼女はどのような日々を過ごしているのだろう。

「何度も試合の映像を見ながら、各選手の数値を割り出しています。例えば、タックル成功率。試合のビデオを繰り返し見て、一人の選手がタックルを何回試みて、何回成功したかを数えていくんです。同じシーンを3回くらい繰り返して見るので、1試合80分の分析には4〜5時間かかります。また、対戦相手の分析は、最低でも直近3試合のビデオを見て、プレーの傾向を分析します。対戦1週間前には分析を終えておかないと練習に活かせないので、常に先手を取って分析を進めないといけません。トップリーグは毎週末に試合があるので、チームがその週末の対戦相手に向けた練習をしているときに、私は2週間後のことを考えている、というように一歩先へ動く必要があります。こうして集めた情報をコーチ陣へ情報共有しながら、チームを勝利に導くサポートをするんです」

チームにアナリストは1人だけ。その分、コーチや選手たちからも頼られる存在だ。

「ヘッドコーチ(監督)へデータを共有し、それをもとにコーチが選手を指導します。分析をしている中で、『こうしたほうがいいのでは?』と気づくことがあれば、それもコーチへ伝えるようにしています。気づいたことすべてを選手に直接伝えると、チームの指揮系統が乱れてしまうので、気を付けていますね。でも、直接選手から相談を受けることもあります。例えば、『なんでこのタックルが成功にカウントされないの?』という確認。こういう場合は、映像を一緒に見返しながら、ポイントを説明すると納得してくれますし、その後のプレー向上にもつながっていると思います」

高校時代はラグビー選手やったんです。
父に勝手に応募されたのがきっかけで(笑)

そもそも、このアナリスト、求人情報に掲載されるような職業ではなく、彼女もいわゆる一般的な‘就活’はしていない。どんな歩みで、ここにたどり着いたのだろうか。

「ラグビーに出会ったのは、父の影響でした。高校生のとき、女子ラグビーが五輪種目に採用された年に、近畿地区で女子ラグビー選手アカデミーの募集があって、勝手に応募されたんです(笑)。それ以前はバレーボールや水泳をやっていたのですが、そのときは部活にも入らず遊んでばかりいたので、それを見かねて父が動いてくれたんだと思います。アカデミーの練習は週1回。それを高校の男子ラグビー部の友達に話したら、週1回じゃ足りない、もっと練習した方がいいと言われて、男子ラグビー部にも入りました。それが本格的なスタートだったように思います。毎日男子と練習していたから、女子とプレーするときは、ラグビーボールや他の選手の動きがスローに見えましたね!特殊なメガネでもかけているんじゃないかってくらい(笑)」

ダニー・リーヘッドコーチと一緒に分析データを確認

本格的にラグビーを始めると、どんどんその魅力に引き込まれていったという。

「試合が終われば敵味方関係ないという、‘ノーサイド’の精神に惹かれましたね。試合中は格闘技のようにぶつかり合うのに、試合が終わればライバルとの仲が深まっている。そんな姿が素敵だな、私もそういうつながりが欲しいなと思って、どんどんのめり込んでいきました。女子は人数も少ないので、遠征なども多くて、全国に仲間が増えていきました。ラグビーは、チームのために全員が身体を張るスポーツ。どんな体型の人でも活躍できるし、みんながチームのために貢献できるんです」

「ラグビーを仕事にしたい」
漠然としたその想いを持ってとにかく突き進んでみました

高校を卒業し、立命館大学に入学。大学でもラグビーに関わりたくて、ラグビー部にトレーナーとして入部した。

「将来は、絶対にラグビーに関わる仕事がしたかったんです。トレーナーとしてラグビーに関わるのがいいのか、他に自分に最適な職種があるのか、日々考えていました。当時、ラグビーに関われる仕事はどんなものがあるのかも分からなかったので、自分の目で確かめてみようとラグビーの本場であるニュージーランドへ留学しました」

試合の動画を何度も見返してデータを取る

そこで、彼女を待っていたのは、運命の出会いだった。

「見学に行ったニュージーランドのチームに、当時のHonda HEATのヘッドコーチも来ていたんです。海外で日本人に会うことって少ないし、海外ではみんながフレンドリーな雰囲気というのもあって、思い切って声をかけました。たぶん、日本だったら恐れ多くて話しかけられなかったですね(笑)。そこで、『なにかラグビーに関わる仕事をしたいと思っています!』と相談したら、アナリストという職業を教えてもらって、『インターンでよければ勉強しに来られるよ』と言ってもらえました」

帰国後、大学のチームでも、トレーナーからアナリストに転向。さらには、Honda HEATにインターンとして通い、夢をつかむため修業の日々が始まる。

「大学チームの活動をしながら、週2回インターンとしてHonda HEATへ通いました。当時は滋賀に住んでいたんですが、HEATの拠点である鈴鹿まではクルマで。親にボロボロの中古の軽自動車の購入をサポートしてもらい、自分で運転。でも、親に頼るのが嫌だったので、バイトを頑張ってクルマ代を返しました(笑)。このころ、周りの友人は一般的な就活して夏には進路が決まっている中で、私はとにかくラグビー漬けの毎日でした。その後、アナリストとしてHEATに採用されましたが、もしダメならもう一度ニュージーランドへ行って、勉強しようと思っていました。どうなるか決まらない中で、何も言わずに見守ってくれていた両親には、本当に感謝しています」

今から10年後の自分なんて、まだ見えてません(笑)。
でも、一生懸命やっていれば絶対に見つかると思う

一般的な就職ルートとはかけ離れた道を彼女は歩んだ。その原動力は何なのか。

「とにかくラグビーが好きです。だから、なんとしてでもラグビーに関わる仕事をしたかったんです。もしアナリストという仕事に出会わなかったら、広報やメディア関係などの職に就くことも選択肢として考えていたと思います。どんな仕事がラグビーに関わるかを知りたくてニュージーランドへ行ったら、この仕事に出会えました。試合後の分析は夜遅くまでかかることもありますけど、それでも今の仕事は楽しい。好きだったら、どんなにしんどくても頑張れるんです」

練習後に小林亮太キャプテンと気になるプレーを見返す

夢は、まだ始まったばかり。一流のアナリストを目指して、さらに羽ばたこうと考えている。

「ゆくゆくは、アナリストとして海外チームで挑戦したいと思っています。海外のチームできちんと活躍し、視野を広げたいです。そして、日本に帰ってきたときには、その知見を活かしてさらに日本のラグビー界に貢献できるように。いまのヘッドコーチはニュージーランド人ですが、通訳を介さずに話せるように日々チャレンジしています。まだまだですけど(笑)。日常のコミュニケーションは問題ないのですが、細かな戦術的な話など、きちんとディスカッションできるようになるために、さらに英語を勉強中です」

最後に、夢への挑戦を目指す同世代の人々へアドバイスをもらった。

「まずは動くこと、アクション。それが大切だと思います。一歩踏み出しましょう!私が挑戦できたのは、人にどう思われるかを気にするのではなく、自分がどうしたいかを考えて進んできたから。周りにリスクを指摘されても、自分が必要だと思えば、迷わずに踏み出して、突き進みます。まずは、自分の好きなことは何か、見つけてみてほしいですね。夢が見つかるまでは、回り道してもいいんじゃないかな。私もトレーナーから始まりましたが、その期間に裏方の役割とは何かを学ぶことができました。今から10年後の自分なんて、まだ見えていません(笑)。でも、一生懸命やっていれば絶対に見つかると思うから、焦っていないですよ!」

※このコンテンツは、2019年9月に取材撮影を行ったものです。