2012年6月ベストショット賞

芋づる式の夢―高根沢三兄弟

杣夫の末裔さん (30代/愛媛県)
Type T(NA1) (2012年6月1日の投稿)

元々、NSXに興味がなかった訳ではない。そもそも、4年前にS2000を購入した動機の源泉は、高校生の頃に、NSXやType-Rの存在を通じ、 Hondaは尖がった車を作る凄い会社だという印象が私の中で確立されていた事にあるからだ。しかし、学生の頃の私にはあまりに価格が現実離れしていた 事、後にバブル経済の副産物としての就職氷河期の煽りで、少なからず苦労した事もあって、どこかNSXに対し斜めに構えて見ている部分があった。従って、 ごく近年まで、NSXを所有したいという欲求は、私の価値観において限りなく虚数に等しい事だった。

考え方が変わった原因は、投稿写真に 写っている、高根沢工場で生産されたNSXの血を分けた兄弟達にある。末弟―初代インサイトに乗っていると、軽快感があり、よく曲がるが、気持ちよく通せ るラインコントロールの幅が狭い点が多少気になり、次兄―S2000に乗っていると、爽快さ、レスポンス、コントロール性ともに申し分ないが、場面によっ ては、もう少しリア加重が残ってくれた方がブレーキタッチが神経質にならずに良いのだがという思いが少し湧いてくる。いつしか、次乗ってみたい車は、操作 性に優れ、荷重変動の少ないミドシップスポーツカーだ、という考えが私の中に出来上がっていた。

そうなると、末弟はアルミ製車体構造の信頼性を通じ、次兄は上原繁氏を始めとする開発陣のスポーツカーに対する哲学を通じ声なき声で、しかし、雄弁に訴え てかけてくるのである。『我々の長兄は確かな技術と思想で括られた車である』と。それに私自身の物欲も加味され、2年ぐらい前のある日、唐突に高根沢三兄 弟体制を敷こうという夢(=欲望)が私に中にぶち上がった。全く、我ながらどうなっているのだろうか。
そして、現在、その体制が実現してしまった。未だに「何で私はNSX-Tに乗ってるんだ?」と狐に摘まれたような感じではある。ちなみに、NSXの車両挙 動はほぼ私が頭の中で描いていたものと符合し、オープンルーフの爽快さも相まって非常に満足している。芋づる式に辿り着いた夢だが、蔓の先にまだ夢という 名の果実は連なっているのか。出来れば、Hondaから想像の斜め上行く斬新な提案が出てくることを願って止まない。

USER'S VOICE 事務局からのコメント

青空を映し出すかのような鮮やかなブルーのNSX、そしてお揃いのシルバーで仲の良さをアピールするS2000と初代インサイト。そんな愛車達を「高根沢三兄弟」と名付けられた杣夫の末裔さんのご投稿。発売当時、同じ高根沢工場生まれの2シーター車として、NSXとS2000のスタイルと走り、そしてインサイトの低燃費性能に魅了された人もきっと多いはず。そんな異なった魅力を持った3車種ですが、同じ工場生まれということを知ってから、仲良く並ぶお車のお写真を拝見すると、無機質なはずの車達になぜか兄弟の絆に似たものを感じてしまうから不思議ですね。これからも高根沢三兄弟とともに充実したカーライフを過ごしてくださいね。6月のベストショット賞の受賞おめでとうございます。