S2000
S2000  
S2000のユーザーズボイス  
想いを乗せて走るスポーツカー
若旦那さん 20代  (茨城県在住) <2005年2月28日の投稿>
納車されたばかりのS2000、ボクにとってそれは特別な意味を持つ車。サラリーマンだったボクは、急遽実家に帰って病気で倒れた父親の仕事を継ぐことに。1年半近く前のこと。

当時ボクは初めて人生を一緒に過ごしたいと思える女性と交際していた。今までの安定した雇われ仕事から、どんな生活になるか分からない仕事を継いでしまったボクは、彼女との将来のためだけに全てを犠牲にして働いてきた。口先だけの約束を嫌い、仕事が落ち着いて「力」を手に入れるまでは、彼女に自分の想いなど伝えたことはなかった。

でも、仕事ばかりで彼女を顧みず、ずっと先の将来ばかりを見据えていたボクは、愚か者だった。今現在の彼女の気持ちまで犠牲にしていたのだから・・・。やっと仕事も落ち着きを見せ、いや、大成功と言える。どんな不況が来ようと彼女を守っていけるだけの、経済力や覚悟ができた頃。その想いを伝える前に、彼女は他の人と進むことを決めた。それでも、彼女を責める、そんな気分にはなれなかった。悪いのはボクなのだから・・・。

別れ際に彼女に約束をした。「もしあなたが絶望の底に落ちたら、必ず迎えにいくから。助けにいくから」と。今までのボクの気持ちを知って泣きじゃくった彼女。そうは言ってもボクには絶望しかない。後悔の日々・・・。

彼女との別れの少し前に、回復の兆しを見せた父に「御褒美だ。車買ってやるぞ」、そう言われた。ボクが選んだのは、先進のデザインでもなく、Sの系譜でもなく、オープンでありながらの高剛性ボディでもない。
いつか彼女に会いに行くために、どんな距離でも埋めてくれる脅威の心臓F20Cと、そのパワーを何事もないかのように路面に伝えてコーナーをクリアしていく足回りが必要だった。
目の前には絶望しかないボクを、タイトながら優しく包んでくれる赤黒コンビシート。精悍なムーンロック・メタリックのボディカラー。そこから闇を切り裂くように放たれるディスチャージヘッドライト。そして彼女への気持ちを押し殺して闘ってきたボクの想いを、形にしたかのように真紅に結晶塗装されたヘッドカバーのV-TECHエンジン。そのすべてが、いつか彼女に会いに行くときのための仕様。

大事な人を失った想いを乗せて走る、S2000は来るかどうかも分からない、そんな「いつの日か」の為に今日も静かにたたずんでいる。
USER'S VOICE
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