まだ夜が明けぬ間に、今は国道となったスカイラインを駆け上がり、県境に位置する武平峠の誰一人いない駐車場で、静寂の闇の中からうっすらと頼りない行灯の明かりのように、地平線の彼方から赤く色づいてくるのを車の中ではなく、車外で寒さに耐えながら、じっと東のほうを眺めて佇んでいた。
6時30分を過ぎた頃から、雲が赤く染まりながら徐々に色を濃くして輝きだしてくるのを飽きもせずに見続けていた。
自分では東側を向いているつもりでいたが、明るくなるにつれて下界の風景から北東の方向を向いていたことがわかり、せり出した山肌が視界を遮って、日の出を直接目の当たりにすることはできなかったものの、夜が明ける美しい瞬間を独り占めしたような心地よい時間を過ごすことができた。
今日という日がこれから始まると言っているような、そんな神聖な儀式に巡り会ったような気分でもあった。
毎日、自然の営みの中で同じことが永遠に繰り返されているのだが、通常はこうしてまだ日常の生活が眠りについていて、活動が始まる前の時間帯にこっそり起き出して朝日を見ようと行動すること自体、相当変わっていると自覚しつつも、切り取ることができたかのようなこの一瞬で、三文はおろか、大いに得をしたような気持ちになれたのも事実である。
そんな何気ない思いつきのひとときを、アコードと共に味わうことができたことに、ささやかながら幸せを感じた私である。
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