季刊うかたま
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写真=高木あつ子 文=おおいまちこ

今回の耕す女子
- 埼玉県川口市肥留間 佳子さん(ひるまけいこさん)
- 1971年、埼玉県さいたま市生まれ。神奈川県の助産師学校を卒業後、大学病院、産婦人科クリニックに11年勤務。2006年に結婚して就農。畑歴13年。
まるでテーマパークのよう
今回の耕す女子、肥留間佳子さんが夫の広幸さんと切り盛りする「肥留間農園」は、家々や工場に囲まれた都市近郊にありながら、とてもバラエティに富んでいて、まるで農のテーマパークにいるかのよう。
門をくぐると、正面には江戸時代後期に建てられたという立派な母屋。その玄関先から畑に続く小道の脇には、鶏小屋があり、ヤギ小屋があり、ピザを焼いたりベーコンを加工するための石窯があり……。屋敷林の一角にはシイタケ栽培用の原木が、その向こう側には養蜂箱が見える。
ケヤキやイチョウ、ゆずや柿の木など数えきれないほどの樹木。自生するミョウガやフキ。さらに奥に進むと、そこが野菜畑。多くの種類を少量ずつ育てており、地元の直売所で販売する野菜たちがじりじりとした太陽の光を浴びている。畑は計4反5畝*、他に敷地の周辺に田んぼが2反3畝ほどあるという。
ふと見ると、青々とした草がわさわさと茂っている。これは、藍?
「そうです! 草木染めが趣味で、藍の生葉染め用に栽培しているんです。今、かぶっている手ぬぐいも、藍で染めたものなんですよ!」と、佳子さんはにっこり。
畑での日々の仕事は、タネまきや芽かき、収穫、草刈りなどの細かな作業。機械を使うような大仕事は、ほとんど広幸さんにまかせっきりだが、今日は小型耕うん機「こまめF220」を使い、秋冬野菜を植えるための畑の耕うんと畝うね立た てに挑戦。広幸さんにコツを教わりながらゆっくりと畑を耕し、その後、アタッチメントの培土器を取り付けて畑を往復すると、あっという間に畝ができあがった。
「〝こまめ〞は、コンパクトで女性でも使いやすいから、一人でささっと耕したいときにいいですね。培土器をつければ、いろんな形の畝がラクに、きれいに立てられるのもうれしいです」
畑で休憩中のヤギのリュウノスケくんが、ひと仕事終えた佳子さんを遠くからじっと見つめている。
*1反=300坪、約1,000㎡/ 1畝=30坪、約100㎡




夏場の野良着は、もんぺにTシャツが定番スタイル。この日のもんぺは綿100%の久留米絣。頭に被った涼しげなブルーの手ぬぐいは、藍の生葉で染めたもの。履物は長靴ではなく地下足袋を愛用。「この家に来たその日に、夫に“これ履いて” って渡され、以来、地下足袋以外は履いたことがありません」