季刊うかたま
http://www.ukatama.net/
写真=高木あつ子 文=おおいまちこ
今回の耕す女子
- 千葉県南房総市鍋田 ゆかりさん(なべたゆかりさん)
- 1975年生まれ、兵庫県出身。浪速短期大学卒。23~33歳までバックパッカーをする。モロッコには計4年滞在。2007年、モロッコ雑貨などを扱う会社に勤務。11年、南房総市へ移住。16年に古民家を購入。現在、DIYで改修工事をしながら暮らす。モロッコ雑貨を販売するオンラインショップを運営(現在、休業中)
南房総で古民家暮らしを
千葉県南房総市の内陸部を車で走らせていると、道路脇にちょっぴり不思議な雰囲気を醸し出す家が見えてきた。昔ながらの農家住宅なのに、外壁にはアラビアンテイストな月と星の装飾。玄関先からは、クミンの香りがふわ〜っと漂ってくる。
土間から顔をのぞかせたのは、この家の主・鍋田ゆかりさんだ。ゆかりさんは1年半ほど前、280坪の敷地に建つ築100年の畑つき古民家を購入。隣町でアルバイトをするかたわら、業者には頼まず、仲間や地域の人々の知恵と手を借りながら自力で改修を開始。今なお工事が続くこの家に、ヤギの「ヒジキ」、イヌの「アワ」とともに暮らしている。
「ようやく洗面台をつけたところなんです」
そういって、案内してくれた室内にトイレはなく、外の厠かわやがあった所にコンポストトイレを設置して使い、料理はカセットコンロでしのいでいる。「屋根からアライグマの赤ちゃんが落ちてきたこともあるんです」と、生活ぶりはかなりワイルドなようだが、ゆかりさんは楽しそう。
7年ほど前、東京から移住してきたゆかりさんは、南房総を転々としながら、その土地土地で田畑を借り、自給的な暮らしを楽しんできた。ここに越してからは家の改修工事に手がかかって畑仕事ができずにいたが、この春から畑とともに田んぼも借りて再開する計画だ。
もっとも、母屋の裏手に広がる農地は長い間耕作されておらず、どこが畑なのかもわからない。まずは冬枯れした草木を引っこ抜き、かたくなった地面をガスパワー耕うん機「ピアンタ」で耕した。ハンドルのグリップをしっかり握って耕うん機を上からぐっと押さえ、ゆっくり丁寧に耕していく。何度か往復すると、次第に土がやわらかくなってきた。
「ピアンタは、普段使っているカセットボンベで動くというのがすごい! 小型だけれど、かたい土でもよくうなえます」
ゆかりさんは、ソラマメの苗を持ってくると、さっそく定植し始めた。
野良着はつなぎタイプがお気に入り。このサロペットは、自分でデザインして、オンラインでオーダーしたもの。胸元に、モロッコで出会った、“ジミーヘンドリックス”という名前のラクダの写真と、アラビア文字で「I LOVE MOROCCO」とプリント。頭にかぶった手ぬぐいはうっすらとしたピンク色。「ヤマモモの樹皮を使って、自分で染めました」