季刊うかたま
http://www.ukatama.net/
写真=高木あつ子 文=おおいまちこ

今回の耕す女子
- 東京都世田谷区野島菊美さん(のじまきくみさん)
- 1962年、東京・世田谷区生まれ。畑歴10年。文化女子大学(現・文化学園大学)を卒業後、OL生活を経て、27歳のときに結婚。家族は夫と1男1女。2005年、父親の跡を継ぎ、農家になる。
都市農業の担い手として
「ピピピピッ、ピピピピッ……」
ビニールハウス内のどこからか、アラーム音が聞こえてくる。野島菊美さんは、これを合図にイチゴの収穫を切り上げ、足早に作業小屋に向かった。朝一番の仕事は、イチゴの摘み取りとパック詰め。出荷先のJA東京中央の直売所「ファーマーズマーケット千歳烏山」が開店する10時までに、ひとまず用意できた分を搬入するのだという。
「ハウスにいると、つい時間を忘れて仕事をしてしまいがち。区切りをつけられるよう、10分おきにアラームが鳴るようにしてあるんです」
そんな話をしながらイチゴを手早く選果し、パックに詰める。準備が整うと、パンジーの花苗とともに軽ワゴン車の荷台に載せ、車で5〜6分の直売所に向かって出発した。
ここは、東京23区の中でもっとも人口が多い世田谷区。菊美さんの畑は、戸建てや大型マンションが立ち並ぶ住宅街の合間にある。農地の広さは計18a*程。ハウスが2棟に切り花用の花畑、ブルーベリーやブドウ、キンカン、ミカン、カキなどの果樹類、竹やぶもあり、住宅密集地にありながら、そこだけぽっかりと静かな異空間が広がっている。
菊美さんは、生まれ育ったこの土地で、10年ほど前からイチゴと花き類を中心に栽培している。12月から翌年5月頃までのイチゴの季節は、朝一番の出荷から戻ると、2回目の出荷に向けて、再びイチゴを収穫。昼食をとらないまま、一気に仕事を片づけてしまうという。
イチゴが一段落すると、花苗の世話や切り花用の花の手入れなどに取り掛かる。この日は、キクとダリアを片づけた後の畑に、ユリとチューリップの球根を植えるため、小型耕うん機「こまめ」を使って耕した。
「“こまめ”は大きさ的にも使い勝手がよく、軽いのにしっかり耕せる。畑においておくと、この“赤”が、とても映えますよね」と、菊美さん。春がきたら、バス通りの向こうのマンションからも、色とりどりの花畑が見渡せるはずだ。
*1a=100㎡,約30坪







農作業の際の必須アイテムはエプロン。「つけることによって、気持ちをきゅっと引き締める感じかな。素材や柄は、その日の服や季節に合わせて選びます」。日に何度もお店に納品に行き、一般のお客さんと会う機会も多いので、全体的にこざっぱりと見える格好をするようにしているとか