季刊うかたま
http://www.ukatama.net/
写真=高木あつ子 文=おおいまちこ

3カ月先輩の研修生・羽塚冬馬さんはミニ耕うん機「ピアンタ」でネギのうね間を除草中
今回の耕す女子
- 茨城県石岡市河村友紀さん(かわむらゆきさん)
- 1982年京都生まれ。畑歴3カ月。近畿大学農学部卒。在学中、国際協力NGOでインターンシップ*を経験。卒業後、OL生活を8年、その後、京都市の行政職を経て2014年7月より「ORGANIC FARM暮らしの実験室」が運営する「やさと農場」で研修中。
*学生が在学中に自らの学習や将来の進路などに関連した就業体験を企業等において一定期間行なうこと。
有機農場の研修生として
「ORGANIC FARM 暮らしの実験室」と描かれた黄色い看板を目印に、ゆるやかな坂道を上っていくと、作業着姿の河村友紀さんが笑顔で出迎えてくれた。尻尾をフリながら駆け寄ってくるイヌと人懐っこいネコ。母屋の脇にいるヤギも興味深そうにこちらを見つめている。
ここは、茨城県石岡市八郷地区の山里にある「やさと農場」。ブタやニワトリを飼い、その糞を堆肥にして畑に還し、野菜や米を栽培する有機農業を営みながら循環型の暮らしを提案・実践。友紀さんは今、この農場で研修生として生活している。
秋も深まってきたこの季節、朝の作業はブタの世話から始まるという。午前8時から豚舎の清掃や餌やりを1時間ほどかけて行ない、その後は畑仕事。農場から車で5分ほど離れた畑を訪ねると、農場のスタッフや他の研修生らが、せっせと種まきにいそしんでいた。耕す人、土に溝をつける人、種をまく人と役割を分担し、カラシ菜やカブなどの種を丁寧にまいている。
種まきが一段落した友紀さんは、ネギやサツマイモが植わった畑の一角を、ガスパワー耕うん機「サ・ラ・ダ CG」を使って耕した。
「私にとって、耕うん機はターンする時が重くて恐怖なんです。でも『サ・ラ・ダ CG』は、レバーを直線から旋回に入れ替えるだけでスムーズにターンできる。これってポイント高い」
さわやかな秋風を受けながら、軽やかに畑を耕していく。




農のある暮らしに憧れて
友紀さんが、「やさと農場」の研修生になったのは、2014年7月のこと。研修といっても、農業がやりたくて勉強をしに来たわけではない。いつか田舎で農のある暮らしをしたいという夢があり、今は文字通り、「“暮らしの実験”をしているところです」と、友紀さんは話す。
そもそも「農」との出会いは大学時代。当時、国際協力に関心があった友紀さんは、NGOのパーマカルチャー*事業の立ち上げにインターンとして参加。これをきっかけに農を軸とした自給自足的な暮らし方に興味を持つようになった。それ以来、学問としての農のほかに農業のイベントに参加したり、農家の元へ手伝いに行くようになり、土に触れるのが好きになったという。
生まれも育ちも関西だが、大学卒業後は、日本最大の有機農場を持つ大手外食産業への就職を機に東京へ。営業やマーケティング部門で日々、忙しく働いた。だが、そうした中でも、休日に会社の農場や、知り合いのつてを頼って各地の農家を訪ね、畑仕事や農産加工を楽しんだ。
その過程で巡りあったのが、「やさと農場」だった。「やさと農場」は、今から40年前、「自分たちの手で安全な食べ物をつくろう」と、都市部の住民と農を志す青年が手を組み、開墾から建物の設計、建設まで自分たちでつくり上げた自給農場だ。
「来た瞬間、自由な雰囲気を感じたんです。ここでは、誰が主でもなく、皆が平等。何をしゃべってもいいし、問題があれば、皆で話し合って解決する。都会の若者たちといろんなイベントをしたり、動物がたくさんいるところもいい! 自分にぴったりだと思いました」
*恒久的に持続可能な環境をつくり出す農を土台とした循環型の暮らし方。





農作業にかかせないアイテムは手ぬぐい。「汗を拭いてもすぐ乾くし何かと便利。今日はお気に入りの京野菜柄です」と、友紀さん。むれるのがイヤで帽子はかぶらないが、日焼けでひどい目にあった経験から、「日焼け止めクリームはしっかり塗っています」とのこと