季刊うかたま
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写真=高木あつ子 文=おおいまちこ

今回の耕す女子
- 茨城県城里町小林今日子さん(こばやしきょうこさん)
- 1970年、愛知県名古屋市生まれ。愛知教育大学卒。畑歴7年。小学校の講師など、さまざまな職業を転々とした後、05年、北海道新篠津村で2年間農業研修を受ける。研修先で出会った大介さんと07年に結婚し、同時に茨城県城里町で就農。
農作業はラジオを聞きながら
初夏の日差しを浴びてトウモロコシやピーマン、インゲンなどの夏野菜がすくすくと育っている。前日に久しぶりに降った雨のおかげか、野菜の肌はどれもつやつや、葉もぴんぴん。見るからにおいしそうだ。
「畑の作付け計画を立てるのは夫、出荷作業は私の担当と、大まかに夫婦で仕事の役割分担を決めていますが、苗の植えつけなどの栽培管理や草取りは、基本的に2人で一緒にやっています。いつも録音しておいたお気に入りの深夜ラジオ番組を聞きながら。世間の風が感じられるし、情報も得られるし。夫婦の会話のいい肴にもなるので(笑)」
笑顔でそう話すのは、今回の耕す女子、小林今日子さん。
今日子さんは、夫の大介さんと茨城県城里町で「サンキュウ農園」を営んでいる。6年前、結婚したのを機に、兼業農家である大介さんの祖父から畑5反(*)を借り受け夫婦で就農。毎年、少しずつ近隣農家から農地を借りて面積を増やし、現在は11カ所に点在する2町の畑で野菜や小麦を、2反の田んぼで米を、農薬や化学肥料を使わずに育てている。
出荷場や倉庫、ハウスがあるのは、大介さんの実家の敷地内。通りを挟んだ向こうにジャガイモなどを育てている畑があり、その一角を、今日子さんがガスパワー耕うん機「サ・ラ・ダCG」で耕している。
『サラダCG』は自走式なので力を入れなくてもまっすぐ耕せる。カセットガスというのも便利ですね」農機が大好きという大介さんも加わり、秋に向けて畑を整えた。
*1町=約10000平方メートル。 1反=約1000平方メートル。1畝=約100平方メートル。 1町=10反=100畝


堆肥への興味から農の世界へ
今日子さんは名古屋の出身だ。JR名古屋駅から歩いて10分ほどのビルの谷間に家があり、「土に触れるのは学校のグラウンドだけ」という、農業とは縁のない環境で育った。
小さい頃から小学校の先生になることが夢で、高校卒業後は愛知教育大学に進学。だが採用試験に受からず、小学校の事務職についたのを皮切りに、OL、空港で飛行機を誘導する“マーシャラー”、保育士、ホームヘルパーなど、その時々の関心から職を転々とした。
小学校の常勤講師になったのは32歳の時。担任教師のサポートで参加した総合的な学習の時間の授業で生ゴミ堆肥を扱い、これをきっかけに、農業に興味を持った。
「腐っていくはずのものが、発酵して土の栄養分になる。農業の循環的な部分に惹かれたんだと思う」
担任教師に堆肥について詳しくたずねると、三重県にある「全国愛農会」が主催する9泊10日の大学講座を紹介してくれた。今日子さんはさっそく休暇を利用して受講。有機農業や農産加工を学んだ。
「そこで完全にはまりまして…。いつか自給的な暮らしがしたいと思うようになりました」
3年間の講師生活を終え、05年、今日子さんは、農業の技術を身につけるため、農業体験研修生として北海道新篠津(しんしのつ)村へ向かった。
「とにかくやってみようと…。村が募集していた研修制度では、半年間、宿泊施設に寝泊まりしながらいろんな農場を回って、農作業から作業場の掃除、ペンキ塗りまで、何でもやりました」
その研修先の一つ、「大塚オーガニックファーム」で、大学卒業後、研修生として働いていたのが大介さんだった。自給的な暮らしがしたいこと、将来の農業の経営ビジョンなどを語り合うなか意気投合した2人は翌年から一緒に暮らし、大介さんが2年間の研修を終えた07年2月に結婚。農家としての生活が始まった



**メーカー指定カセットボンベは東邦金属工業株式会社製。


パンツと腕カバーは、おしゃれ野良着などの衣類を手がける「ア・リュ」の藤井優子さんがデザインしてくれたもの。「市販の腕カバーは短いので、“長めのものをつくって〜”とリクエストしたら、こんなおしゃれなのをつくってくれて…。パンツは股上がゆったりしているのではき心地がよく、作業中、お尻を蚊に刺されなくなりました(笑)」