耕うん機の爪の回転
よく見ると違いがある
初めて使う畑や、ワンシーズン使っていなかった畑では、土が硬く、手作業で掘り起こすのは一苦労だ。そんなときこそ耕うん機の出番だ。だが硬い圃場では、扱いに苦労するという声も聞く。思ったような深さまで耕せない、軽くはね返ったり、ダッシングが起きやすいなど。そんな悩みを解決するポイントとして、今回は耕うん爪の回転に注目してみたい。耕うん機には、爪が前進方向に回転する「正転構造」と、この正転の爪に後方に回転する爪を合わせた「一軸正逆転構造」の2つのタイプがある。今回は、それぞれの構造を持つ2 機種を用意し畑での実力を検証した。
「正転」タイプの
耕うん機を検証
まずは、正転構造の車軸式の耕うん機で耕うんを試してみた。正転は、爪の回転で前進し、後部の抵抗棒を地面に押し付けることで耕うん力が働き、その力加減のバランスにより細かく、やわらかな土づくりができる。ただし、土が硬い場合、爪が深く食い込みにくくなることがあり、しっかりした深さまで耕すには、同じ場所を何度か耕うんする必要がある。また、機体が急に飛び出してしまうダッシングと呼ばれる現象も起きやすく、やわらかい土から硬い土への変わり目などは特に神経を使う。ダッシングを軽減するには、機体が跳ねないように、抵抗棒を強く土に押しつけながら進む必要がある。とはいえ、さほど硬くない土であれば効率よく快適な作業ができるだろう。
パワフルに土を耕す
「一軸正逆転」の仕組み
次に「一軸正逆転」タイプをみる。このタイプは同じ軸上で内側の爪が前方に回転し、同時に外側の爪が後方に回転する仕組みになっている。今回は前方に爪があるフロントロータリー式の耕うん機を使用した。そもそも内側と外側で逆方向に回転させるメリットは何だろうか。実は、前に進む力(正転)と逆の力が同時に働くことで、その場にとどまる力が働く。それにより爪がしっかりとパワフルに土に食い込み、さらに左右の大径の走行タイヤにより安定したスピードで確実な耕うんができる。最初から効率よく深く耕せるから、正転の耕うん機で二往復、三往復の耕うんが必要だった畑でも一往復で済むので作業が楽になると感じた。結果的により時間の節約ができる。また、安定して爪が土に深く食い込むことで、ダッシングの悩みは軽減されるだろう。初心者からベテランの人まで安心して使えるのではないだろうか。ちなみに、内側が正転、外側は逆転という構造は、一軸正逆転の耕うん機の中でもホンダだけの設計。内側が正転になっていることで、フロントに土だまりを作らず、スムーズに進む。仕上がりが美しいというのも特長だ。
硬い圃場に悩む人には
「一軸正逆転」がオススメ
実際の操作で比べてみた結果、特に硬い土や粘土質の畑では、耕うんの安定感、効率の良さという点では、一軸正逆転タイプに優位性があると感じた。最初の耕うんで素早くふかふかの土になり、体力への負担も軽く済む。一軸正逆転タイプは、土質や使う人の経験を問わずに使える便利な耕うん機といえるだろう。鍬を使った手作業で苦労していた人はもちろん、硬い圃場に悩んでいた人も、土づくりをもっと楽にするポイントとして、耕うん機選びは爪の回転にも注目してほしい。
- 狭い場所、中耕作業にも対応
- 外爪を外し、内側の正転の爪だけにすれば耕幅29cmに。爪の後方のタイヤも表裏を入れ替えると幅が小さくなり、狭い畑や中耕作業にも対応できる

一軸正逆転タイプ

一軸正逆転の耕うん機は、内側2つが正転、外側2つは逆転と違う回転をする。硬い土でもパワフルにかき回す
一軸正逆転タイプの特徴は、初めて耕うん機を入れた場所でも、素早く土をかきまぜてくれることだ。機体が深く沈み込んでいるのが写真でもわかる。硬い土でも素早くふかふかの土になり、一度の耕うんで美しく仕上がる
正転タイプ

正転タイプの耕うん機は、すべての爪が同方向の正転に回転する。普通の畑ならば問題なくサクサク耕うんできる
正転タイプは、一軸正逆転に比べると掘り返しが浅め。一度の耕うんでは土はまだ粗く、細かくするには複数回繰り返すことが必要だった