一歩先行く耕運機活用術 一歩先行く耕運機活用術

  • 文●小田ゆかり
  • 写真●松木雄一
vol8

耕うん爪を使い分けて
本格的な土づくりに挑戦しよう

家庭菜園で野菜づくりに精を出し、収穫の喜びを体験すると、次は何を作ろうか、どんな畑にしようかと考える人も多い。そして、いい野菜づくりのために土づくりにも、こだわりが出てくるもの。そんなときに試してほしいのが「耕うん機の爪をアレンジして使いこなす」というテクニックだ。今回は、理想の土づくりに有効な耕うん爪の種類と、その活用術を紹介する。

一歩上をめざす
大きさの違う層別の土

おいしい野菜づくりには、土づくりが肝心。シーズンが始まる前の土はカチカチに硬くなっていることも多いが、かといって耕しすぎるのはNGだ。耕しすぎて土が細かい単粒になると土中の隙間が少なくなり、時間がたつと次第に密に締まって硬くなってしまうからだ。野菜づくりに適していると言われるのが、小さな土の粒が団子状の塊になった団粒構造の土。塊の間に適度な隙間があり、小さな土の粒だけの単粒構造と比べて、保水性や透水性、通気性を兼ね備えた良好な土壌と言われている。今回は、その団粒構造にさらに一つ手を加え、畑の深さによって土の塊の大きさを変える層別の土をめざしてみたい。野菜は根を通じて栄養や水分を吸収しながら成長する。そこで、野菜の根が太くしっかり育つように、深いところは大きな土の塊で根を張りやすく水はけのよい土にする。一方、空気が豊富な表面に近いところは、野菜にたくさんの栄養を供給するため、肥料を分解する土壌の微生物が活動しやすいように、深い土の層より少し小さな塊にしたい。

深耕ローターで
土の塊を残して耕す

そこで試したのは、耕うん機の爪(ローター)を使い分けて本格的な土壌を作る方法だ。もともと耕うんは標準装備のローターだけで済ませている人が多いかもしれない。しかし耕うん機には、ほかにも用途別にローターが用意されていて、実は使うローターによって耕したあとの土もそれぞれ特徴がある。そこに注目し、ローターを使い分けて、こだわりの土を作ってみようというわけだ。今回は、硬い土や深く耕すときに力を発揮する深耕ローターと標準ローターの組み合わせで、層別の土づくりに挑戦した。深耕ローターの爪は、間隔が広く、土の塊を残して耕うんできる。この特徴を土づくりに活用する。まずはその深耕ローターで、硬くなった土の荒起こしをする。スタートさせると、すぐに硬い土を砕いて掘り起こしていく。カチカチの硬い圃場でも鋭い爪先が土に食い込み、より深い層まで安定して耕せているのがわかる。耕うんした後の畑は土の塊が残っており、あくまでも、ざっくりと粗く耕した印象だ。

標準ローターで
浅い層の土を小さな塊に

次は、標準ローターの出番だ。爪を付け替え、同じ場所を耕うんした。標準ローターでは、深い層の塊を残すように、爪を土に食い込ませすぎないよう浅く耕す。耕うんを終えた畑の表層は、土の塊が細かくなり、二度耕すことで空気をたくさん含んでいる。ローターを付け替えて耕うんしただけで、下は大きな塊が残った状態、上は小さな土の塊というバランスのよい層別の土壌に。適度に隙間が空き、根が元気に伸びていける、まさに二層になった団粒構造の土壌のできあがりだ。

耕うん爪の活用で
ステップアップ

塊の大きさが違う層別の土づくりというと、いかにも特別で複雑な作業が必要と聞こえるが、今回、簡単に爪を交換できる車軸式耕うん機の特徴を活かすことで、本格的な土づくりができた。すでに耕うん機を使っている人も、これを機会に種類の違うローターに注目してみてほしい。きっと一歩先いく野菜づくりができるに違いない。

深耕ローター
最初に、深耕ローターを装着して耕うん。長い爪が硬い土に深く食い込む。爪の間隔が広いため、大きな塊を残して耕うんできる
標準ローター
次に、標準ローターに付け替えて、深くなりすぎないように耕うん。畑の表面は土が細かく砕かれている
左は、最初に深耕ローターで荒起こしした畑。右は、その上を標準ローターで耕したところ。見た目にも土の状態が確かに違う
層別団粒構造のイメージ
深耕ローターで耕すと、ゴロゴロとした大きな塊のある土になる。一方、標準ローターで耕した土は、細かく滑らかな土になった。同じ耕うん機を使っても、爪を変えるだけで土はこんなに変わる。この違いを利用し、爪を使い分けて2段階で耕うんすれば、深い層と浅い層で土の塊の大きさが異なる層別の土づくりが可能に。水はけがよく、根がしっかり伸びる、本格的な野菜づくりにぴったりの土壌のできあがりだ

今回使用した機材

こまめF220
家庭菜園向けの車軸式耕うん機の定番。コンパクトサイズながらパワフルな耕うんが自慢の万能モデル。