硬くなった土を
ほぐす「中耕」
植え付け前にきちんと耕うんし、ふかふかの土づくりをしても、日照りによる乾燥や畝間を歩くことで硬くなり、通気性や排水性が悪くなる。そこで大切なのが、硬くなった土をほぐす「中耕」だ。中耕は、野菜の生育中に株の周囲を耕すことで、土の中に新鮮な空気を入れ、土壌微生物の活性化を促す。水の通りを良くし、根も張りやすくする、野菜作りに欠かせない作業の一つだ。除草が出来ることもメリットで、追肥や土寄せを同時に行うことも効果的だ。だが、家庭菜園を楽しんでいる人の中で、中耕は難しそう、体力的にも厳しそうだと躊躇してしまう人もいるのではないだろうか。そこでぜひ知ってもらいたいのが、耕うん機を使った中耕作業だ。難しい作業はなく、畝間を耕うんするだけで、体への負担も軽い。別売りのアタッチメントの培土器を使えば、土寄せも同時にできる。実際に手作業と比較し、耕うん機の実力を紹介したい。
⼿作業では慣れが必要
体⼒の負担も⼤きい
東京都立川市「スマイル農園」の豊泉さんにご協力いただき、ちょうど中耕のタイミングを迎えていたサトイモ畑で検証させてもらった。まずは比較のために手作業による中耕、土寄せ、追肥を行った。株元に肥料を撒き、畝と畝のあいだを鍬で軽く耕し、株元に土を寄せていく。作物を傷めないように注意深く鍬を入れ、土を寄せる作業には慣れが必要で、体力的にも厳しいと感じた


(左)鍬での中耕作業は、慣れと経験が必要(右)作業前のサトイモ畑。土が硬く絞まっている。
中耕 + 土寄せ + 追肥を
まとめて短時間で!
次に耕うん機を使って中耕、土寄せ、追肥を同時に行ってみた。使うのは、車軸ローター式の『こまめ』と、アタッチメントの培土器だ。最初に、培土器をつけずに畝間をサッと耕うんし、土を軟らかくする。畝間は土が絞まり硬くなっていることが多いからだ。土が軟らかくなったところで株元に肥料を撒いたら、培土器をつけて畝に浴わせるように⼟寄せする。これだけで中耕、土寄せ、追肥が完了する。手作業に比べ体への負担も少なく、短い時間で終わった。家庭菜園の場合は「畝間が狭いので耕うん機を使えるだろうか」と思う人もいるかもしれない。そういうときは、外爪を外して中耕を行うことができる。内爪だけにすれば、狭い畝間にも対応できる。ただ内爪だけになるため牽引力が下がるのが弱点。土が重たい畑や高めに土寄せしたい場所に牽引力が足りないと感じるかもしれない。そんな時はアタッチメントの培土車輪を使うことをお勧めする。標準の耕うん爪を培土車輪に付け替えるだけで、グングンと畝間を進んでいく。作業を効率よく、楽にしてくれる便利なアタッチメントなので活用してほしい。
こまめ F220(JT)

外爪装着時は耕幅54.5cmだが、外爪を外せば31cmに


耕うん機の後部に培土器をセットする。畝間の広さに合わせ、土が株元にかかるように羽根の開く角度を調節。培⼟器の先端を指1本分ほど上向きにすると程よい土量を土寄せできる


爪を培土車輪に付け替えるとさらにコンパクトになるうえ、牽引力がアップ。狭い畝間で土が重たいとき、高めに土寄せしたい時などに活躍する
『サ・ラ・ダ』で
簡単、楽に中耕
フロントロータリー式『サ・ラ・ダ』でも中耕作業を試した。『こまめ』に比べ、やや大柄な『サ・ラ・ダ』は中耕に不向きに見えるかもしれないが、実は『こまめ』よりも耕幅が狭いうえ、外爪を外して、タイヤの裏表を反転して取り付けることでさらにコンパクトになる。自走式でデフロックも付いているため直進性も高くなり、培土器で土寄せする際も畝間をまっすぐに進んでくれるので、作物を傷つけづらい。『サ・ラ・ダ』は中耕作業にピッタリの耕うん機だと感じた。
サ・ラ・ダFF300

外爪装着時の耕幅は45cm。外爪を外すと29cmまで狭くなる。さらに後方のタイヤを外して、裏表を反転して取り付けると車輪幅も41cmから28cmに狭くできる


『サ・ラ・ダ』は直進走行性がよいので、狭い畝間も安定して走らせることができる。初心者の中耕作業にも安心だ
中耕作業を取り入れて
元気な野菜づくりを!
耕うん機というと、植え付け前の畑を耕すイメージで、作物が育った畑に入れるという発想に驚く人もいるのではないだろうか。しかし家庭菜園用の耕うん機は思っている以上にコンパクトで、活用の幅が広い。今回の中耕や培土もその一つだ。中耕や土寄せの一手間をプラスすることで、生育中の野菜はのびのびと根を張り、元気になる。手作業ではたしかに負担が大きい作業だが、耕うん機を利用すれば手軽に取り組める。狭い畝間でもOKなので、家庭菜園でもぜひ取り入れてほしい。