畑の土を極める
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栽培の達人は耕し上手

秋冬野菜の畝づくり

  • 野菜だより 2019年9月号
  • 監修:木嶋利男
  • 構成・原稿:たねまき舎
  • 写真:鈴木忍
  • イラスト:小堀文彦

ハクサイ、ダイコンなど、涼しい時期に向かって育つ「秋冬野菜」づくりのシーズンがやってきました。8月~9月、畝を耕して秋冬野菜用に畑をつくり直しましょう。その際に、夏野菜が食べ残した肥料分を活かした畝づくりをすると、秋冬野菜はよろこんで育つようになります。

木嶋利男さん
監修=木嶋利男さん
きじまとしお● 1948 年、栃木県生まれ。東京大学農学博士。伝統農法文化研究所代表。長年にわたり有機農法と伝承農法の実証研究に取り組む。雑誌、書籍、講演会活動を通じ、農薬と化学肥料に頼らない野菜づくりを提案し、自然の力を活かした農法の普及に努めている。『木嶋利男野菜の性格アイデア栽培』『農薬に頼らない病虫害対策』(ともに小社刊)が絶賛発売中。

TOPICS

1夏野菜を片付けて畝を用意

夏野菜の畝を利用し
次作の秋冬野菜を決める

8月以降、菜園の野菜は夏野菜から秋冬野菜へと徐々にシフトしていきます。夏野菜を片付けたら、必要に応じて元肥を施して耕し、畝を立て直して植えつけに備えましょう

夏野菜は、早めに栽培が終わるキュウリ、遅くまで収穫が続くナスなど、野菜によって片付ける時期はまちまちです。そこで、早めに空く畝には栽培期間が長いキャベツ、ブロッコリー、ハクサイ、ダイコンなどを植えます。そして、遅くに空く畝では、栽培期間が短いホウレンソウなどを植えると、効率よく菜園を利用できます。

夏野菜を片付ける

収穫が終わった夏野菜を片付けます。収穫が続いていても適当なタイミングで片付けて、秋冬野菜にバトンタッチしましょう。残渣は畑の隅や通路部分に穴を掘って埋める、堆肥材料に利用する、燃えるごみとして処分します。

耕して元肥を施す

夏野菜の栽培中に雨に打たれるなどして、畝の土はかたく締まりがちです。鍬や耕うん機でザックリと耕して、土に新鮮な空気を入れましょう。その際、育てる野菜に応じて必要な元肥をすき込みます。これで土壌微生物の活性が上がり、野菜は根をよく伸ばすようになります。

2元肥は控えめに施す

春に施した肥料の効果が
この時期まで続く

秋冬野菜の畝づくりでは、土中に「肥料分の持ち越し」があることを考慮し、元肥を控えめにするのがポイントです。春に施した夏野菜用の元肥のうちの、おおよそ半分くらいが分解されきらずに、養分として残っていると考えてください。

有機物(堆肥や有機質肥料など)の分解速度は、地温が高くて適度な水分があると速まります。秋冬野菜づくりが始まる8月~9月は地温が高く、春に施した元肥の残りが本格的に効き出してくる時期です。

そのため、野菜づくりの教科書の通りに元肥を施して秋冬野菜を植えると、土が養分過多になり、野菜にトラブルが出るので注意します。

畝のリセットの仕方
  1. 夏野菜を片付けた畝に、完熟堆肥、有機質肥料、有機石灰など、必要な元肥を均等にまいていきます。
  2. 元肥をザックリと畝全体に混ぜます。平鍬や三本鍬が便利です。約15㎝の深さまで耕しましょう。
  3. 鍬で畝の高さや幅を調整し、畝の表面をならしたらリセット完了です。
  4. 板切れを使うと、初心者でも表面をならす作業がラクに行えます。
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畝の形を整える

鍬を使って畝の高さや幅を調節して形を整えます。高くしたいなら周囲の土をすくい寄せて調節してください。なお、秋冬野菜の種類や土質によって、畝の高さを変えると、野菜はよりすくすくと育つようになります

2~3週間後に秋冬野菜を植える

2~3週間経って、有機物の「一次分解」が済み、土壌微生物相が落ち着いたところで、タネまきや苗の植えつけをします。畝立て直後では、有機物の分解に伴う発酵ガスなどの影響で、発芽や初期生育を阻害することがあるので、すぐに野菜を植えることは避けましょう。

元肥は控えめに施す

春に施した肥料の効果が
この時期まで続く

秋冬野菜の畝づくりでは、土中に「肥料分の持ち越し」があることを考慮し、元肥を控えめにするのがポイントです。春に施した夏野菜用の元肥のうちの、おおよそ半分くらいが分解されきらずに、養分として残っていると考えてください。

有機物(堆肥や有機質肥料など)の分解速度は、地温が高くて適度な水分があると速まります。秋冬野菜づくりが始まる8月~9月は地温が高く、春に施した元肥の残りが本格的に効き出してくる時期です。

そのため、野菜づくりの教科書の通りに元肥を施して秋冬野菜を植えると、土が養分過多になり、野菜にトラブルが出るので注意します。

1必要な量の元肥をまいて耕うんする

夏野菜を片付けた畝に元肥をまき、耕うん機ですき込みます。前作の野菜が残した肥料分を勘案して、元肥の量を加減します。サ・ラ・ダFF300では、いちばん深く耕せる5段目にセットし、1回粗く耕しました。

2培土器で往復して土を寄せる
  1. 2年目以降の耕し方です。まず畝をつくる場所に元肥をまきます。
  2. 深さ5~7㎝の深さまでを、土のかたさによって1~2回耕して元肥をすき込み、レーキや鍬で畝の表面をならして、植えつけに備えます。
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3鍬でならして形を整える

最後に鍬で土の表面をならして 畝の形を整えます。

培土器を利用した畝立てのコツ

  1. 前輪の位置を変え、耕うん深度を浅めに設定します。土のかたさや草の状態によって適当な深さに調節します。
  2. 培土器が土に深く入りすぎて前進しにくい場合や、土への入りが浅くて、十分に土が寄せられない場合は、調整ダイヤルを回してスキ先の角度を調整します。
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耕うん機を使うメリット

  • 秋冬野菜への切り替えが短時間でラクにできる!
  • 培土器を使えばまっすぐで高さが一定の畝がつくれる!

3秋冬野菜がよろこぶ畝づくりのコツ

秋冬野菜がよく育つ夏野菜からのリレー

終わる夏野菜とスタートする秋冬野菜の間に無駄な時間差ができないよう、組み合わせを決め、菜園のスペースを有効利用しましょう。

5種類の秋冬野菜について、畝のサイズ、元肥の量、植える時期を上記に紹介します。畝の幅は家庭菜園で利用しやすい

60㎝幅で統一してありますが、ダイコン、キャベツ、ブロッコリーは約40㎝幅の畝をつくって1列に育ててもよく育ちます。

元肥の量は、前作に何の野菜を育てたかによって、加減をするのが上手なリレーのしかたです。

前作がナスの場合、春に元肥をたっぷり施し、栽培中にもこまめに追肥を繰り返しています。肥料分が残っていると判断し、秋冬野菜の元肥は若干少なめに施します。様子を見て、養分が足りないようなら、追肥を与えて育てるといいでしょう。

また、吸肥力の強いトウモロコシや、サツマイモのような元肥を施さずに育てた畝では、土に養分を補給する必要があります。例えばハクサイを植える場合は、上記の元肥の分量を施すと、すくすくと育ちます。

※元肥の量は1m²あたりに施す分量です

ダイコン
幅60㎝の畝で2列に育てる。
株間25~30㎝、条間30㎝でタネを点まき
  • 水はけがいい砂質の畑:高さ10
  • 中間的な壌土の畑:高さ10~15
  • 水はけが悪い粘土質の畑:高さ15~20
元肥
元肥なし
堆肥も肥料も入れず、耕すだけでいい。有機物が多い畑では又根のダイコンになるので、よく耕して有機物を分解させておく。
リレー
月中旬にタネをまく
トマト、キュウリ、スイカなどが片付いている。2度くらい深めに耕して畝をつくり、タネまきに備える。
ホウレンソウ
幅60㎝の畝で3列に育てる。
条間20㎝でタネをスジまき
  • 水はけがいい砂質の畑:高さなし
  • 中間的な壌土の畑:高さ5
  • 水はけが悪い粘土質の畑:高さ15~20
元肥
完熟堆肥2kg発酵油かす200g
肥料を欲しがる野菜。砂質の畑では2割増、粘土質の畑では2割減。新規の畑の場合は、かき殻石灰100gもすき込む。
リレー
10月下旬までにタネをまく
ナスの肥沃な跡地がおすすめ。また、インゲンやエダマメなど、マメ類の跡地でホウレンソウを育てると相性がよく生育が良好。
ハクサイ
幅60㎝の畝で1列に育てる。
株間50㎝で苗を植える
  • 水はけがいい砂質の畑:高さなし
  • 中間的な壌土の畑:高さ10
  • 水はけが悪い粘土質の畑:高さ15
元肥
完熟堆肥3kg発酵油かす300g
ハクサイは肥料を欲しがる野菜。元肥を十分に与えて大きく育てる。砂質の畑では2割増、粘土質の畑では2割減。
リレー
9月上旬に苗を植える
植えつけが遅れると葉が巻かなくなるので、余裕を持って畝を準備する。トウモロコシやサツマイモの跡地に十分な元肥を施しておくといい。
キャベツ・ブロッコリー
幅60㎝の畝で2列に植える。
株間40㎝、条間40㎝でちどりに苗を植える
  • 水はけがいい砂質の畑:高さなし
  • 中間的な壌土の畑:高さ5
  • 水はけが悪い粘土質の畑:高さ10
元肥
元肥なし
夏野菜を育てていた畝なら耕すだけでよく育つ。新規の畑なら、完熟堆肥2㎏、発酵油かす200gを目安に施しておく。
リレー
9月上旬に苗を植える
キャベツ、ブロッコリーは、ナス、トマト、ピーマンの後作でよく育つ。キュウリのあともおすすめ。

4マルチフィルムを畝に張って野菜の育ちを助け

土はホカホカ暖かく適潤をキープする

秋冬野菜づくりでは、マルチフィルムを利用する、マルチ栽培がおすすめです。

秋から冬に向かって気温も地温も徐々に下がっていき、野菜の生長も次第に鈍っていきます。けれども、マルチフィルムを畝に張ると地温が下がりにくくなり、野菜の生長が促されます。

また、保湿効果も優れていて、畝は適潤をキープし、基本的に水やりなしで野菜を育てることが可能になります。

家庭菜園では、黒マルチを1本用意しておけばいいでしょう。黒マルチの最大の特徴は、雑草抑制効果です。春夏の野菜づくりでも利用できるので、あると大変重宝します。

マルチフィルムはホームセンターなどで購入します。畝を立てたら左の手順を参考に、張ってみましょう。

なお、マルチフィルムには幅のサイズが数種類あります。畝全体を覆って裾を土に埋めるため、畝幅よりも広いサイズを購入しましょう。幅60㎝の畝なら幅95㎝のマルチフィルムを使います。

さて、マルチフィルムを張る際には、たるみがないように、ピンと張ってください。そうすると、保温効果や保湿効果が十分に発揮され、野菜の生育が促進されます。

また、雨後で土が湿りすぎているときや、逆に土が乾きすぎているときも張るのを避けます。土が適度に湿っているときに張ると、畝はその好適な状態をキープします。

黒マルチがおすすめ
マルチフィルムは樹脂製の薄いシート。透明、黒、シルバーなどの種類があり、それぞれ機能が異なります。家庭菜園では黒マルチがおすすめで、畝の保湿効果、保温効果に加え、雑草抑制効果があります。なお、透明は地温上昇、シルバーは害虫よけ効果があります。

マルチフィルムの張り方

1畝の周囲に溝をつける

畝を立てたら、鍬か三角ホーで畝の周囲に溝を掘ります。これは、マルチフィルムの裾を埋めて固定するための溝です。

2端の裾を埋めて固定する

マルチフィルムの裾を畝の端の溝に入れ、土をかぶせます。マルチフィルムが抜けないよう、足で強く踏んで固定します。

3畝全体にフィルムを広げる

ロールを転がして、畝全体をマルチフィルムでカバーします。ロールタイプのほか、折りたたんだ袋入りタイプも市販されています。

4裾を全周埋めて固定する

畝の側面部分を固定していきます。たるみなく鏡面のようにぴったりと張りましょう。畝の終端でフィルムを切って溝に埋めます。

5マルチ張り完了
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1:保温効果
保温効果で土はホカホカ。野菜の育ちを促します。
2:保温効果
土からの水分蒸発が抑えられるために、雨が少ない時期でも土はしっとり湿っています。
3:雑草抑え
黒マルチは光を通さないので、マルチフィルムの下からは雑草が生えにくくなります。

ポイント耕うん機と培土器でつくった畝では
マルチフィルムをラクに張れる

通路側に寄せた土を溝に落として裾を固定

耕うん機を利用して畝をつくると、畝の両サイドに培土器が通ったあとの溝ができます。

マルチフィルムの両裾をこの溝に入れ、通路側に寄せた土を鍬で落とすと、簡単に裾を固定できます。

しかも、畝の形がきれいにととのっているため、マルチフィルムをぴったりと張ることができます。

握ると団子になり、べたつかない状態の土がいいタイミング。乾いている場合はたっぷり水やりをして2~3日後に張りましょう。

  1. 耕うん機と培土器でつくった畝に、マルチフィルムをかぶせます。マルチフィルムの両裾が溝に入ります。
  2. マルチフィルムの裾を足で押さえながら、通路側の土を鍬で溝に落としていきます。
  3. 土を落としたら、周囲を歩いて踏みしめ、マルチフィルムをしっかりと固定します。
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うん機のアタッチメントを利用すると
小さなマルチが簡単に張れる

耕うん機には、機能を付加する専用アタッチメントが各種用意されています。ここで使用しているのは除草用のスパイラルローター。膝下くらいまで伸びた夏草も、根を断ち切りながら難なく除草できました。雑草をうっかり伸ばしてしまいがちな畑の周囲の管理にも、除草用アタッチメントが役立つでしょう。

サ・ラ・ダ FF300に装着しているマルチャーは「みにまる」です。専用の幅55㎝のマルチフィルムを利用し、畝幅約35㎝の平畝がつくれます。