- 野菜だより 2019年7月号
- 監修:木嶋利男
- 構成・原稿:たねまき舎
- 写真:鈴木忍
- イラスト:小堀文彦
今回は、夏になると盛んに伸びる「悩みのタネ」雑草の処理方法を紹介します。雑草ははびこると厄介です。野菜の生育初期にしっかりと除草しておきましょう。野菜が大きく育ってしまえば、躍起になって除草する必要もなくなり、むしろ野菜の生長を助けてくれます。刈った雑草は土づくりに役立つ「お宝」になります。

- 監修=木嶋利男さん
- きじまとしお● 1948 年、栃木県生まれ。東京大学農学博士。伝統農法文化研究所代表。長年にわたり有機農法と伝承農法の実証研究に取り組む。雑誌、書籍、講演会活動を通じ、農薬と化学肥料に頼らない野菜づくりを提案し、自然の力を活かした農法の普及に努めている。『木嶋利男野菜の性格アイデア栽培』『農薬に頼らない病虫害対策』(ともに小社刊)が絶賛発売中。
TOPICS
1どうする? 畑の雑草
雑草とうまく付き合って野菜づくりに活かす
雑草をきれいに抜き取って野菜を育てている菜園もありますが、じつは雑草がチョボチョボと生えている方が、野菜の育ちはよくなります。畑の雑草を目の敵にする必要はありません。
そうはいっても、気温が高くなると雑草の勢いが一気に増し、うっかりすると野菜の生長を損ねるほどにはびこって手に負えなくなります。夏の雑草をうまく抑えつつ、雑草を活かして野菜が順調に育つ土をつくりましょう。
雑草をほどほどに生やしておくと
野菜の生長にメリットがある
野菜の株元や通路に雑草をほどほどに生やしておくと「カバープランツ」として機能し、土が乾きにくく、雨が少ない夏でも野菜の育ちがよくなります。畑の生物活性も高まります。ただし、野菜の生育初期に除草を怠ると、野菜が雑草に飲み込まれて負けてしまいます。適宜除草して、雑草をコントロールすることが重要です。

2雑草は小さなうちに処理
こまめに草を削れば中耕効果も得られる
野菜よりも雑草の方が生長が早いため、生育初期に除草を怠ると野菜は簡単に負けてしまいます。
畝の準備をする際に除草をして、さらに野菜の苗植えやタネまきの前にもう一度、生え始めた雑草を削っておく「2段階除草」で雑草の出鼻をくじいておきます。
野菜が育ち始めてからは、雑草が大きくならないうちに、適宜除草をしましょう。三角ホーや平鍬などを使って、土の浅い部分で雑草の根を断ち切る要領で除草します。こうすると、締まった土の表面が軽くほぐれ「中耕」したことになります。土に新鮮な空気が入り、土壌微生物が活性化して野菜の生長が促されます。
- ❶除草作業には手持ちの小鎌よりも、三角ホーや平鍬など、立ち姿で作業できる柄の長い道具がラクです。
- ❷地面に1㎝くらい刃を滑り込ませ、雑草の根を断ち切って除草します。
- ❸晴れた日に除草すれば、刈った草は再び根付くことなく簡単に枯れてしまいます。
- ❹生育初期には中耕を兼ねて除草を行います。写真は中耕・除草に便利な除草用穴あき鍬です。




ポイント除草後は刈り草や敷きワラを
利用して土を裸にしない
除草後の畝は、土をむき出しのままにせずに、刈った草やワラなどを敷いておくことをおすすめします。
まず、土が乾燥しにくくなり野菜の生長が促されます。また、刈り草やワラと土が接している部分では、さまざまな微生物が刈り草やワラをエサにして、活動を始めます。空気が豊富で適度な湿気と温度があり、微生物が嫌う紫外線も遮られるため、微生物にとっては好適な棲み家です。
刈り草やワラは微生物の活動によって分解され、野菜の養分として土の中に入っていきます。同時に土は自然に団粒化し、コロコロした理想の土に変わっていきます。
刈り草やワラの敷き方にはコツがあります。野菜の生育初期には土が見え隠れする程度に薄めに敷くこと。土にある程度日光を当てて地温を上げたいからです。その後、雨が多い梅雨時からは厚めに敷いて土の過湿を防ぎます。雨が通路に流れ落ちるよう、畝の向きに対して横向きに刈り草を並べて敷くのがコツです。
