- 野菜だより 2019年4月号
- 監修:木嶋利男
- 構成・原稿:たねまき舎
- 写真:鈴木忍
- イラスト:小堀文彦
野菜の健全な生長には、畑の土をどうつくるかが重要なポイントになります。今回は、栽培途中で土を耕して野菜の生長を促す「中耕」と「土寄せ」を紹介します。降雨によってかたくなった土をほぐすことで、土壌微生物の活動を助け、また、野菜の根の伸長を大いに促すことができます。
- 監修=木嶋利男さん
- きじまとしお● 1948 年、栃木県生まれ。東京大学農学博士。伝統農法文化研究所代表。長年にわたり有機農法と伝承農法の実証研究に取り組む。雑誌、書籍、講演会活動を通じ、農薬と化学肥料に頼らない野菜づくりを提案し、自然の力を活かした農法の普及に努めている。『木嶋利男野菜の性格アイデア栽培』『農薬に頼らない病虫害対策』(ともに小社刊)が絶賛発売中。
TOPICS
1土が空気を含み生育を促進
栽培の途中で行う中耕と土寄せ
畑を耕すのは栽培の前だけではありません。野菜の生育中にも耕します。畝の表層を浅く耕したり、畝と畝の間(通路)を耕したりすることを「中耕」といいます。また「土寄せ」といって、野菜の株元に周囲の土を寄せることも行います。栽培途中で土を耕して土の中に新鮮な空気を入れると、土壌微生物の活性が高まり肥料効果がアップします。また、根も発達し野菜の育ちがよくなります。
中耕と土寄せで得られるメリット
根が増えるので地上部の生育がよくなる
2中耕と土寄せ作業のポイント
中耕と土寄せで生育促進梅雨前の通路中耕も有効
コマツナやホウレンソウなどの葉菜類、ダイコンやニンジンなどの根菜類は、発芽して本葉が3枚出るまでの間に除草を兼ねて条間を中耕すると、初期生育を促すことができます。側根が発達し始める本葉3枚目以降は、根を傷める心配があるので中耕はしません。
サトイモ、ジャガイモ、ブロッコリー、ネギ、エダマメ、ナス、ピーマンは、栽培途中で中耕や土寄せを数回行うと育ちがよくなります。野菜の左右で分けて作業するとよく、反対側を1~2週間空けて行うと生育中の野菜に与えるショックは小さく済みます。なお、浅く根を張るウリ類や根域を制限したいトマトには中耕や土寄せは行いません。
また、梅雨入り前に通路の土を粗く起こす「通路中耕」を行うと、夏野菜のその後の育ちがよくなります。
中耕で初期生育を促進
土の表面が締まってきたら、手持ち鎌などで条間を中耕します。除草を兼ね、刃を土の表層約1㎝に滑り込ませて株の際を軽く耕すと、野菜の生育が促されます。
土の表面が締まってきたら、手持ち鎌などで条間を中耕します。除草を兼ね、刃を土の表層約1㎝に滑り込ませて株の際を軽く耕すと、野菜の生育が促されます。
土寄せでイモ類を太らせる
- ❶サトイモ栽培では、土寄せを行いイモの肥大を促します。畝の脇の土をほぐして株元に土を寄せます。
- ❷1~2週間後に反対側にも土を寄せます。肥料効果が上がり、品質のいいイモが収穫できるようになります。
通路中耕で野菜の生育促進
通路は人が歩くため土が締まります。通路に10~15㎝間隔でショベルを深く挿して土を起こして、土中に空気を含ませます。野菜が生長すると通路の下にものびのびと根を張ります。ただし、トマトには中耕は行いません。
注意土が乾きすぎているときや湿りすぎのときには
中耕や土寄せはしないこと
中耕や土寄せ作業は、土の湿り具合が適度なときに行います。雨上がりで土が湿っているときに耕すと、土をこねてしまい、かえって土がかたくなるため逆効果です。また逆に、雨がしばらく降らずに土が乾燥しているときにも耕すのは避けます。中耕や土寄せをすると根が少し切れますが、土が乾いていると根が再生しないため、野菜の生育を妨げます。
ただ、サラサラの砂っぽい畑では立体構造をつくれません。砂質の畑の特徴は、水はけがよくて温まりやすいことです。そのため、堆肥など有機物の消耗が激しいので、回数を多く耕すと地力が低下します。堆肥をまいたら1回耕すだけにとどめ、タネまきや苗の植えつけに備えるといいでしょう。鍬を使う場合も耕うん機を使う場合も共通です。
深さ2~5㎝の土を手ですくい、握ると団子になり、つつくと崩れる程度の湿り具合が、耕すにはベストの状態です。中耕や土寄せで土に空気を十分に送り込むことができ、また、根が切れたことが刺激となって、新しい根が盛んに伸び始めます。ほどよい湿り気は重要です。