DCTはカーブや様々な路面を走行する際に、純粋にライディングを楽しむことができるのだろうか?

DCTはスムーズに加速し、シフトボタンを操作するだけで、想像以上に素早くギアチェンジができる。 F1のレーシングカーで採用しているパドルシフトのように、滑らかに加速し、ボタン操作に素早く応じてシフトワークする様を未体験の人は想像できるだろうか?シフト操作の時間と労力を最小減にしてライディングの楽しさを増大させる。

Hondaの先進的なDCTは最先端の技術でそれを可能にする。

VFR1200F (DCT)

DCTで味わうV4のもう一つの魅力。
ハイテクスポーツツアラーVFR1200F。DCTを搭載したことで全く新しいライディング感覚を手に入れた。プレミアムクラスでは唯一の装備で、独自の個性と、走りを魅力的にする新しい世界。たったこれだけの事で大きく変わる瞬間を目の当たりにする。

Honda V4エンジン、フラッグシップ・スポーツツアラーにDCTがさらなる深みを加える。

レイヤードデザインと呼ばれるボディーカウル、印象的な“目力”を持つヘッドライト、そして切れ上がったテールライト。片持ちのスイングアームで、リアホイールの堀の深さを印象的に見せるその手法。
どこから見ても自慢のV4エンジンは見えないが、VFRシリーズが代々築いてきた“ハイテクマシン、ハイエンドバイク”としての存在感が香り立つ。
そして、目の前にあるVFR1200Fにはもう一つ忘れてはならないことがある。Hondaで最初にDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を採用したモデルであることだ。Hondaで、というより2輪でこのシステムを最初に搭載した市販車がVFR1200Fだった、と紹介すべきかもしれない。

デュアルクラッチトランスミッションとは、6速ミッションと二つのクラッチを既存のスポーツバイク用エンジンユニットに納め、ライダーが操作してきたクラッチレバーやチェンジペダルによる変速操作を、電子制御に置き換え自動的に、あるいはスイッチによるマニュアル操作で行うことで、ライダーがより走りに集中できるよう、仕立てられたメカニズムだ。

すでに四輪の世界ではプレミアムスポーツモデルなどに採用され、人が操るよりも素早くシフト操作することで、操作上のストレスを低減しながら、MTのようなダイレクト感と、運転する歓びを高めるメカニズムとして知られている。

VFR1200F (DCT)

私は、当初“スポーツバイクにATなんて”と思っていた。しかし、実際に跨がってDCTの操作ボタンをNからDに送り、アクセルを開けるだけで走り出す体験をしただけで、その滑らかな発進に驚くことになる。
なんてクラッチさばきが上手いんだ。そして2速にシフトアップ。シフトチェンジした“カチョン”という音はするが、後輪の駆動力が途切れるようなピッチングをほとんど感じない。
シフトチェンジの滑らかさはライダーにとって腕のみせどころ。クラッチ操作でギクシャクしたり、シフトダウンでクラッチを繋いだ瞬間、リアタイヤがキュっと鳴ったりすると「失敗した」と思う。その小さな失敗はバイクの挙動に影響するから集中しなければならない。つまりシフト操作はクラッチ、アクセルを合わせて操作するライディングの醍醐味でもあり、緊張する場面でもある。

DCTは、シフトアップもシフトダウンも完璧にこなし、しかも二つのクラッチを使い、駆動力を遮ることなくシフト操作をする。だから走りの完成度がより高く、エンジンフィーリングもより上質に感じられる。
VFRの持ち味はDCTでさらに際立つ──、直感的にそう思った。

VFR1200Fのパフォーマンスを引き出そうと、サーキットで走らせたことがある。もしかすると、DCTの“あら”がでるのか。そんな意地悪な気持ちもあった。
そこで、マニュアルモードを選び、左のスイッチボックスにある“+”“-”のボタンを操作した。しかし、そこで見つかったのはDCTのスポーツライディング時の優位性だった。
まず、深いバンク角でコーナーから脱出加速をする時、そこが左コーナーで膝を出したままであっても、人差し指でシフトアップボタンを押せば、スムーズにシフト操作が完了する。挙動変化は極めて少なく安心感は高い。
また、ブレーキングに集中しなしながら、燃料タンクをニーグリップし、減速Gに耐えながらカーブのラインを読むような時、左の親指で出来るシフトダウン操作をしてもリアホイールのホッピングも起きない。むしろ、理想のシフトダウンが出来たことに歓びすら感じる。

自分の脳裏にMOTO GPのオンボード映像が流れるぐらい気持ち良いのだ。

そのフィーリングはもちろん、ワインディング走行でも楽しめる。サーキットと違い、限界を極めるような走りではなく、その先がどうなっているか注意深く慎重に走って行く。そんな場面で、クラッチとシフトチェンジ操作を安心して任せられるデュアルクラッチトランスミッションは、カーブのラインや路面の落ち葉、小石などがないかに注意を払う上で大きなアドバンテージだった。

特にブレーキを使って適切な速度に合わせることへの集中力に余裕がでる。一つの仕事を優れたメカニズムに任せたことで、心に余裕が生まれた。その点からDCTはスポーツライディングに深く合致しているメカニズムで、ライダーをポジティブにしてくれる。

このミッションがあれば、2人乗りをしてもパッセンジャーをシフトアップ、シフトダウンの度にギクシャクさせることが少なく、慎重に運転すれば「運転が巧くなったのね」という言葉を引き出すのも簡単だろう。

プレミアムスポーツとしてVFR1200Fの価値はDCTによって左右されるものではないと思う。非DCTのミッションでも満足度は相当に高い。ただしDCTがVFR1200Fの深みをより引き出したことは間違い無い。長距離スポーツツアラーとして、サーキットの相棒として、そして1人で行くワインディングでは走りを楽しみ、2人乗りなら景色を案内するゆとりも与えてくれる。
この広がりこそDCTの真価ではないだろうか。

右ハンドルバー
右のハンドルバーにあるグレーの親指スイッチでモードチェンジ(N=ニュートラル, Dモード, Sモード)。AT/MTモードの切り替えスイッチは赤いキルスイッチの上にあり、人差し指で簡単に切り替えができる。
左ハンドルバー
MTモードのDかSで左のハンドルバーのスイッチポッドの中、方向指示スイッチの下にあるグレーの親指スイッチ(-)を押すと簡単にシフトダウンする。
シフトアップスイッチ
左側のスイッチ類の前方から突き出ているシフトアップスイッチ(+)には人差し指で簡単に操作できる。スイッチ類の隣の大きな黒いレバーはパーキングブレーキ。
フットペダル
DCT搭載機種の中にはMT車のように足でシフトチェンジができるフットペダルのオプション設定がある機種がある。
エンジンカバー
VFR1200FのDCT搭載車の右側エンジンカバーの形状はMT車と異なる。

デュアル・クラッチ・トランスミッション DCT
マニュアルトランスミッションの楽しさをオートマチックで実現する、HondaのDCTについて解説します。DCT

VFR1200X (DCT)

VFR1200X

DCTで味わう唯一無二の長距離ツーリング
ハイテクV4エンジンを搭載するアドベンチャーツアラー、VFR1200X。道のある限り何処までも走りたくなるキャラクターに、加わったもう一つの魅了がDCTだ。モア・スポーツ、モア・ファン。唯一無二のV4+DCT。その唯一の存在で旅をさらにパワーアップする。

想像を超えたDCT体験がバイクライフを進化させる。

HondaにとってVFRの名はレーシングマシンの系譜を引く技術が注がれた「ハイテク」モデルとして浸透している。
そしてVFR1200Xは、最新VFRエンジンにDCTを組み合わせたパワーユニットを搭載。スペシャルなアドベンチャー・ツアラーとして登場したのである。

ボディーに隠れているV4エンジンは、ライバル達への大きなアドバンテージだ。トラクションコントロールやコンバインドABSなど、ライバル達と比肩する機能は万全だ。車体は285?と決して軽くない。見た目とスペックから想像すると、手強い相手に思えるのは仕方ないかもしれない。
その大柄な車体には大きなタンクとフェアリングを備え、パニアケースなど、ラゲッジキャリアを取りつけるための装備もされている。

しかし、DCTが、ライダーとバイクの距離をぐっと縮めてくれているのだ。

巨体に見えるが跨がると意外にライディングポジションがコンパクトで一体感を覚える。そしてイグニッションキーを捻り、エンジンを始動する。
DCTモデルにクラッチやシフトレバーは標準では装備されていない。ハンドルバーの右側にあるN-D と記されたスイッチでDを選択。ギアが入る。あとはアクセルを開けるだけでスルスルと動き出す。

クラッチ操作をしなくていい、という事実は緊張感を和らげてくれる。V4らしい滑らかさとパルス感。そのエンジンと、DCTの組み合わせで走行感は実にスムーズ。
走り出すと、エンジンは2500~3000回転あたりのトルクを使い小気味よくシフトアップを繰り返し、流れに乗る。

最初に感じたのは、自分自身が直接クラッチやシフトの操作をしなくても、“エンジンの感触や加速感、減速感をしっかりと楽しめる”ということ。構造がマニュアルトランスミッションと同様の機構だから、それも当然なのだが……。
そして変速時のパワー断続を殆ど感じない。エンジン音は、シフトアップした瞬間に間違いなく変化をする。エンジンから伝わる振動も変化する。だから「シフトアップした」という感覚があり、違和感はない。
それでいて前後のピッチングが少ないから、2人乗りをしても、シフトチェンジの度にパッセンジャーのヘルメットが後ろからガツンと当たる事もないだろう。これならライダーもパッセンジャーもリラックスして楽しめると思う。

VFR1200X (DCT)

長距離の移動はとにかく快適だった。高速道路でもアクセルを捻ればV4エンジンが即座に反応するし、DCTは追い越しの時、アクセルを捻るだけで必要なだけシフトダウンをしてくれる(排気量から生まれる余裕のパワー+トルクがあるのでほとんど6速のままで事足りるが)。追い越しが終われば再びトップギアにシフトしてくれる。
その走行感は通常のマニュアル車と変わるところがない。ダイレクトに右手と後輪がつながっている感触だ。

高速道路を離れ、ワインディングロードに入り込む。峠道を駆け上がる。DCTはDモード、そしてシフトチェンジをより高い回転まで行わないSモードがある。この二つが自動的に変速をするモードだ。
そして、ライダーがシフトスイッチからマニュアル操作するMTモードを選べば、シフトスイッチを押すだけで、シフトアップ、ダウンをするこができる。

余裕のあるパワーを持つVFRの場合、Dモードとシフトダウンスイッチの組み合わせだけでもコトは足りてしまう。登りで必要になる加速もアクセル一つでまったく問題ない。余裕だ。コーナーの手前で強いエンジンブレーキが欲しい場合、シフトダウンスイッチを使えば、マニュアル車同様の走行感を楽しめる。
また、シフトダウン時にリアタイヤがロックしそうになったり、操作ミスでギア抜けすることもない。
さらに、マニュアル操作をしても、違和感なくDCTは反応をしてくれる。

このDCT、変速のショックがスムーズなので、深いバンク中に変速をしてもハンドリングに影響が極めて少ない。感じないといってもいい。あえてDCTの特性を知るために試したが、動きのスムーズさには驚いた。

“クラッチ操作が不要、自動変速”というとモーターサイクルビギナーに向けたプロダクトかと思うかもしれない。たしかに余裕が生まれる分、それは正しい。
しかし、僕のような30年以上乗り続けているライダーであってもそのフレンドリーさは、バイクライフを広げる意味で大きなプラスだと解った。
80年代に登場したカメラのオートフォーカスのように、指先でレンズのリングを回し、被写体へとピントを合わせた瞬間の快感は確かにある。でも、シャッターボタンを半押しするだけでピントが合うと、あとは写真の構図や表現に思考回路を使える。
これと一緒で、DCTを使ってみると、走ることにどれだけ集中して楽しむか、という大切な部分をより考えられるようになる。
それに没頭できるようHondaのエンジニアはDCTのプロラムを作り込んであるのだ。

ダートにもVFR1200Xで挑戦してみた。トラクションコントロールがオンの状態だと徹頭徹尾に紳士的だ。発進も小石が浮いたギャップも、緊張感を強いられることなく通過できた。

試しにトラクションコントロールをオフにしてみた。すると湧き上がるようなV4パワーが右手のアクセルのまま注がれ、後輪は路面をかきむしり始めた。ハンドルバーをしっかりと持ちたくなるような場面で、クラッチ操作から解放されると、想像以上にコントロールする自分の気持ちに余裕が生まれるのだ。
それに、シフトチェンジも適宜行ってくれるから、テールが左右に振れるような状況でもかなり冷静でいられる。
もちろん、通常のMTモデル同様、右手と後輪がダイレクトにつながる感触はそのままだから、ギャップの多い場所でスタンディングをしても、フロントの荷重を抜いてみたりする動きを行いやすい。
ラインを選んだり、コーナーの脱出でテールを流してみたり、やりたいことに集中できる。

それに、スタンディングでもクラッチレバーの操作がないので、ハンドルバーを持つ自由度が高いことも発見だった。

結論づけるならDCTは乗り手のスキルのレベルに関係なくもっとバイクを楽しむためのデバイスだといえる。そしてアドベンチャーバイクにも大いなる可能性を感じさせてくれたのだ。

2人乗り
シフト、クラッチ操作がスムーズなだけに2人乗りでは疲労低減にも役立つ。
+、-ボタン+、-ボタン
ハンドル廻りにクラッチレバーは無く、手動シフト用の+、-ボタンを装備。グリップを握った自然なポジションのまま操作が出来るのが特徴。

NC700S (DCT)

NC700S

ネイキッドにもっと自由を。
NCシリーズのネイキッドモデルが生み出すスタイリッシュさ、700?パラレルツインとベストマッチするDCTが見せるストリートパフォーマンスは、まさに未知との遭遇にほかならない。

楽しくなる意識革新。

ニューミッドコンセプトシリーズのネイキッドモデルとして登場したNC700S。これまで経験した全てのスポーツバイクとも異なるキャラクターは、多くの注目を集めている。燃料タンクをシートの下に設け、膝の間のスペースに21リットルのラゲッジスペースを備え、低中速トルクをたっぷり稼いだ並列2気筒エンジンを搭載した作りそのものが斬新といえる。そしてDCT搭載モデルを設定した点も大きな特徴だ。

このDCT、通常のマニュアルトランスミッションモデルと基本的なエンジンは共有。そして、一般的な6速ミッションであるが、電子制御でクラッチとシフト操作を行うシステムを持つ。なかでも奇数段と偶数段のミッションにクラッチを装備することで、シフトチェンジ前から変速するギアを回転させ、滑らかなシフトチェンジを可能としたのが大きな特徴だ。
それを1つのクラッチパックより少し大きなスペースの中に収めているというがミソ。ツインクラッチというシステムは4輪でもそれほど多くの車両に採用されているものでなく、スペースの限られた量産モーターサイクル用としては世界に例がない。いかにもHondaらしい挑戦だと思う。
ライダーは、発進、変速時にクラッチや、変速操作を行わず、電子制御的に自動変速するのが特徴でもある。スクーターのようなATを想像されると思うが、その変速感、加速感はマニュアルミッションのものと同等。スクーターが多く採用するCVTなどとは大きく乗り味が異なり、スポーツバイクそのもの、というところも特徴だ。

DCTモデルにはクラッチレバーやシフトペダルがない。エンジンの始動時にスクーターのようにブレーキを握るなどの決まり事もない。DCT車は、イグニッションキーをオンにすると、トランスミッションが常にニュートラルにシフトされるようプログラムされているからだ。あとはスターターボタンを押すだけだ。

発進の準備も簡単。ハンドルバーの右側スイッチボックスにあるセレクターでNからDへとシフト。あとはアクセルを開けるだけ。それだけで動き出す。

発進のスムーズさはもう感動的。クラッチ操作が実に上手いのだ。プロ級と言っていい。僕自身、30年以上、クラッチ付きのバイクに乗ってきたが、こうもあっさり理想的な発進を決められると、正直憎らしくなる。それほど上手いのだ。交差点をソロリと発進する時も、高速道路の料金所から加速する時のように、少し大きめにアクセルを開けるときも意のまま。

発進後、街乗りレベルの速度だと2500回転ほどでシフトアップする。その瞬間がまた特徴的で、後輪が路面を蹴る駆動力が途切れる感触がない。マニュアルトランスミッションのNC700の場合、どうしてもクラッチを切る、シフト操作をする、クラッチを繋ぐ、という流れの中で、加速力が途切れる。マニュアルミッションモデルに乗っていると普段あまり意識をしない瞬間だが、DCTモデルに乗ると、変速時にエンジン音がかわるものの、一切途切れない加速感に不思議な気分になる。この感覚は新しい。

また、マニュアルミッションで操作を急ぐとアクセルを開けた瞬間「ギア抜け」することがある。でもDCTにはそれがない。これはスゴイことだ。

NC700S (DCT)

交差点を右折する。対向車を待ち走り出すとき、アクセルを開けるだけで発進できることによって、心に余裕が生まれる。今まで体験したことのないストレスの無い街乗りを体験した。発進やシフト操作はオートバイに乗る醍醐味でもあるが、意外と神経を使っていたことに気がつく。

オートマチックモードで走っていていても、前後に17インチタイヤを履き、ポジションもネイキッドバイクらしいスポーティーなものだけに、スクーターのようだ、という感覚は涌いてこない。

そのモードのままアクセルを大きく捻り加速をすれば、自動的にシフトダウンもするし、加速が終わり巡航すれば当たり前のようにシフトアップしてくれる。その間、アクセル操作とシフト操作の感覚は、ライダーとしての長い経験からしても、素晴らしいタイミング、素晴らしい技術で行われていると思った。

これはECUにかき込まれたプログラムが素晴らしいという証明でもある。言葉を換えれば、自動変速なのではなく、プログラムされた“プロの走り”をリアルに体験出来ているわけだ。

街中でクラッチ操作から解放された左手は疲労しないし、逆に右手で操作するアクセルやブレーキレバーに注力出来る分、じっくりと操作している自分に気がついた。これも意外な発見だった。

タンデムを良くする、というライダーなら、この滑らかな加速感は、パッセンジャーに大いに喜ばれるはずだ。運転するほうもリアシートに乗る方も疲労度も低く、もっと遠くにでかけたくなるのではないだろうか。遠くに出かけても、燃費が良いNCなら給油のことを心配する回数も減るはずだし……。

DCTが生み出してくれたこうした余裕とゆとりはあらゆる走行シーンで実感できた。
なかでも、ワインディング走行時、走行ラインを読むことや、ブレーキングのタイミングへの集中や旋回をどの時点からはじめ、どこで最も深くバンクさせ、そしてカーブから立ち上がるか、など走りの組み立てを描きやすい。いつもより深く楽しんでいる自分に気がついた。

NC700Sが装備する第二世代のDCTは、よりレスポンスや操作性を磨き込んでいる。例えばATモードを使ってシフト操作をおまかせで走っているとする。シフトダウンして強い加速が欲しい、エンジンブレーキが欲しい時、ハンドル右側のスイッチボックスにある、AT/MTモードの切り替えスイッチを使わなくても、左スイッチボックスにある“+”“-”スイッチでシフトスイッチをライダーが操作すれば、シフトチェンジが可能で、一体感をもったまま自分の意志通りの走りを楽しめる。
この時のシフト操作は、まさに押した瞬間、シフト操作が完了する。その素早さにも感心させられるが、そのまましばらくすると自動的にATモードに復帰してくれるのだ。

こうした結果、街中での余裕も、ツーリング先での楽しさも一枚も二枚も上手だな、と思った。なにより、NCのエンジンの美味しい部分を見事に使い切るDCTの見事さに、驚きと楽しさ、そして新しさを飽きることなく味わえた数日間だったことを報告しておきたい。

 DCT搭載車
NC700XとNC700SにはDCT車が設定されており、MT車と少し外観が異なる。
 DCT搭載車
クラッチレバーの代わりにDCT搭載車にはシフトスイッチとパーキングブレーキレバーが左のハンドルバーについている。
 DCT搭載車
DCTにはシフトペダルがない。シフトペダルで靴をすり減らす心配がないのもDCTの利点である。
エンジンカバー
機構手金理由から右側のエンジンカバーはMT車より少しかさばる。

デュアル・クラッチ・トランスミッション DCT
マニュアルトランスミッションの楽しさをオートマチックで実現する、HondaのDCTについて解説します。DCT

NC700X (DCT)

NC700X

どこへでも。どこまでも。NC700Xで楽しさを拡充。
クロスオーバースタイルのNC700X。DCTを搭載したNC700Xなら、もっと遠くへ、何処までも走りたくなる。人の感覚によく合致したDCTなら旅の充実感にさらなる満足感が加わるにちがいない。

「オレより上手い!」

Hondaが2012年に発売したNC700シリーズは、魅力的な鼓動感や低燃費性能を持つエンジン、大きなラゲッジボックスを内蔵する新しいコンセプトを打ち出したモデルだ。

あらためてDCTを搭載したNC700Xを走らせてみた。
このDCTは、通常のマニュアルトランスミッションのメカニズムを基本として、ECU でシフト操作とクラッチ操作を制御することで、自動変速や、ハンドルバーにあるスイッチボックスからマニュアル変速を行える画期的なものなのだ。

長年乗り慣れたマニュアルミッションモデルのままでもいいじゃないか。最初はそう思った。しかし、その取り扱いも馴れてしまえばコチラのほうが楽。走り出す準備も簡単。イグニッションキーを捻れば自動的にニュートラルにシフトされ、ブレーキを握ったりする必要がなく、スターターボタン一つでエンジンを始動させることができる。
走る出すためにはハンドルバーの右側にあるスイッチボックスにあるN-Dと書かれたスイッチでDを選び、アクセルを開けるだけ。

アクセルを僅かに開けると、1500回転ぐらいで見事なクラッチワーク(もちろん、僕ではなく自動的にそれが行われる。DCT車にクラッチレバーもシフトペダルもない)を見せ、理想的な発進をする。低回転からトルクを生み出すNCのエンジンとの相性も抜群。2000~2500回転ほどでシフトアップを続け、着実に速度を増していく。加速感もMTのバイク同様ダイレクト。

ATモードとMTモードを持つDCTだが、ATモードを選択すれば、変速は走行状態に合わせて自動に行われる。

それでいて、自分でシフトアップするより格段にスムーズ。そして駆動力が途切れず連続する。エンジンの鼓動感をたっぷり味わいながら走るのは実に気持ちが良い。

NC700X (DCT)

街中ならDCTよりMTミッションのほうがキビキビ走るのでは、と想定していたが、実質的には差はナシ。その構造はマニュアルミッションと同様で、シフト操作とクラッチ操作をシステムが自動化しているだけだから、当たり前と言えば当たり前なのだし、二つのクラッチを駆使し、タイムラグなくシフトチェンジするDCTのほうがむしろキビキビ感がある。

 

同様に、メカニズム的なことよりもむしろ、DCTにシフト操作をゆだねられる事で運転中、周囲への配慮に集中できることを発見した。集中力を要する街中をリラックスして走れる。これは意外なメリットだな、と思った。

Uターンも試みた。こんな場面は人がコントロールするクラッチの方が上手い、と思ったからだ。しかし、何度か試してもクラッチ制御の安定感は「プロ級」だ……。観察すると低速までしっかり駆動力を確保しているので、全く不安がない。

街中の加減速でもシフト操作やクラッチの制御は自然だった。アクセルを開けると、速度や求める加速力によって必要となればシフトダウン操作を行い、加速が終われば再び適切なギアに、シフトアップする。アクセルの開度によって自動的に操作されるのだが、マニュアルのオートバイから乗り換えてもそこに遅れや不意など違和感はない。

 

そもそもNC700シリーズが採用するDCTは第2世代となり、使い勝手が進化している。例えば、ATモードのまま、ハンドルの左側スイッチボックスにあるシフトアップ、ダウンスイッチを使って指先でシフト操作した後、マニュアル操作優先でシフトアップ、ダウンをしてくれるのは同じだが、自動的にATモードに復帰してくれる点が新しい。
例えば「エンジンブレーキ」を使いたいという時、親指で“ー”マークがあるスイッチをタップすれば、コーナー侵入の手前や下り坂などその効果をマニュアルモデル同様引き出せ、アクセルを一定の走行に戻れば、自動的にシフトアップをしてくれるのだ。

このシフトチェンジの時、DCTのメカニズムは目の覚めるようなシフト操作をしてみせる。名前の由来でもある二つのクラッチが途切れることなく駆動力を後輪に伝えてくれる。これが乗っていて気持ちいいのだ。また、シフトダウン時にリアタイヤがロックしかかるようなこともない。これも安心。

峠道ではどうだろう。持ち前のハンドリングの良さで気持ち良く走るNC700Xだが、DCTモデルで走ると、次のカーブへの集中力が高いことに気がつく。シフトアップ、ダウン、そしてクラッチ操作から解放されたことで、ブレーキを掛けることやオートバイを寝かす、起こす、という操作に余裕が生まれている。つまり走りをより楽しめるのだ。
正直に言えば、操作の自動化はライダーの退化につながるのでは、と思っていたがむしろ逆。走る事への対話が深くなっている。

NC700Xでダートにも入ってみた。特に発進の時など、アクセル操作に集中できるので、バイクをコントロールが簡単だった。思わず後輪が滑りそうな場面でもソロリと静かな発進もお手のもの。
例えばギャップに遭遇しても、ブレーキやタイヤを通すラインに集中できた。また、スタンディングポジションで走ってみても、左足にチェンジペダルがないから、このポジションでも体が揺すられて、不意にシフトチェンジをしてしまう事もない。

それに、その状態でも速度に合わせたシフト操作をDCTが行ってくれるので、マニュアルクラッチよりもスキルが上がったような走りを引き出せた。これは嬉しい。

場面を問わないいつでも完璧にクラッチワークとシフトチェンジ。ライディングを楽しみたいときにしたいときに大きなアドバンテージになる。
正直、クラッチ操作やシフト操作がないだけでこんなに変わるものか、と驚いた。乗り手によっていろいろな広がりを見つけられるにちがいないDCT。一度試して見ることを薦めたい。

D、Sへのシフト
ニュートラルからD、Sへのシフトは右手の親指で操作。
パーキングブレーキレバーシフトスイッチ
Dual Clutch Transmissionモデルにはクラッチレバーの装備はない。パーキングブレーキレバーがハンドルグリップ、左側に装着される。シフトスイッチは左ハンドルスイッチ、人差し指でシフトアップ(+)、親指でシフトダウン(=)を操作する。
エンジンカバー
NC700Xは右側エンジンカバーの形状がDCT搭載車とMT仕様車とで異なる。

CTX (DCT)

CTX

CTXに乗って分かった、DCTの深み。
CTX700N DCTの左ステップにはシフトペダルがない。DCTは、シフトチェンジ操作の全てを自動で行なう。 エンジンを始動し、パーキングブレーキを解除。右指のシフトスイッチで、ニュートラルから走行状態を示す"D"へとスイッチを押す。そしてアクセルを開ければ動き出す。さあCTX700N DCTで走りだそう。

CTXに乗って分かった、Dual Clutch Transmission の深み

Hondaの新しいクルーザー、CTX700N DCTに乗った。
CTXのスタイルは、Hondaがゴールドウイングで採用する路面と水平基調で描かれた力強いラインを持っている。直線的な面で構成されたスタイルは、クルーザーのニューウエーブだと思う。その中に低く構えたシート、足を伸ばした位置にあるステップ、プルバックされたハンドルバーなど、クルーザーに必須となるアイテムを取り入れている。
丸みを帯びた面、曲線的なライン、ティアドロップスタイルの燃料タンク、クロームで演出された重々しいメタル感といった従来の手法とは異なるルックスの中にCTXのデザイン的な魅力を発見した。

さあCTX700N DCT(Dual Clutch Transmission)で走りだそう。断っておくが、左のステップにシフトペダルはない。DCTは、シフトチェンジ操作の全てを自動で行なうからだ。走り出すための操作は簡単。エンジンを始動し、パーキングブレーキを解除。そして右のスイッチボックスにあるシフトスイッチで、ニュートラルを示すNから走行状態にするDへとスイッチを押す。アクセルを開ければCTXは動き出すのだ。

市街地ではアクセルを捻るだけで走るというアドバンテージが大きい。「ATだからだろ?」と思うかもしれない。それは大きな間違いだ。機械的構造はマニュアルトランスミッションをベースに、二つのクラッチパックを装備し、油圧で操作されるシフトチェンジ機構が、全てを滑らかでスムーズにライダーにかわって操作をしてくれる。だから自分で運転しながらも、とてつもなく“クラッチ操作の上手なライダー”になった気分を味わえる。

自動的な変速だけではなく、ライダーがマニュアル操作したい場合は、ハンドルの左スイッチボックスにあるシフトアップ、シフトダウンスイッチを押すだけで、クラッチ操作、シフト操作をしてくれるのだ。DCTは、Hondaが独自に造り上げた、自動化されたマニュアル形式のトランスミッションであり、その強みはこうした部分にも現れる。

同時に、クルーザーらしい力強さに磨きを掛けたCTXは、他のDCT搭載車(NC700S、NC700X、あるいはVFR1200FやVFR1200X)のフィーリングとも異なるクルーザーらしい新鮮なものだった。

それは、エンジニアがエンジンとDCTの走り出す瞬間のクラッチの繋がり方を、CTX用にチューニングしたことによって効果を上げている。結果的にその走り出しは、まるでオールドスクールのクルーザーのようなドドドドッ、という鼓動感とトルク感を楽しめるのだ。

そして1速から2速へのシフトチェンジにくっきりとした“シフトチェンジをした”という満足感が加わっている。
Hondaのエンジニアはこのフィーリングに拘った。その味付けが実にうまい。クルーザーに乗った場合、僕自身もそうだが、1速から2速へ回転をあまり上げずにシフトチェンジをし、2速で少し大きくアクセルを開け、車体を振るわせるような加速をして、3速へ・・・・。そんなクルーザーらしさをCTXのDCTは見事に再現してくれる。
もう一つ気がついたのは、Dモードで走行している時、5速の守備範囲が広く、低めの回転でアクセルを大きく開けても、キックダウンしてエンジン回転がグワッと上がるのではなく、5速をホールドしたまま、ブルブルッとした鼓動感を伝えながら加速することだ。街中の速度域からこれは楽しめた。
これは排気量が大きく、重たい車体を力で運び上げる大型クルーザーの特権かと思っていたが、CTX+DCTは魅了的なクルーザーワールドを楽しませてくれた。

「これだ、これ、これ!」──そんなご機嫌な気分で走る。

つまり、この部分こそATモデルとDCTが決定的に異なる部分なのだ。ライダーに最適、と思わせるタイミングでマニュアルミッションのクラッチ操作、シフト操作を自動で行うDCT。

CTX (DCT)

大型クルーザーモデルで感じたクラッチ操作やエンジン回転の合わせに多かれ少なかれ失敗したときのギクシャクした感覚がなく、いつでもマイベストな操作をしたときのような気持ち良い発進、シフトアップ、シフトダウンを堪能できるのだ。
アクセルやクラッチレバーを操作し、左足でシフトペダルを蹴る、掻き上げる、という動きから解放されただけで、ライダーの心のゆとりがこうも広がるのかという点も驚く。

郊外へと走ってみる。ワインディングを走るCTXは軽快さと、クルーザーらしい落ち着いたコーナリング性能を上手く表現した走りを見せる。スポーツバイクと一緒に走っても置いていかれることのない走りを引き出しやすい。アクセル、ブレーキング、そしてラインを選ぶことにより集中できるのだ。心に余裕が出て、上手く乗れている感覚に満たされる。エンジンの性能、シャーシの性能という基本性能に、DCTが持つ機能がライダーのゆとりを生みださせることに貢献している、といっても良いだろう。
モーターサイクルの操作は4輪車に比べると全身を使うことになる。クラッチ操作は左手、シフト操作は左足、前ブレーキは右手、リアブレーキは右足……という操作を、基本的に前後のブレーキ操作だけに集約して走ることが出来るのは大きなポイントだ。

これは、大型クルーザーモデルの持つキャラクターを楽しめると同時にスポーツバイクとしての素質も高い、という点で新しい。そしてDCTが、CTXの魅力をさらに引き出していると感じた。
DCTがこの分厚いトルクを持つエンジンの良さを十分に引き出している。3500回転から5000回転ぐらいの間では、「このエンジンは700cc? 排気量が増えたのでは?」と思うほどだ。CTXとDCTの組み合わせはそうした部分をより際立たせるのだ。

DCT搭載モデルが出たとき「自動的にクラッチを操作するなんて、ライダーの退化が始まる」と言った人がいた。僕はそうは思わない。むしろこれを得てライダーは進化すると思っている。シフトチェンジという操作に使っていた神経を風の匂いや音、そして景色の美しさやモーターサイ・Nルで駆け抜ける土地での発見、パッセンジャーとのコミュニケーションに向けることが出来る。モーターサイクルライフを深くする感性を解き放つことができると思っている。

そう、DCTは楽をするデバイスではなく、もっと楽しいバイクライフを探求するツールなのだ。

カバー
カスタムクルーザーらしいCTXのキャラクターに合わせ、Dual Clutch Transmissionのカバーもそれらしいクールなものに。
タップしてシフトできるスイッチ
左側のグリップ部にクラッチレバーはない。タップしてシフトできるスイッチがウインカースイッチの下に見える。パーキングブレーキも備わる。
シフトセレクタースイッチ
右側のスイッチボックスにはAT/MTモード切り替えスイッチと、グレーのスイッチがN-D、D-Sを切り替えるシフトセレクタースイッチ。

NC750S / NC750X (DCT)

NC750S / NC750X (DCT)

DCTを、もっともっと楽しんで欲しい。
ニューミッドコンセプト、NC750XとNC750Sを試乗してみた。DCTがスクーターのような簡単な操作のため、ライディングの楽しさを高める要素として大きな役割を果たしていることが、改めて分かった。

DCT(Dual Clutch Transmission)がとってもオモシロイ。その理由をお話します。

爽快感、風、一体感──これらはスポーツバイクに乗って楽しめる、主に感覚を刺激するものだ。仕事でいろいろなバイクに乗るけれど、一つの評価軸として“良いバイクは走り初めてから楽しくなるまでの時間が短い”というのが、僕の持論である。そして、それは様々な要素が絡み合って構成されるものでもあり、絶対性能の高低ではなく、“乗る事を深く楽しめるか”にかかっている。

Hondaの新しいニューミッドコンセプトシリーズの2台、NC750XとNC750Sに組み合わされたDCT(Dual Clutch Transmission)は、正にその好例だった。

DCTはHondaがVFR1200Fに初めて搭載したクラッチ操作を必要とせず、オートマチックモードでは、マシンが最適名ギアを自動で選択してギアチェンジしてくれる。また、MTモードにすれば、スイッチによる任意のシフト操作ができる電子制御ミッションだ。

NC750S / NC750X (DCT)

DCTの特徴として、スクーターなどに採用されるヴェルトマチック(CVT)とは異なり、メカニズム的にはNCシリーズの場合、6速マニュアルトランスミッションをベースに、変速する時のクラッチ操作やシフト操作を電子制御化したトランスミッションなのである。

クラッチレバーやチェンジペダルを操作してこそ、スポーツバイクだ!──DCTと出会うまで僕はそう頑なに信じていた。皆さんもそうだろう。だから、偶発的に所有したスクーター以外、僕の車歴にクラッチレバーの無いバイクは存在しなかった。しかし、このDCTを走らせてみると、まったく考えが変わっていく自分に驚いた。
「クラッチレバーやチェンジペダルを操作すること、それが必ずしもスポーツバイクで走る歓びの源泉、というわけではない」
──そう思ったのである。なぜそうなったのか。今までのスポーツバイクの経験を生かしながら、さらに別の世界が広がったから、なのである。

まず、走り出す場面を想像してほしい。マニュアルクラッチ、マニュアルトランスミッションのモデルと比べ、DCTモデルは「エンストするかも」という緊張感がない。それも一つのスポーツバイクの醍醐味だと思っていた。
だからDCTのバイクに乗ると「今の発進は最高に決まった!」と思わなくなる。それがマイナスか、と言うとそうではなく、クラッチレバーの操作から解放された感覚は、アクセルを操作する右手に集中し、むしろその操作で感じたエンジンのトルクの出方、音の変化や走り出す瞬間などをじっくり感じとることができ、操作する深みを覚えたのだ。

NC750Sに乗った。例えば街中、交差点を曲がるとき、対向車が来ないのを確認して走り出すわけだが、ふと頭をよぎる「エンストすると、危ないな(というより恥ずかしいな)」がない。アクセルを捻るとNC750Sはトルクが増え、スムーズさを増したエンジンの恩恵で、自信をもって走り出すことができる。今までクラッチとアクセル、そして時にはシフト操作、という3つのことを基本的に考えつつ、対向車、歩行者、信号、進路変更、右ミラー、左ミラー、等々、意識を様々な角度から張り巡らせる必要があった。最初の三つが無いだけで本当に余裕がでるのである。
これは自分でもびっくりするほどだった。

ATモードならDCTのスイッチでDを選択し、アクセルを開けるだけで、速度に合わせ、自動的に6速までシフト操作をしてくれる。アクセルを閉じ、速度が落ちてくればシフトダウンも自動でまかなってくれる。街中を走っていて思うのは、ここで生まれた余裕が安全面にはもちろん「あ、新しいカフェ発見」というような楽しむ部分にもより振り向けることが出来る。

そのまま高速道路にあがり、加速をする。そして巡航をしながら1時間走り続ける。マニュアルミッション車でも高速道路に入れば6速にホールドし、シフト操作はしないから違和感はまったくなし。追い越し加速が必要な場面に出くわしても、アクセルを捻るだけで必要なシフト操作はDCTが行ってくれる。
その変速技が見事だ。だれかプロライダーをミッションケースの中に雇っているような感覚なのだ。もちろん、マニュアル操作でシフトダウンも出来るから意のままにライディングでき、不満はない。

山麓の道までやって来た。そこでDCTは、マニュアルミッションに対して大きなビハインドはあるのか。
答えはノーだ。同等以上の楽しさを享受できた。
右カーブ、左カーブ、そしてS字、ヘアピン。様々なカーブが次々に現れるワインディングロード。
感覚を研ぎ澄ませ、次に開ける景色を思い描きながら走るのがワインディングロードの醍醐味だ。そのコーナリングをさらに満足感を得た走りへとするのが、ライン取りだったり、加速、減速の操作への集中だったりする。DCTの場合、シフトチェンジを自動、もしくは左手の指のスイッチ操作だけでプロ級のシフトチェンジを決めてくれる。だからカーブの先への注意、減速をすることなどライディングの集中力をより高めることができる。

最初は、たかがシフト操作ぐらい無くなったからって“イージー”になるものか! と考えていた僕にとって、DCTの方がむしろ“楽しい、深い”と感じ始め、一つ目の峠を越える頃にはそれが確信に変わった。
そう、街中での感覚同様、アクセル操作に集中することで、エンジンパワーと旋回するバイクの関係性などにより深く感じとれたのと同じ感覚なのだ。

つまり、DCTがスクーターのようなイージードライブのための自動変速装置ではなく、ライディングの純度をグッと高めるためのデバイスとして大きな役割を果たしている、ということなのだ。

正直に言おう。僕は今までクラッチ操作やシフト操作、アクセルワークに至まで、様々な角度から自分を磨いてきた(つもりだ)。バイクに乗りはじめて30年以上。趣味のオフロード、仕事ではモトGPが開催されるサーキットも走ってきた。そんな数々の場面で培ったテクニックにDCTのクラッチワーク、シフト操作は肉薄している。
いや、正直じゃないな。DCT はシフトミスという失敗をしない分、僕よりも完全に優れている。

忘れてはならないのは、シフトミスをしないだけではない。加速しながらシフトアップをする時、メカニズム的にこれまでのMTミッションをベースにしながら、二つのクラッチを連携させて、シフト操作を極めて短時間で完了させることもDCTが持つ特徴だ。
だから、シフトアップ、ダウン時に駆動力の断続を極めて短時間に、かつスムーズに完了させてくれる。つまりバイクへの挙動がとても少ない。これも僕が長年かけて意識して鍛錬したアクセルワーク、クラッチワーク、シフトワークを越える完璧さで、DCTがもたらすライディング・ソリューションだ。バイクに乗るのがとても上手くなり、充実した楽しい時間を楽しめる。

特に二人乗りを経験したライダーならお分かりかと思うが、シフトアップ、シフトダウン時にパッセンジャーシートのライダーとヘルメットがゴツンとぶつかった経験をしないライダーは少ないはずだ。あの神経を使うライディングから解放されるのもDCTの大きな恩恵の一つだ。

NC750S / NC750X (DCT)

自分の意志でできるシフトアップ、シフトダウン。自動可されたクラッチ操作。僕がバイクに乗りはじめた時からバイクは進化を続け、これからもそれは正しく続くと思う。そんな時間軸の中で、DCT は大きな可能性を秘めたメカだと僕は思った。

NC750Xはアドベンチャーツアラーの雰囲気を持つバイクだ。かたやNC750Sは新ジャンルのネイキッドスポーツだ。ともに大きなラゲッジボックスを持ち、ツーリングに出るのに荷造りも簡単に済ませることが出来る。
スペースユーティリティーを考えたバイクに、DCTの組み合わせ。クラッチとシフトを自動可すると、街中でも、ワインディングを楽しむ時でも、二人乗りをして出かけるときでも、走る楽しさを深めつつ、新しいバイクの世界が開けることを、多くの人に体感してもらいたい。
僕の中で起こったDCTショックはどれくらいか、を表現すると、携帯電話を持つ前と持った後、と表現する事が出来る。ホントか? と思うだろう。DCT乗りのブログやFacebookを合わせて検索して、Hondaのお店で納得するまでトライして答えを出してみて欲しい。

食わず嫌いは損。それはとてももったいないのである。

カバー
エンジンの外部のカバーに記されたDual Clutch Transmissionの文字。控えめだが、そのメカがもたらすバイク感はすばらしいもの。
左スイッチボックス
シフト操作をマニュアルでするために左スイッチボックスにあるグレーのスイッチ。-はシフトダウン。アップはこのように+ボタンを押すように操作する。
イグニッションキー
イグニッションキーをオンにすると、DCTはニュートラルに自動的にシフトされる。エンジン始動後、S-D-NのボタンをNからDにシフト。あとはアクセルを開けるだけで走り出せる。また、AT/MTのスイッチは、ATモードとMTモードの切り替えスイッチ。これだけでバイクが意のままに動かせる……。10年分の経験を手にしたに等しい装備、それがDCTなのだ。

Africa Twin (DCT)

Africa Twin

オフロードでこそ、DCTの真価を発揮する。
Africa Twinが目指した“オンロードもオフロードも楽しめるアドベンチャーツアラー”は、いったいどのようにDCTとマッチングしているのだろう?

DCTは冒険ライディングへのソリューションだった……!

新型Africa Twinに乗れるチャンスがついにやってきた。しかもマニュアルトランスミッション(MT)仕様と、Dual Clutch Transmission(DCT)仕様の両方にだ。個人的にも全てのDCT搭載モデルに乗ってきた経験から、Africa Twinが目指した、“オンロードもオフロードも楽しめるアドベンチャーツアラー”がいったいどのようにDCTとマッチングしているのか、すごく気になっていた。話をした開発者は「乗れば解りますよ。しっかり作り込んでいますから」と、自信たっぷりに言い放った。

南アフリカで開催された試乗会。試乗1日目、舗装路を中心に試す。MTモデルから試乗をスタートさせた。専用に開発された2気筒エンジンの扱いやすさと鼓動感とパワー感が心地良い。そしてアクセルを開けたときにしっかりとしたトルクの積み重ねでググっと前に押し出す力強さだ。50km/hを少し越えれば6速に入る柔軟さと、回せばパワフルな意のまま感がひとかたまりになったエンジンだ。

長いストロークのサスペンションや、最低地上高を確保した車体レイアウト、前後のタイヤサイズは、オフロード走行を意識したもの。それでいて舗装路でのハンドリングは想像以上にしっかりしていて、路面のグリップ感もよく、コーナリング時に遠慮する必要がない。今、世界で激戦区となったAfrica Twinが属するアドベンチャーツアラーセグメントにおいて、舗装路の走りはとても重要。大陸を越える旅だって大半は舗装路だ。楽しく、快適が求められる。Africa Twinは文句ナシ、トップクラスの性能だ。

Africa Twin (DCT)

それは、日常的な交差点の右左折から、右に左にカーブが続く峠道へと入っても実に楽しい。意のままに走れる。ロードバイクとしてもAfrica Twinが高い性能をもっていることが解った。ハンドリングはもちろん、ブレーキ性能を含め、初めての道を安心して走ることができた。

ランチの後、DCT仕様のAfrica Twinに乗りかえた。ハンドリングやサスペンション、ブレーキの素晴らしい印象はそのまま。ところがDCTモデルは大柄なAfrica Twinを想像以上にコンパクトに感じさせてくれた。エンジンを始動し、シフトスイッチでドライブを選択、そしてアクセルを開けると、簡単に走り出せるからだ。

DCTで走り始めると発進時にエンストする心配や、シフトミスでギア抜けする心配がない。自分自身MTモデルでは想像以上にシフト操作に神経を使っていることが解る。そこから解放されると、景色がより目に入り、走るラインやアクセルワークに集中でき、心と頭に余裕が生まれる。

これは僕がDCT搭載モデルに乗るといつも感じる驚きの一つだ。

Africa Twin (DCT)

試乗2日目、Africa Twinでオフロードをテストする。そのテストコースはまるでラリーのスペシャルステージ。荒野のただ中だった。丸一日、舗装路で新型の素晴らしさを体感したあとだけに、風景の違い、路面の違いにさすがにたじろぐ。まずはMTモデルで走り出す。まっすぐなフラットダート。時折アップダウンと左右への緩やかなカーブがある。その道をまるで舗装路のような安心感 でAfrica Twinは駆け抜ける。なんだこれは! めちゃくちゃ楽しいじゃないか! 舗装路で感じた路面を捕らえるサスペンション、そして加速、減速時の不安のないバイクとの一体感はダートでも全く同じだった。

エンジンの特性も、操作に対して突発な反応を見せないし、パワー感を把握しやすい。すごく乗りやすい。Africa Twinはすごくいい! 

進むにつれ道が荒れてきた。上下へのピッチングが多くなるが、路面状況を綺麗に吸収しながらバイクが暴れることがない。そのシャーシ性能の高さは、さらに僕に操る歓びを教えてくれた。

エンジン外観
エンジン外観でMTモデルと異なるのは、油圧ラインなどの配置、クラッチカバーのデザインなど。DCTとMTを共用設計とすることで多くのモデルに搭載できる可能性を持っている。
ハンドルのスイッチボックス
ハンドル右側のスイッチボックスで“N”から“D”へのセレクト、“Sモード”への切り替えを行う。左はマニュアルシフトをする際に使うシフトアップ、ダウンのスイッチのほか、パーキングブレーキのレーバーも備わっている。
Gスイッチ
アフリカツインのDCTモデルに搭載された“Gスイッチ”。半クラッチの制御をよりオフロード向けにし、アクセル操作に対する反応がダイレクトになる。ギャップを越える時などに威力を発揮する。

道は岩の多いガレ場になった。道幅が狭く大柄なバイクを操るにはさすがに緊張する。ある程度アクセルを開けないと速度が下がりすぎてフラフラする。この路面ではふらつきたくない。適切なギアを選び、それを選択し、カーブでは推力を途切れないようにアクセルワークに集中する。クラッチ操作もそれに加わり忙しい。

前輪が大きい石ではじかれないようにラインを選ぶ。じんわり汗が出た。それは心地よい緊張感と、体を小刻みに使ってバランスを取ることで操作するためだ。

それでもAfrica Twinはその場を切り抜けた。このような条件で走行する際にいつも抱く不安が安堵感に変わり、楽しさが追いかけてきた。

Africa Twin (DCT)

一息ついていよいよDCTを搭載したAfrica Twinで同じ道をゆく。たった今乗ってきたMTのAfrica Twinは相当楽しめた。昨日のロードセクション同様、こともなく走るだろう。反面、DCTを搭載したVFR1200やNCシリーズでの体験と照らし合わせると、ダートを走る、という上での楽しさの要素ではさすがにMTモデルに軍配があがるのではないか、と思いながら走り出す。

小手調べに滑りやすい湿った土の斜面のヒルクライムを試みた。スタートでアクセルを開ける。無駄に後輪がスリップして駆動力をロスすることなくスルスルと坂を登る。このしっかりと路面を掴む感触に不安は消え去り、10メートルほどの斜面を上り切ったとき、確かな達成感を味わった。

過去30年、オフロード走行で失敗と成功を重ね、世界の悪路に揉まれながら培った経験を持つ僕ですら、クラッチ操作とアクセル操作を完璧にシンクロさせ、DCT搭載モデルのようにバシっと決めるのは難しい。例えば緊張から一気にクラッチを繋ぎ後輪が横に滑ったり、登りの抵抗に負けてエンストして立ち往生、その場でバタンと転びクラッチやブレーキのレバーを折って走行不能になるかもしれない。

エンストすれば、斜面で足を付きバイクを支えるのは大変だし、停止しているにはリアブレーキを踏まなければならない。となれば、片足だけでバイクを支える事になる。その体制からどうやってバイクを斜面の下に戻すんだ?不安に心が張り裂けそうになる……。

オフロードでの小さな失敗は、意外とダメージの拡散につながる。長い経験から、首尾良く終えたら2度としない。君子危うきに近寄らず、が身についている。特にAfrica Twinのような大型バイクではなおさらだ。

それがDCT搭載のAfrica Twinでは短時間に3度もチャレンジした。オフロード経験の長い人ならDCTが持つ可能性と性能に驚き、今まで難易度が高い、と思っていたことが、DCTモデルではそうではない、と気が付くはず。危険な冒険が、楽しい挑戦に変わるのだ。

続いてダートコースを走る。道は次第に乾き、埃が立つ登りのガレ場セクションに入った。そこは途中にギャップが待つタイトターンまである。MTモデルで走った時、その手強さにちょっと緊張した。登りのガレ場は、速すぎればバイクが暴れるし、ゆっくりすぎてもバランスが崩れる。加減速やバイクが曲がり始める場所などをしっかりイメージし、その上でギャップをいなす体の柔らかな動きも求められる。

Africa Twin (DCT)

DCTモデルは、クラッチから解放されるのでハンドルへの無駄な力が入りにくい。上半身から力が抜ける分、自由度のある走行ラインを描くことに集中できる。これはコーナリングの基本。ガレ場を登るルートの道幅はクルマ一台分。その左の轍を辿る。MTモデルではコーナリング中にクラッチ操作があったりして、ラインから外れることがあった。DCTモデルではラインを読むことに集中でき、視線がしっかり先へと向く。結果綺麗にトレースできた。これもバイクの基本だ。クラッチ操作から解放されると、平常心がより保ちやすい。

道は広大なデザートを行くトレールを辿った。そもそもこんな場所を嬉々として走れることは相当なポテンシャルがある。DCT効果でこんなにリラックスしてハイペースで楽しめるとは、ライバル達も少なからずショックだろう。

オフロードは路面が滑りやすい。だから急のつく操作は禁物だ。肝は、アクセル操作とブレーキだ。この二つに集中させてくれるDCT搭載のAfrica Twinは、希有な存在だ。

また、人に変わってクラッチを制御してくれるDCTなら、気持ちが焦って半クラッチを使い過ぎる、といったヒューマンエラーも起こらない。長いツーリングを生き抜いてくれるだろうし、メンテナンスコストも低いに違いない。

僕にはそれよりも純度の高いライディングを楽しみ続けられるコトが眩しくて仕方がない。これはいい……!

「乗れば解りますよ」の真意が、僕は分かった。Africa Twinは多くのライダーに、もっとオフロードも楽しんでもらおう、というメッセージなのでは、と思えた。
アドベンチャーツアラーに乗るライダーの多くは、実はオフロードを走っていないのかもしれない。だが、Africa Twinなら、「あのオフロードを走ってみたいな」という小さな冒険心を起こさせる。そして走れるのだ。

実際にAfrica Twin + DCTをお店で試乗する時、足の着きにくい場所を想定してみたり、Uターンや極低速で走行してバランスを取る、なんてコトを試してみて欲しい。その瞬間、僕が体験した、心の余裕について「これのことか!」と共有してもらえるはずだ。
Africa Twinのクラッチ付きMTモデルは素晴らしかった。その上で僕はDCTがもっと素晴らしいことも発見した。レースの世界に「たられば」は御法度だが、もし、20数年前にDCT搭載のAfrica Twinがあったら、僕はパリ・ダカールラリーの砂丘セクションをもっと自信を持って楽しめたハズだし、要らない不安に潰さされそうになるコトもなかった。

しかし今は違う。これからのバイクライフにこのマシンが選択肢として存在する。どれだけ素晴らしい事か! 
試乗を終えた今、それを思うだけでワクワクするのである。




X-ADV (DCT)

X-ADV

DCTがあってこそのX-ADVだ。
2017年、印象に残ったバイクを挙げよ、と問われたら僕は間違いなくX-ADVをその一台に推す。このオートバイのキャラクターにとって、搭載されたDCTが見事にマッチしているからだ。いや、むしろDCTがあるからこそ成り立ったコンセプトだろう。

X-ADV (DCT) DCTがあるからこそ成り立ったX-ADVのコンセプト。

「X-ADVって、いったい何者なんだ?」
というのが第一印象だ。カタチを見ると、ごついスクーターにも思える。僕がイメージしたのは、SUVなんて言葉が生まれる前、野山を走る道具に徹していた頃の角張った4WD車だ。休日のアクティビティーにぴったりだ、とそのごついクルマが遊びの世界で大活躍した新鮮さ、頼もしさ、そして醸される楽しさを思い出した。

X-ADVの外観デザインを刺激的にしているのが、前後に履いたスポークホイール、大地を踏みしめるような長いサスペンション。跳ね上げられたマフラー、機能的なウインドスクリーン、角張ったメーターパネル等々……。

X-ADVは、いったい……。その見事にデザインされた野性を確かめるべく、僕は走り出した。

X-ADV(DCT)

本題の前に少しだけDCTの復習をしておこう。Dual Clutch Transmissionの頭文字をとってDCTと呼ぶこのメカニズムは、マニュアルトランスミッション(MT)の良さに、電子制御の自動変速システムを加えることで、走りの世界を広げると言っていいだろう。四輪ではお馴染みだが、このメカニズムをスペースが限られたオートバイに搭載すること、そしてマニュアルミッションに馴れたライダーに違和感を感じさせないようプログラムしたシフトスケジュールの良さがホンダの技術だ。

DCTは、MT車に乗るライダーの仕事となるクラッチレバー、チェンジペダル操作をメカニズムが肩代わりしてくれる。発進時のエンストや、シフト操作時のギア抜けの心配がない。坂道発進もラクラクだ。リアシートにパッセンジャーを乗せたとき、シフトアップ・ダウンでのギクシャク感もMT車と比較すると極めて少ない。
DCTに初めて乗ったとき、今までアクセル、クラッチワークにこれほどまでに神経を使っていたのか!と驚いた。

僕はオートバイ歴30年以上なのだが、これまで「上手く乗ろう」を心がけてきた。その僕ですらDCTにはかなわない。
クラッチ操作をDCTに任せた結果、僕は不思議な体験をした。アクセル操作、ブレーキを掛けることに気持ちが集中し、市街地では他の車両や歩行者の動きがさらによく見えるようになった。同時に郊外では景色を楽しむゆとりが出た。そう、オートバイを走らせることがより深く楽しくなったのだ。

DCTのメカニズムは、マニュアル車同様の6速ミッションを採用するので、シフトアップ、シフトダウンの感覚はMT車と同様に音の変化やエンジンのバイブレーションの変化を楽しめるのが嬉しい。クラッチレバーとシフトペダルを操作する必要が無い分、ライディング時にその操作を前提としたポジションを取らなくてもよいため、旋回性もより簡単に引き出せることにも気が付いた。

「DCTは攻めのメカニズムだ!」
これはDCTモデルを体験したジャーナリストが口にした言葉だ。そう、DCTはバイクをもっと面白くしてくれるメカニズム。それが僕の結論だ。

さあ、このX-ADVはどうだろうか。跨がる瞬間はとてもイージーでスクーターとの共通性を感じる。しかし、シートに座り、ライダーの視界に入るメーターやハンドルバーに手を伸ばすと、スクーター感は消え新種のオートバイに乗っているイメージが涌いてくる。

スマートキーを採用したX-ADVは、イグニッションスイッチを回しブレーキレバーを握りながらスターターボタンを押してエンジンを始動させる。この今風の装備と始動したエンジンが奏でる鼓動感。それがX-ADVの新しさと逞しさを印象づけた。

右のスイッチボックスにあるセレクタースイッチでニュートラルから“D”を選択。アクセルを開ければ走り出す。エンジンが生み出す鼓動感たっぷりの排気音、クラッチの接続が滑らかで発進も見事。NC750と同型のエンジンは低回転からトルクがあり、僅かなアクセル開度で力強い加速を引き出せる。一見スクーター風だが、走り出しからオートバイだ、こいつは。

DCTは変速を繰り返しながら市街地を2500回転程で走る。ドコドコドコドコ、というエンジン回転領域をシフトしながら絶妙に繋いでくれる。自動変速するDモードなのに自分がシフトアップ操作し、好みのエンジン回転領域を選んでいて、まるでMT車のような味わいを感じる。
スクーターの多くに搭載されるCVTの場合、発進時、エンジンの回転数をある一定のところまで上げ、そこをキープしながら加速する。長い半クラッチのようでもあり、速度が後からついてくるような印象になる。
これは好みが分かれるところだが、MTのオートバイ感覚と異なる印象が苦手、という声もある。その点、DCTは自動変速ながらMTのような加速の仕方をするので違和感がない。

これはDモードと、三段階にシフトタイミングを変更できるSモードから好みのモードを選べば、ライダーとのフィット感を詰められるだろう。これもDCTの機能の一つだ。僕の場合は、低い回転で早めにシフトアップしてくれるDモードとの相性がいい。

もう一つ嬉しい発見は、X-ADVの場合、リアブレーキを左手で操作できること。クラッチレバーがなくなった左グリップを上手く使っている、と感じた。スクーター同様なのだが、これはありだ。

X-ADV(DCT)

市街地を1時間ほど走り、高速道路へと駆け上がった。クルマの流れが多く本線に合流する時は神経を使うもの。それでも、ミラーに写る本線上の車両との間合いを計りながら加速に集中できる。DCTが紡ぐ750ccエンジンの力を直感的に引き出せる。X-ADVは実に優雅なまま力強くその仕事をこなしてくれた。

またごついルックスとは裏腹にX-ADVのサスペンションは性能が素晴らしく、市街地を滑らかに走ってくれる。DCTと噛みあった上質な乗り味だ。

西に1時間ほど高速道路を走りツーリングエリアに拡がる山麓に着いた。X-ADVでワインディングロードへと向かう。前後のブレーキを両手で操作しながら、シフトダウンスイッチを押してエンジンブレーキを使い、加速に備える。こんな時、エンジン回転を高めに保ちたいならば、Sモードが有効だ。三段階あるSモードのシフトスケジュールをセットアップして、道と自分の好みにシフトタイミングを合わせてみる。全てを思い通りにするならマニュアルモードを選択すればいい。左のスイッチボックスにある“+、-”のボタンで自分のタイミングでシフトチェンジすれば、また別の操作する満足感が得られる。

僕の場合はDモードのまま、必要に応じてシフトダウンスイッチを押し、素早くエンジンブレーキを効かせたりする。それだけで充分に密着感が湧くのだ。これもDCTの変速プログラムが巧みな証拠だ。
どうです? X-ADVが気になってきたでしょ。

ここまででX-ADVと“仲良し”になれたのはライディングをする気持ちがポジティブになるからだ。X-ADVの走りを上手く引き出し、上質な時間をすごさせてくれる。だからこそ少し冒険をしたくなった。綺麗な風景の続くダートに入ってみよう。

ダート路に入りX-ADVを走らせる。それはとても楽しかった。重心が低く、安定感のあるX-ADV。パッケージングから想像する通りの走りをみせてくれたからだ。
発進など緊張する場面でも、アクセルを開けることに集中できるため、穏やかな気分を保てるし、低速から鼓動感のあるパワーが後輪を通して路面に伝わる様子も解りやすい。小石を飛ばしているのか、横には滑らないのか、それともゆったりとグリップしながら進むのか。走る状況が掴みやすいのだ。

X-ADV(DCT)

アクセルを開ける、閉めるという操作に対して、エンジンのレスポンスをイメージ通りに右手から後輪に伝達できる。これはMT同様の印象で、DCTの大きなメリットとなる。走りにタイムラグがないのでさらに集中できるのだ。

つまりX-ADVはそんなライディングを純粋に楽しむ素地が揃っていた。加速する、減速する、コーナリングする。どんな場面でも右手と後輪が一体になっている印象が強く、それをアクセルコントロールだけで引き出せる。また、車体やエンジンの特性も、ダートで扱いやすい。

減速する時もシフトダウンスイッチに触れるだけでジワっと後輪にエンジンブレーキが掛かる。この瞬間の絶妙なクラッチ操作もDCTの得意技だ。MTのようにライダーがクラッチレバーを操作する必要がないので、肩、腕、手首に不要な力が入らない。CVTも同様にクラッチ操作は必要無いが、ダイレクト感ではDCTが上だ。その恩恵はハンドリングにも好結果をもたらす。力まず走れる分、ナチュラルな走りをすんなり引き出せるのだ。

実はDCTの恩恵で、こうしたハンドリングを引き出しやすいこと、という副産物は、実に大きいと僕は思っている。クラッチレバーの操作って、意外と多方面にわたってライダーの思考力、体の動きを支配しているのだ。
X-ADVは大柄な体躯ながら、リラックスしてダート路の周りに拡がる風景を楽しみながらその走りを味わえた。これぞDCTがもたらす技だと僕は思う。

丸一日、X-ADVを走らせて得た結論はこうだ。アドベンチャーバイクのようなパッケージングのイメージそのままに走りを楽しめるモビリティー。それを引き出すのにDCTがもたらした効果が、X-ADVに楽しさの深みを与えているということ。つまり、DCTがライダーの心の中から、行く手に立ちはだかる“小さなプレッシャー”を取り除き、どこへでも行ける気持ちにしてくれることだった。

X-ADVはDCT抜きには考えられなかったのではないか。DCTも進化するが、DCTがオートバイ造りにおいて、そのキャラクター構築に多いに貢献していることを「なるほど!」と感じるテストだった。

X-ADV ハンドル
X-ADV ハンドル
DCTのシフト/モードセレクタースイッチがハンドルバー右側にある。 “S、D、N"と書かれたグレーのスイッチがシフト/モードを変更するためのもの。同じくハンドル右側にある赤いエンジンキルスイッチの向こう側に“A=オートシフト”と“M=マニュアルシフト”の切り換えスイッチがある。通常エンジンを始動後N→Dにシフトし走行状態となった場合、オートシフトが選択される。またライダーは任意でA /Mスイッチをタップしてオートシフト、マニュアルシフトの選択ができる。
X-ADV ハンドル
マニュアルシフトを選択した場合、左のスイッチボックスに備わっている“+=シフトアップ“、“-=シフトダウンスイッチ”でライダーが適したギアを選択して走行する。また、D/Sモードで走行時でも、マニュアル操作が可能。
X-ADV メーターパネル
X-ADVのメーターパネルにあるインジケーター。右側中央に見える“D"の文字は走行可能状態を示す。現在、速度はゼロ、セレクトされたギアは1速を示す。
X-ADV メーターパネル
シフトスイッチを“N"から“D"へ。さらに押すと“Sモード"へとシフトされる。Sモードではシフトアップのタイミングを伸ばし、エンジンを高い回転まで使う。さらにS側にシフトスイッチを長押しするとSモードを3つの段階に分けて好みに合わせることができる。現在はSモードの2段階目(Sの左側にあるブロックの数がそれを示す)。
X-ADV メーターパネル
DCTのシフトは現在ニュートラル。速度表示の下にある“N"がそれを表す。DCTの場合、イグニッションスイッチをオンにした場合や、エンジンを停止した場合、自動的にトランスミッションが“N"を選択する。
X-ADV パーキングブレーキ
DCTモデルの場合、エンジン停止時はミッションがニュートラルポジションとなるため、停車時に有用なパーキングブレーキも備える。

Q&A

Q1.DCTとは何の名称ですか?

A.Dual Clutch Transmissionの頭文字をとったもので、スポーツバイクのエンジン、トランスミッションのレイアウトに極めて近い、マニュアルミッション感覚のオートマチックのシステムです。

Q2.DCTはオートマチックトランスミッションなのですか?

A.DCTは、これまでのオートマチックトランスミッションとは違います。DCTは通常の6速ミッションを油圧と電子制御でシフトするミッションです。つまり、マニュアルトランスミッションのギアチェンジを人間ではなく、電子制御して行うシステムです。このためハンドルスイッチでマニュアルトランスミッションのようなシフト操作が可能な一方、ATモードも用意されているので、オートマチックのように走ることも可能です。

Q3.マニュアルでギアを操作することはできますか。

A.ハイ。できます。DCT搭載車の左ハンドルスイッチボックスにあるスイッチでシフト操作が可能です。使用するのは親指でシフトダウン、人差し指でアップの操作をします。

Q4.クラッチレバーはありますか?

A.電子制御によりクラッチを操作するので、ハンドルバーにはクラッチレバーは装備されていません。

Q5.シフトペダルからの操作はできますか?

A.シフトペダルの装備はありません。従って足でシフトする事は出来ません。
※オプションでフットチェンジキットが用意される機種があります。

Q6.DCTはどこが新しいのでしょうか。

A.現在、モーターサイクル用オートマチックの主流は、スクーターなどに採用されているCVTトランスミッションです。DCTは、進化した電子制御技術で繊細なアクセルワークが求められるモーターサイクルの運転に適した発進、変速、そして走行状況の学習機能も搭載するシステムなのです。

Q7.Hondaのモーターサイクルに於けるオートマチックの歴史が知りたい。

A.Hondaはよりイージーに楽しく走れるモーターサイクルとして様々な技術的トライをしてきました。モーターサイクルから操縦する難しさを減らし、楽しく走るための工夫をしてきました。1958年、スーパーカブC100(50 cc)に採用した、クラッチ操作をすることなく発進、変速ができる自動遠心クラッチ。1963年には油圧無段変速機を備えたジュノオM(125?)を発売。1977年には4輪のオートマチックミッションとして多く使われるトルクコンバーター式オートマチックを大型スポーツバイク、Honda・エアラ(750cc)に搭載しています。
他にも、1980年に発売したHonda・タクト(50cc)では、駆動と変速を一体化したドライブベルトを持つ、Vマチックをリリース。シンプルな無段変速機構として定番化します。また、2008年にはHFT(Human Friendly Transmission)を搭載したスポーツクルーザー、DN-01も発売しています。
そしてスポーツモーターサイクル用に開発され、マニュアルトランスミッションと同等のダイレクト感を持っているオートマチックシステム、それが DCTなのです。

Q8.DCTのメリットを教えて下さい。

A.乗る事を楽しめること。そして安心して乗れることです。
DCTではライダーの左手に代わり、ECUのプログラムが油圧制御によりクラッチの断続操作をし、シフトチェンジは左足に代わりモーターが行います。
名前の由来でもあるデュアルクラッチとは、1,3,5速用と2,4,6速と、奇数、偶数とそれぞれに2つのクラッチを持ち、変速操作の前にシフトチェンジをするギアをあらかじめ回転させ、駆動力を伝える準備をしておきます。そして二つのクラッチを使い、後輪に伝わる駆動力をゼロにすることなく次のギアに変速します。そのため、加速、減速のシフトチェンジでもショックが極めて少なく、シームレスで上質な走りを楽しむことができます。
また、カーブの多い峠道などを走行している時など、走行状態をモニタリングして、無用なシフトチェンジをしないようECUはプログラミングされています。その結果、ライダーはブレーキングや、加速、あるいは周囲のことなど、走ることにより集中し、楽しむことが出来るのです。
これらの結果、機構そのものがマニュアルトランスミッションと同等であり、エキスパートライダーを納得の制御をするので、あたかも上手に操っているような感覚を楽しめるのです。経験値の少ないライダーから経験豊富なライダーまで、一クラス上のテクニックを見に付けたような感覚でライディングを満喫できるのです。

Q9.DCT搭載車の燃費は?

A.燃料消費率は走る速度やエンジン回転数、加速の仕方、荷物の有無、風向きなどの天候条件、様々な要因で変化する特性をもっています。
DCT搭載車の場合、時速60キロでの定地走行テスト値で比較すると、NC700X、NC700X ABS NC700X DCTともにガソリン1リッターあたり、41キロの走行が確認されています。つまり燃費性能は、マニュアルトランスミッション車と同等性能を持っています。

Q10.試乗ができますか?

A.是非、DCTを体験、体感して下さい。お近くのHondaモーターサイクルディーラーでお待ちしております。

Q11.DCTの操作は難しい?

A.クラッチレバーの操作、シフト操作をしなくても走れるなど、違いはありますが、既存のモーターサイクルと大きく変わることはありません。
走行を開始する時、マニュアルミッション車ではクラッチを握り、シフトペダルで1速を選択しますが、DCTの場合、エンジンを始動後、ハンドルスイッチ右側にあるS-D?Nのスイッチでニュートラル(N)からドライブ(D)を選択する、あとはアクセルを捻るだけで走り出せます。

Q12.クラッチレバーやチェンジペダルが無いと違和感がありませんか?

A.普段、マニュアルトランスミッションモデルに乗っていると、DCT搭載車に乗りはじめた時、発進や停止する時にクラッチレバーを指が探してしまったり、左足のつま先がチェンジペダルを踏もうとする事を多くの人が経験します。
しかし、1時間も乗っていれば馴れてしまいます。

Q13.マニュアルトランスミッション車のほうが面白さは上だと思いますが?

A.スポーツバイクにとって、クラッチとアクセル、そしてシフトアップやシフトダウンを含めて適切な操作をする事は、ライディングの楽しさの原点になっています。例えば四輪のレースシーンやスポーツカーなどに多く採用されているDCT。ステアリングホイールに付いたパドルシフトでハンドルから手を離さず、シフトレバーを操作するよりも短時間のうちにシフトチェンジを完了させる。ドライブに集中できる、シフトチェンジを短時間で行うことで、加速、減速でアドバンテージを得るというモータースポーツの側面からもメリットがあります。
Hondaが開発したDCTは、小型軽量化し、モーターサイクル用にフィットさせたシステムです。その楽しさは是非試乗で体験してみて下さい。

Q14.エンジンブレーキはどのように使うのでしょうか?

A.DCTでエンジンブレーキを使う場合、通常通りアクセルを閉じることでその効果が得られます。また、より強いエンジンブレーキを引き出したい場合、ハンドルスイッチ左側にあるシフトダウンスイッチで適切なギアを選択することで、より強力なエンジンブレーキを得ることが出来ます。DCTのシステムは、シフトダウン後、エンジンが高回転になりすぎる(オーバーレブの危険性)がある場合、操作をそのまま受け付けることはしません。また、Dモード走行中でも、シフトスイッチをタップすれば、同様にシフトダウンを受け付けます。

Q15.坂道に駐車する場合は?

A.DCT車にはパーキングブレーキが装備されています。必ずパーキングブレーキを使用して下さい。

Q16.アクセルを開けるだけで走るDCTモデルは、スクーターのようにブレーキは前後ともハンドルバーについているのでしょうか?

A.いいえ。前輪のブレーキレバーは右手で操作し、後輪ブレーキは右足で操作する一般的なスポーツバイクのような操作方法を採っています。

User Reviews

  • VFR1200F (Dual Clutch Transmission)

    オランダ 38歳 男性

    左手でクラッチ、左足でギアチェンジという動きが体に染みついていたため、乗り始めは違和感がありましたが、毎回5分も乗れば体が馴染むようになりました。普段は90%ほどATモードで、時々MTモードで使用しています。ワインディングではVFR・DCTに乗りはじめた頃、MTモードで走っていましたが、ATモードとシフトダウンのスイッチを併用する事で、よりハンドリングに集中できることを発見しました。

    ドイツ 45歳 男性

    タンデムで使用することが多いので、DCTの変速ショックのなさが気に入っています。スクーターのCVT式と違い、6速あるギアをシフトチェンジして加速する感覚はMTのバイクそのものです。使用するのはATモードばかりで、特に加速中のシフトチェンジがスムーズで、体の持って行かれ感がなく、後ろに乗る妻の評判が良いです。2人でツーリングに行く機会が増えました。

    日本 52歳 男性

    MTモードで使用するとき、左手だけのシフトチェンジにどうしても体が馴染まなかったため、純正アクセサリーのチェンジペダルキットを購入し、取り付けています。停止時はDモードとニュートラル間のシフトも、ペダルでも操作出来るのは便利です。クラッチレスのシフトチェンジができて快適だし、特にワインディングでは、クラッチワークが必要ない分、ペダル仕様MTモードが走りに集中できます。

    フランス 40歳 男性

    これで3台目のVFRになります。ホンダのVFRはライバルに比べ、水冷V4やABSなど、常に最先端の技術を使用している点が好きだし、ヨーロッパではVFR=ハイメカ、というホンダを代表する機種になっていると思います。1日1000km、いかに体の疲労がなくて走れるか。6月半ばに開通するアルプスの峠に仲間と出かけるのが楽しみです。常にVFRには満足させられます。
  • VFR1200X Crosstourer (Dual Clutch Transmission)

    スペイン 49歳 男性

    トラクションコントロールや前後連動式ABS、DCTが標準装備されていたため、クロスツアラーを購入しました。オフロードを走ることはほとんどないのですが、オンロードでのライディングがスムーズに快適にできるようになりました。ギアチェンジをスムーズにできると、体の疲労が少ない気がします。

    スイス 50歳 男性

    イタリアへの山越えなど山岳部には荒れた路面の箇所が多いので、10mphほどで走らなければいけない。ギアを選ぶのが難しいことがないし、前後ブレーキを操作しながらクラッチをON/OFFしてギアチェンジ、という操作さえ、左手の指だけで出来るところが気に入っている。アウトストラーダではすぐにATモードにすればいい。
  • NC700S (Dual Clutch Transmission)

    日本 28歳 女性

    初の大型車がNC700Sです。シフトショックのなさなど、他のモデルと比較はできないのですが、苦手だった発進とシフトダウンがスムーズに出来るのがうれしいです。特に坂道発進や、車庫入れの時の微速前進が安全だし、中型モデルでも何度かやってしまった、発進に失敗してエンストし、立ちゴケしてしまうことがなくなりました。

    日本 31歳 男性

    コンバインドABSを装着したモデルを買おうと決めていて、そのモデルと約5万円しか価格差がなかったのでDCT仕様を購入しました。乗り始めた当初は、ギアチェンジの際のメカニカルなノイズが気になりましたが、走るたびに10分もすると自然に体になじむようになりました。AT否定派でしたが、今ではほぼATで、必要な時だけシフトボタンを使用するだけになりました。

    イタリア 33歳 女性

    けがの後遺症で左足首の動きが完全ではないため、これまでスクーターばかりに乗ってきましたが、NC700Sが出てすぐに乗り換えました。左足で操作する必要がまったくないのが夢のようです。ほぼMTモードを使用していますが、ATモードでの走行でも、シフトスイッチを併用するとMT同様の走りができるのが気に入っています。
  • NC700X (Dual Clutch Transmission)

    日本 38歳 男性

    ドリーム店でDCT仕様とスタンダードクラッチ、両方に試乗させてもらえたため、じっくり吟味したうえでDCT仕様を購入しました。スクーターも含め、初めてAT走行を味わったのですが、きちんと加減速でバイクらしい動きを味わうことができて、気に入っています。今ではATモードでの走行ばかりになりました。

    スペイン 45歳 女性

    シフトスイッチ+MTモードでばかり乗っています。クラッチワークのタイムラグがなく、うまくクラッチをつなげなかった、ということがないので、常にスムーズなライディングができるのが気に入っています。夕方、混雑して路面が悪い市街地を走るときだけATモードを使用しています。長いサスペンションが付いているので、道の荒れも安定感があります。スクーターとスポーツバイクの両方を味わうことができるのが良いです。

    イタリア 44歳 男性

    アウトストラーダを使うより、セカンダリーを走ることが多く、ほとんどタンデムで使用しています。特に後ろに乗る妻が、シフトショックがないことに気に入っています。私の方も、加速と減速で妻と私のヘルメットがぶつかることを気にせずにライディングに集中できるので、バイクの楽しさがより大きくなった気がします。

テクノロジーTech Views Vol.1 DCT