様々な路面状況でも、誰もが安心して操作できるブレーキ

これが、Hondaが考えるオートバイの“理想のブレーキ”。
その理想に近づくために、今も開発を続けているのがHonda Advanced Brake Systemだ。

1983年、GL1100に搭載された前後輪のブレーキを連動させたCombined Brakeに始まり、車輪のロックを防止するABS、これらを組み合わせたCombined ABSが、モデルに合わせて採用されている。

“コントロールしやすいブレーキ”、“高い性能を引き出すブレーキ”、“車輪ロックしないブレーキ”──すなわち安心して操作できる、というHondaのブレーキシステムを、ジャーナリストの松井 勉さんに体験して貰った。

「ブレーキングの難しさを軽減するこのシステムは、実はライディングの“楽しさ”に繋がるんです」

コンビブレーキ –PCX-

本当は凄いブレーキなのだ。
市街地で繰り返される“走る、曲がる、止まる”が楽しくなる。

Hondaの前後連動ブレーキに関心を持ち、コンビブレーキを装着したモデル、PCXを試乗してみた。
Hondaが市販するスクーターに標準装備されるほか、多くのモデルに装備されるこの前後連動ブレーキシステム。PCXの場合、左のブレーキレバーを操作すると、後輪と前後の双方に制動力が掛かる、というものだ。

え、それって当たり前のことじゃないの? 車だけに乗る人はそう思うだろう。車は一つのブレーキペダルを踏めば、車輪全部にブレーキが掛かる。
しかし、モーターサイクルの場合、前後をドライバーが適度に調整するのが普通だった。それをHondaのコンビブレーキは、リアブレーキ操作をするだけで、リア、そしてフロントにも制動力を分配してくれるのだ。

PCX

そんなの、フロントブレーキと併用すれば同じじゃないか。確かにそうだ。しかし、Hondaのコンビブレーキの特徴は、その労力を軽減してくれることだけではなく、前後のブレーキ力を適度に調整して制動力を生み出してくれるので、簡単にエキスパートライダーが行うようなブレーキングが自動で出来てしまう特徴がある。もう一ついえば、リアブレーキがフロントブレーキより僅かに早く効くようセットされているようで、これが絶妙なブレーキングを可能にしているのだ。

その時の前後にかかる減速力の割合は、左レバーからだとリアブレーキの制動力を中心に前ブレーキにも振り分けられている。単に前後が同時かかる、というものではなく、モデルの性格や、重量、そしてクラスによって機種ごとに使用状況にあうように設定となっているのも大きな特徴なのだ。

今回、僕はPCXに乗って街中を走り回ってみた。125?が持つ市街地での使い勝手も手伝って、目的地までライディングを楽しめる。地下鉄やバスを乗り継いでゆくと、乗り換えや駅からの道のりを考えてリラックスできない僕は、日常にライディングがあるだけでハッピーだ。

それにこのクラスのバイクの機動力を活かすべく、路上のスキ間を縫って走れば、そこにはホコリが溜まっていたり、落ち葉があるような場所だってエクスプレスレーンとして突き進むことになる。そんな路面でも、じわりとブレーキの制動力を路面に伝える役目をしてくれるのがスゴイ。

PCXのコンビブレーキを使っているうちに、カーブや前車との車間距離調整に左のレバーを駆使していることに気がつく。両輪に制動力が掛かるので、PCXはとっても安定した姿勢で速度を落としてくれる。さらに強い制動力が必要とあれば右手でフロントブレーキの制動力をさらに強め、合わせていけばいい。

このシステムを持たないモデルで左手だけを使うと、リアタイヤが制動力を伝えきる前にグリップを失いそうになったり、実際にキュウとタイヤがロックすることになる。PCXのコンビブレーキだと、左のレバーだけで、どこか大きな手で後ろから引っ張られるような制動力が感じられ、リアタイヤがロックしそうな気があまりしない。

そんなことをいうと、いかにも安全運転のためのデバイスだ、とおもわれるだろう。未経験の人は「そんなの右手と左手でブレーキを操ればいいし、そんなメーカーが造ったお節介なものより、自分が自在にできるほうが良いに決まっている」というだろう。

PCX

僕も17歳ぐらいだったらそう思っただろう。リアタイヤをハードブレーキングでロックさせ、路地をキュッとブレーキターンして曲がるぐらい簡単なこと、と思っていた。

確かにエクストリームライディングごっこに向いているとは言わない。このブレーキが実力を出すのは「あ!」っと思うような危険な場面に遭遇したとき、一発目にドンとブレーキを掛けてしまったときだ。

自分にも経験があるが、人間は突発的な状況になると、ブレーキを繊細に操作する、なんて余裕を持ち合わせていない。コンビブレーキさえあればナニにもぶつからない、というものではないが、少なくとも、あわてて、繊細さを欠いたブレーキングをしても、最初の安定感を保つチャンスをより多くのこしてくれる。

モーターサイクルでは前後のブレーキをバランス良く使うのが基本だ。しかしそれは意外と難しい。どのくらいの制動力をもって前後のバランスを取ればよいのかは、経験値に大きく左右される。その基本をコンビブレーキは実にイージーに引き出してくれるから、実にリラックスして入ることができる。
最初からHondaのコンビブレーキ搭載車しかのったことの無い人にはそれは「当たり前」のことかもしれない。でも、Hondaのモデルに当たり前に装備されているが、それが世間の当たり前ではないということもお忘れ無く。

Combined ABS –Forza-

ビッグスクーターにCombined ABSが付いたら。
Combined ABSは、僕が10年以上かけて編み出したブレーキング術を、握るだけでほぼ自動的に実現してくれる。

イージーにライディング。しかも便利に。大型スクーターセグメントは大きな価値観を提示しながらライフスタイル商品として根付いている。その車体の特徴はホイールベースが長く、大きなラゲッジスペースを確保するため、ホイールはスポーツバイクと比較すれば小径。カスタムクルーザーに乗るようなリラックスしたライディングポジション、ハンドル回りやシート下のラゲッジスペース。

FORZA

エンジンを始動させ、アクセルを開ければスッと走り、左右のハンドルグリップに装着される前後のブレーキレバーを握れば、減速し、停まる。とにかくイージーだ。

Hondaの大型スクーターはコンビブレーキが標準装備されている。さらにコンビブレーキにABSを組み合わせたCombined ABSも用意されている。今回はABS付きを試してみた。

四輪車ではブレーキペダルだけで制動力が全輪に分配されるが、モーターサイクルでは前後のブレーキを独立して操作するのが普通だ。それでいて、前後のブレーキをバランス良く状況に応じて使う必要があり、経験が要される。つまり、制動力はライダーによって引き出せる性能が変わってくる。その部分をコンビブレーキは左のブレーキレバーを握るだけで前後のブレーキに制動力を掛けてくれる、いわば経験値支援装置だともいえる。
その乗り味をABSも装備したFORZAで試した。

街中を走るFORZAは極めて安定した姿勢で減速をし、停止する。ビッグスクーターらしいホイールベースの長さ、ライダーが乗車した時の後輪荷重の大きさから、左のブレーキレバーで後輪と前輪の一部のキャリパーピストンに制動力が掛かったときの制動力と制動感は絶妙。馴れると左のレバーだけにブレーキを任せ、右手はアクセル操作に集中することもできる。むしろその方がシンプルで解りやすいことに気がつく。それほどしっかりとした制動力を左レバーからひきだせるのだ。

コンビブレーキやABSのことを「お節介な装置」と考えるライダーが少なくない。が、その人達の多くがこのシステムを体験したかというとかならずしもそうではないと思う。誰かのブログやツイートを読んだ、という又聞きのケースも多い。「あれは要らないようだと書いてあった」というように・・・・。

だからこそ言いたい。経験すべし、と。この装置は僕が10年かけて編み出したブレーキ術を、握るだけでほぼ自動的に行ってくれる。それぐらいの経験値支援のアドバンテージをもっている。

FORZA

じゃあ、30年の運転経験を持つ僕にはものたりないのか? 答えはノーだ。充分に満足できる。

コンビブレーキは、左レバーを操作するたびに、そのメリットを確実に着実に享受できることだ。そしてABSを備えたこのモデルなら、緊急時や、路面に砂が出ているような時、雨など、路面状況が悪くなっても、スリップダウンの危険性をかなり低減してくれる。

そして、ABSの利点はエマージェンシーだけではない。例えば、左手でブレーキを操作しながら走る時、次第にその力を強めて行くと、ABSが作動して、レバーにグ、グ、グ、と反力を感じる。つまり「今、後輪と路面の限界を越えた」と機械が教えてくれる。もちろん、雨や、滑りやすい路面でのABSの作動も同じように察知出来るので、想像以上に冷静でいられるのだ。

移動が楽、荷物が載る、運転が簡単、大型スクーターに持っていたイメージの中で、モーターサイクルが持つ操る楽しみという部分を、コンビブレーキとABSのおかげで、スポーツバイクのような“人馬一体”と表現したくなるような“心とバイクが通信する”瞬間を味わうとは思っていなかった。

FORZAの特性にもマッチしたコンビブレーキならば、右手はアクセル、左でブレーキ、必要とあれば右手もブレーキを操作する、とシンプルに頭の中を整理することが出来る。気持ちにゆとりが持てるだけに、ますます走るのが楽しくなる。

結局、機械の操作ばかりに集中していては、走る楽しさを楽しんでいない自分に気がつくことになる。Combined ABSの狙いは、ブレーキングから難しさを差し引く事で、実はそんな二次効果を狙っているのでは、と思う程なのだ。

Dual Combined ABS -Gold Wing-

巨体を小さく感じさせる魔法の道具。
リアブレーキペダルを上手に活用するのが、GOLDWINGをエレガントに走らせるコツだ。

Hondaが多くのモーターサイクルに搭載している連動ブレーキ。さらにABSを加えたCombined ABSは頼もしい装備だ。その中でブレーキレバー、ブレーキペダル、そのどちらを操作しても前後に制動力が加わるシステム,
すなわちDual Combined ABSを現在、Gold WingやGold Wing F6Bに標準装備している。

4輪車に比べ2輪車は、重心位置が高くホイールベースが短いため、ブレーキングをする時、前輪への荷重移動が大きく、後輪のブレーキ効果が低くなりやすい、という特性がある。そのため、効率良く前後のブレーキを状況に応じて握る、踏む力を乗り手が調整するほうが4輪車のブレーキのように、一つのペダルで踏み込むよりも効果的、と考えていた。

GOLDWING

しかし、2002年、フロントブレーキレバーでも、ペダルからの操作でも同様に前後連動となるブレーキシステムを搭載したVFRに乗ると、それまで難しく、経験を必要とされたブレーキングの作業が、実に簡単に再現されることに気がついた。

しかも、前後のブレーキ操作をしたときに感じるそれまでの経験で培った印象と大きく違っていない。ブレーキレバーを操作しても、ブレーキペダルを踏んでも同じように前後にブレーキの制動力がかかるのではなく、ペダルを踏めば優れたリアブレーキが掛かる印象で、フロントブレーキレバーを操作すれば、前のめりになる感じが少なく、車体が安定した状態で制動力を体験できる、というものだった。

同時に、リアブレーキについては、直進状態で思い切り踏み込んでもあっさりとリアタイヤがロックする気配がなく、それこそつま先で憎たらしいヤツの足を踏みつける勢いで踏まないとロックしにくい、ということも体験した。これはABSが装備されていなかった初期のモデルながら、驚きの性能だった。

難しい、を簡単に。

一言で言えば、そうなるのだが、2輪車の特性に合わせたしっかりとしたチューニングを施すと、こうも連動ブレーキというものは味方になってくれるのか。と感心した記憶がある。

Gold Wingが1800となってデビューした時からこの連動ブレーキとABSを組み合わせたDual Combined ABSが装備されていた。何時乗ってもこのブレーキの良さには驚かされる。ブレーキングを意のままにこなすのだ。それによって、まるでこの大きなツーリングバイクが、コンパクトなスポーツバイクになったかのような一体感を味わえる。

ゴールドウイングのふるさとの一つでもある北米。この地では多くのツーリングバイクが好まれる。多くのメーカーが北米向けにツーリングバイクを出している。そうしたラグジュアリーなモデル群にあっても、Gold Wingのブレーキシステムは優秀さで光っていると思う。

ブレーキの良さは、タイヤ、シャーシ、サスペンション、そしてブレーキシステムの総合力。それらが非常に高い性能を持っているのだ。多くのモデルを乗り比べると、それが解る。

僕のように仕事で数多くのメーカーのバイクに乗っていると、すでに10年以上前にこのシステムを構築したHondaの手腕には頭が下がるし、2013年の今、乗っても、メカニズムに古くささはなく、相変わらず巨体をスッと小さくする魔法のツエのような出来栄えなのである。

その凄さを実感するには、市街地に小島のようなバイクで迷いこむのが早い。信号待ちで居並ぶクルマの中から「こんな日に仕事もしないでお気楽なもんだ」という視線を浴びたとしても、彼らが羨むようなエレガントな減速と停止を右足で操作するペダルだけで引き出せる。

それならば、ブレーキペダルでも、ブレーキレバーでもどちらか片方だけでよい、と思うかもしれないが、リアブレーキペダルを活用するのがGold Wingをエレガントに走らせるコツだ。ABSは雨の日、イザというとき、決定的にフォローをしてくれるが、いつでも、何処でもライダーに協力を惜しまない。まるで家族のように無償の愛を注いでくれるのだ。

GOLDWING

しかし、そんな話しをすると、Gold Wingに乗る男から「峠は試したか? オレは峠だってリアブレーキペダルだけでゆく。もちろん、下りもだ。街中だけで語られては片手おちだ」と、言うではないか。

おそらくこの職業をしていなければこの話しに耳を貸さないだろう。しかし、試しもしないで断じるわけにはいかない。

そこで標高2000メートルまで駆け上がる峠道をめざし、上り、そして下ることにした。そもそも400キロ以上もある巨体でこんな道を楽しく走れること自体、Gold Wingは天才だ。1800㏄の水平対向6気筒は何処までもスムーズにパワーとトルクを稼ぎ出し、アクセルを開けるのが楽しい。馴れたところで、リアブレーキペダルのみで制動を掛けてみる。

登りは、リアブレーキだけで減速だけで実は何も不満を感じなかった。それまで、右手でブレーキレバーを操作し、右足でペダルを踏む、といういつもの操作をしていたのだが、右足に集中する事で、減速操作により集中できる。
と、どうなったか。カーブの先を読む、路面の状況を予測する、景色を楽しむ、いろいろな事に余裕が出てきた。これか! これのことか!

そして峠を登り切り、下りになる。コーナリング性能とペダル一つで減速できる性能に満足し、下りはさらにペースを上げてみる。さすがに馴れないと、右手がレバーに掛かるが、減速するタイミングを僅かに早めるなどすれば、なるほど、Gold Wingは何事もないように減速する。これは新しい発見だった。

ならばフロントブレーキレバーだけでも前後ブレーキが連動になるCombined ABSだ。右手で操作するレバーだけでも下ってみる。

やはりフロントブレーキの能力を重視した制動になるだけに、下り坂も加わって、前側への荷重移動が多くなる。が、それでもリアが軽くなるような印象は少なく、リアタイヤが減速をかけている様子が分かる。
峠道を降りてから平地でフロントブレーキレバーだけを試してみたが、やはりリアタイヤに程よく制動力が掛かる、姿勢が安定している。前のめり感が低減されている。
比較すれば、ペダル操作の印象が後ろから大きな力で引っ張られるような印象に対し、レバー操作でのブレーキは、大きな手がGold Wingを前から押さえるような印象だ。

結論を言えば、Gold WingのDual Combined ABSは、新しいライディングテクニックの窓を開く可能性すら秘めたもので、あの男のいうとおりだった。むしろ、ペダルでもレバーでもどちらかのブレーキ操作だけで、前後連動になるこのシステムは「モーターサイクルでは前後のブレーキを適切に使うこと」をかなりの部分、自動的に行ってくれる運転支援装置でもあり、結果的に乗り手の気持ちにゆとりができ、ゆとりを楽しむことができた。

「Gold Wingのブレーキシステムに馴れたライダーは、他のモーターサイクルに乗ったときに注意が必要です。」、そんな一文がこのバイクのオーナーズマニュアルにはいるな、と思うほどスゴイことを簡単にこなすブレーキシステムだったのである。

Q&A

Q1.モーターサイクルに於けるHondaのブレーキ技術の歴史を知りたい。

A.ブレーキ性能の向上。これはアクティブセーフティーの観点から重要でした。Hondaは研究開発の中で重要な要素と位置づけ、ブレーキシステムの進化に取り組んできました。ブレーキ操作時に車体姿勢の安定性向上をはかるためのアンチダイブジオメトリーの追究、ブレーキパッドの材質改善、デュアルピストンキャリパーの採用など基本技術を向上させてきました。その経過をまとめると……。
1969年──CB750FOURに搭載した量産市販車としては初となるディスクブレーキ(前輪用)を搭載。
1970年代初頭──ハードの部分だけではなく、1970年代初頭から純粋に機械式のABS(Anti Lock Brake System)の研究を開始。
1983年──フットブレーキペダル操作で前後のブレーキを連動させる、Combined Brake SystemをGL1100に搭載。
1987年──機械式油圧制御方式のABSを完成させる。
1992年──モーターサイクル専用電子制御式ABSをスポーツツーリングモデル、ST1100に搭載。
1993年──ブレーキレバー、ブレーキペダル、いずれを操作しても前後連動ブレーキとなる、Dual Combined Brake SystemをCBR1000Fに搭載
1995年9月──前後連動ABSを発表。
小型二輪車用「M.A.-C.ABS=Motor Actuated Combined Anti Lock Brake System」
1996年6月──50㏄スクーターモデル、Live Dio STに搭載し発売。
大型二輪車用 「T.R-C.ABS=Torque Reaction Combined Anti Lock Brake System」を1996年モデルのST1100に搭載。
1999年6月──前後ドラムブレーキを採用した50 ㏄スクーター、GIORNO Creaによりシンプルでコンパクトにしたコンビブレーキを搭載。左ブレーキレバー(後輪用)を操作することで前後連動になる。
2000年代──大型モーターサイクル、小型モデルなど前後連動ブレーキ、ABS装着モデルを拡大。

Q2.コンビブレーキとは?

A.HONDA ADVANCED BRAKE SYSTEMの一つで、コンバインドブレーキシステムとは、後輪用のブレーキレバー、ブレーキペダルを操作することで、速度、操作力に合わせて自動的に前後のブレーキに制動力を配分する装置です。ブレーキング時により車体が安定することで、上質な部ブレーキングを引き出しやすいシステムです。そのため安心感をもってブレーキングをすることができ、ライダーの不安を低減する効果も兼ね備えています。

Q3.Dual Combined Brake Systemとは?

A.HONDA ADVANCED BRAKE SYSTEMの一つで、前後いずれのブレーキ操作をしても、両輪に制動力を伝えるシステム。片方のブレーキ操作で全ての制動力をまかなうものではなく、後輪のブレーキ操作を行ったとき、前輪にも制動力を伝えることで、より安定したブレーキングを引き出せるようにするもの。
前輪用ブレーキ操作では前輪が、後輪用ブレーキ操作では後輪の制動力が主体になるよう設定されているため、コンベンショナルなブレーキシステムを持つモーターサイクルから乗り換えても安心感が高く、本来の制動性能を引き出しやすくなるシステムです。

Q4.コンビブレーキ装着車では、例えばリアブレーキだけ操作すれば前後のブレーキが作動するので、ブレーキ操作を省略できるのですか?

A.モーターサイクルのブレーキ操作は、前後をバランス良く状況に応じて操作することが基本です。コンバインドブレーキシステム搭載車でもそれは同じ。コンバインドブレーキシステム、デュアルコンバインドブレーキシステムを搭載した車両は、例えばリアブレーキをペダル、レバーを操作した場合、あるいはフロントブレーキを操作した場合、連動して両輪に制動がかかりますが、リアブレーキを操作した場合はリア主体、フロントブレーキレバーを操作した場合はフロントのブレーキ効果が主体となるよう設定されています。

Q5.コンビブレーキ、デュアルコンバインドブレーキシステムハブレーキの制動距離を短くするものですか?

A.モーターサイクルのブレーキ操作はドライバーの経験、路面状況、速度などで異なります。前後連動ブレーキの特性として、ブレーキング時に前後連動ブレーキ非装着車よりも安定感をだし、ドライバーが安心して操作できるようセッティングされています。制動距離の限界を短縮するものではありませんが、ドライバーの技術、経験によらず、安心感をもって効果的な制動を機動的に引き出しやすくする装置とお考え下さい。

Q6.ABSの利点とは?

A.緊急ブレーキを掛けた場合や、滑りやすい路面でブレーキングをしたとき、走行中にもかかわらずタイヤの回転が止まると、回転することで運転者が意図する方向に進むことができるタイヤはその性能を失ってしまいます。モーターサイクルの場合、バランスを崩し転倒する場合もあり、危険な状況です。
また、車体のバランスが崩れるなどすると、ブレーキング性能そのものの維持も難しくなります。ABSはブレーキング時にタイヤのグリップが限界を超え、回転停止になる事を防ぐ装置で、走行状態に合わせタイヤの回転を確保することで、効率的にブレーキングを行うための装置です。これにより緊急ブレーキング時や、滑りやすい路面での制動時により安心感を高めるも、とお考え下さい。

Q7.ABSは制動距離を短縮するものですか?

A.制動距離は速度や、路面の摩擦力によりグリップを失う限界が決まってきます。ABSは制動距離を短縮する装置ではありません。タイヤが生み出すブレーキング性能を最大限に活用するためのものです。

Q8.ABSはコーナリング中も万能ですか?

A.路面とタイヤの摩擦力がグリップを失う限界を決めています。コーナリング中のタイヤは曲がること、路面をグリップして走ることなど仕事量が多くなっています。ABSが作動するほどのブレーキングをコーナリング中にすることは危険が伴います。減速は直進走行中に車体が直立した状態が最も効率的かつ安全です。

User Reviews

  • コンビブレーキ

    42歳 男

    1996年に初めて「コンビ・ブレーキ」が搭載されたDio(AF35)に始まり、スペイシー100(JF13)、そしてPCX(JF28)と3台乗り継いできました。後ろブレーキをかけると前ブレーキも効くということで、最初は「転倒してしまうのではないか」とカーブの途中で後ろブレーキをかけるのが怖いイメージがありましたが、実際はまったくそんな違和感はありません。あと、例えばクルマが目の前で車線変更してきた時など、とっさの時はまず後ろブレーキを強くかけてしまうクセがあります。そんな時も前にもブレーキがかかっているおかげで、後ろブレーキだけよりも速度を落とすことができるのも安心です。

    28歳 女

    店で教えてもらうまで前後連動という事を認識していませんでした。左手の操作で両方、効くというのはイイですね。友達のスクーターよりしっかりと止まります。砂や砂利の多い道路の端っこを走るときは、安心感があります。機械的なことは解りませんが、そうしたブレーキが着いている、ということに私は満足しています。

    22歳 男

    自転車から乗り換えたので、左のブレーキレバーを使う習慣が抜けないので、店員さんに「左を掛ければ前後に効く」と教えてもらい安心しています。ただ、初めてのスクーターなので、その効果は解りませんでした。友達のHondaではないスクーターに乗ったとき、ブレーキを掛けた時の感じが違うことに気がつきました。自分のスクーターのブレーキが好きです。

    33歳 女

    以前、フロントブレーキをかけ過ぎて転んだ経験があるのでリアブレーキレバーばかり使います。それでもHondaのスクーターは他のブランドよりしっかり減速する感じがします。ブレーキの効き方が上級車のような印象です。これならスピードが出ている時も安心です。石畳の道でもPCXで走るのが恐くありません。ブレーキを使うのがとても楽に感じます。
  • Combined ABS

    35歳 男

    昨年暮れにいきなり降りだした雪の日もFORZAで家まで20キロ、走って帰りました。多分、FORZAでなかったら電車で帰ったでしょう、そのくらい激しく雪が降っていてもFORZAはコンビ・ブレーキなので、左手レバーを握っただけでしっかりと前輪にもブレーキが掛かり、しかもABS付きなので安心感は絶大でした。

    38歳 男

    普通に走っているときにはあまり実感することはないが、雨の日のABSは絶対です。なにも気を使わずにブレーキレバーを握れば最大減速Gを発揮して確実に止まってくれます。しかもSILVER WINGの場合は前後連動のコンビ・ブレーキだから、信じられないくらい安心してブレーキが掛けられ、ABS無しのバイクには乗りたくなくなること間違いなしです。

    42歳 男

    タンデムで砂利道を走っていた時に、散歩中の人が連れていた犬が突然CBR250Rの前に飛び出したものの、前後ブレーキレバーをギュッと握りしめたら何事もなかったかのようのスーっと止まり、悲鳴を上げていたタンデムライダーは恥ずかしそうな顔をしていました。

    48歳 男

    Combined ABSを装備したVFR1200Fに乗っています。Combined Brake Systemは以前乗っていたVFRにも装備されていたので自然に馴染めました。ABSは以前にも助けられた事があるので、絶対に欲しいと思いました。全てのバイクにABSは装備されるべきだと考えています。転倒したバイクが滑っていってなにかにぶつかるリスクを少しでも抑えられますから。

    48歳 男

    ブレーキングで転んだ経験があったので、ABS付きのNC700Xを買いました。修理代を思えば安い出費です。それ以上に効果には驚いています。ダートの道を走ったとき、ブレーキを掛けてもロックすることなくしっかり止まれたので安心しました。
  • Dual Combined ABS

    55歳 男

    時々ワインディング・ロードを、スポーツバイクと同じように走るGold Wingを見かけますが、自分で乗って見るとよく分かります。安心して飛ばせるブレーキを備えていますから。ブレーキの良さはこのバイクの一部だと思います。妻と遠出するとき、リアブレーキを使うだけで減速したり止まったりするので満足しています。
松井“ベン”勉

松井 勉モータージャーナリスト

1963年東京生まれ。日本のモーターサイクル・ジャーナリスト。
1986年から、インタビュー、試乗インプレッション記事、レース参加リポート、などを雑誌、バイク専門誌に寄稿。ラリー経験も豊富でDAKARラリー、SCORE BAJA1000にも参加している。Africa Twin DCTで、アメリカ西海岸、バハ・カリフォルニア半島もAdventure Touring している。

テクノロジーTech Views Vol.2 先進ブレーキ