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どっしり、ゆったりしているそしてコントローラブル

経験の多少を問わず、ライダーは実に小さな、しかし多様な要素から「乗り味」を判断している。
シートやステップから伝わる振動、フレームのしなり、ハンドルから手のひらに伝わる重さ、風の流れ……。
ゆったりとクルージングを楽しめる「コンフォートな乗り味」をつくりだすため、ありとあらゆる部分に、
長年にわたって培われてきたHondaの技術と知見が活かされる。

お尻で動きを感じ取れるように

松井:足つきもいいし、取り回しもいい。ライディングポジションだってすごく快適です。乗り味はどんな感じなんでしょうね。ぱっと座ると、リアショックの付け根あたりに座ることになって、後輪の動きが感じやすそうでもあります。

見崎(CTX1300 開発責任者):「コンフォート」と言うからには、やはり「どっしり」「ゆったり」といった乗り味を目指したいと考えて、各部を作り込んでいきました。

横川(完成車まとめ):スポーツバイクは、ハンドル、ステップ、シートと、ライダーが接する部分でその動きを感じながら走ります。クルーザーの場合、ライディングポジションの特性から、よりシートからのインフォメーションの割合が多くなります。お尻で最大限にバイクの動きを感じられるようにしないといけないですね。フロントを軸にしてクルッと旋回していくのではなく、リアタイヤに乗るような感覚で。

松井:リアショックのアッパーがシートに近いっていうことは、バイクの動きを感じることにはつながる一方で、ごつごつ感とか突き上げを感じるようなことにはなりませんか。
そのあたりは、サスペンションの作動性で対応しているんでしょうか?

横川:もちろん、作動性には徹底的にこだわっています。でも、さらに視野を広げてみると、サスペンションの付け根にあるゴムのブッシュもセッティング材料になるんです。この減衰特性を走り込みによっていくつも試しながら、突き上げを感じにくく、それでいてバイクの動きを感じやすいサスペンションセッティングを試みていきました。シートのつくりも、このサスペンションの動きに同調するような特性にすることで、お尻を包まれているような心地よさを感じていただけると思います。

リアサスペンション

低シート高と、フューエルタンクのシート下への配置を可能にするダブルサスペンション。リアサスペンションは、圧縮側と伸び側の減衰力を、独立したバルブで制御する内部構造を採用するとともに、CTX1300用に新たに開発したサスペンションオイルを用いることで、上質な減衰フィーリングを実現。さらに、取り付け部のブッシュの特性にこだわることで、快適な乗り心地を追求している。

松井:ブッシュまでをセッティングに用いているとなると、たとえばの話、「アフターマーケットのちょっと高価なリプレイス用サスペンションを付ければ、もっともっと乗り心地が良くなるに違いない!」みたいな考えでポンと付け替えたら、すっかりバランスが崩れてしまうわけだ……。

横川:そうです。この乗り心地、この走りを実現するためにものすごく時間をかけました。高次元でバランスされた仕様を構築していくために、個々の部品にわたり、数え切れないテストを実施してきているわけですから。
もちろん、「いくらでもお金をかけていい!」というのなら、サスペンションだけで解決する方法もあるにはあると思います。でも、サスペンションとしての性能だけを見てまっしぐらに突き進んでいくよりも、できあがったバイクに乗っていただいて、「ああ、これはいいサスだ」と思ってもらえさえすれば、みんながハッピーになれると思うんです。そのために、乗り味に関するあらゆる部分を活用して乗り味をつくっていったということですね。

エンジンの重さをリアに乗せる

見崎:フレームでは、とにかく「ゆったりと身体を預けやすい操縦性」というのを追求しました。
同じエンジンを使う「ST1300」では、がっしりとしたアルミのダイヤモンドフレームを使っていましたが、CTX1300では、敢えてしなりのある鉄パイプのクレードルフレームを採用しています。さらに、エンジンの荷重をリアに乗せてどっしりとした乗り味をつくりだすために、エンジンとフレームの締結方法にも一工夫加えました。

松井:鉄パイプのダブルクレードルフレームに、直4エンジンを搭載するのとは、どういうふうに違ってくるんでしょう?

横川:横置きクランクの車両であれば、基本的な考え方は直4でもV4でも大きく変わることはないのですが、CTX1300では縦置きクランクのエンジンを採用しているので、クランクのジャイロ効果による安定感は期待できません。
そこで、ダブルクレードルの骨格とは独立させたサブフレームを追加して、フレームのしなやかさを阻害することなくエンジンの重量を効果的にフレームに受け止めさせているんです。

古瀬(車体設計担当):いつの間にか、自然と「トラクションビーム」と呼ばれるようになりました。感覚的な効果なので、設計的にこの部品の重要性をどう説明できるのかは、悩みました……。

松井:なるほどね。「どこでエンジンの重さを受けるか」というのは、ずいぶんと乗り味に影響を及ぼすんですね。

古瀬:リアに200サイズのタイヤを装着した上で、しっかり重さを乗せることでふらふらしない乗り味になるんです。道具を使うスポーツで、「持ち方」によって力の伝わり方って全然違ってくるというのに、似ているかもしれませんね。

ダブルクレードルフレームとトラクションビーム

「ST1300 Pan European」では高剛性なダイヤモンドフレームにがっしりと締結されていたエンジンを、CTX1300では、コーナリング時におけるしなりの均一性や変形の対称性に重点を置いたダブルクレードルフレームに搭載。エンジンは、その重量をリアに乗せやすくできるよう、「トラクションビーム」という、フレームと別体のパーツでフレームと締結し、どっしりとした安定感のある乗り味をつくりあげている。

空気の力で、コンフォートな乗り味をつくる

中西(動力性能担当):どっしり、ゆったりさせながらも、思い通りに動くバイクをつくろうとすると、空気の流れは本当に重要な要素になってくるんです。たとえば、このカウルの内側なんですけど風を受ける面に穴が空いているんです。見えますか?

松井:本当だ。

中西:この部分は面積も大きいので、走行時にボディに沿って空気が流れることによる影響が出ます。その空気の流れが、車体をバンクさせるときの重さを生む原因になるんです。ここに穴を開けることで、カウルの内圧を下げ、バンクのときの重さを低減できるようにしました。

松井:これは、80km/hとか100km/hとか、このクルマで想定している巡航速度あたりで効果を発揮するもの?

横川:いや、これはもう走り出してすぐにわかるはずです。テストライディングのときには、走り出した瞬間に違和感を覚えて、テストコースに入らず戻ったことだってありますよ。そのくらい、空気の力というのはバイクの運動性能に影響を及ぼすものなんですね。

空力性能に優れたカウル形状

ラジエーターシュラウド前面および内側から入った走行風をシュラウド後方へ排出することでカウリング内部の圧力を下げ、さらにミラーも揚力を抑制する形状とすることで、走行安定性を向上。

松井:パニアケースが標準装備となると、これが運動性能にもたらす影響というのも気になります。一昔前の欧州製ツアラーなんかでも、パニアケースを取り付けると高速道路で操縦性が大きく変化してしまって、かなり気を遣うものもありました。

中西:「走行風がパニアケースにまとわり付くこと」が原因のひとつですね。CTX1300では、整流だけではなく、表面の流速や、車体後部の乱流の補正にも配慮した形にしています。例えば、上から見たときに車体後方に向けてすぼまっていくような曲率であったり、リアフェンダーとパニアケースの間の風の流れであったりを積極的にチューニングすることで、空力的な影響を少なくしています。ここまで作り込むことで、パニアケースがあることのメリットを存分に味わってもらえるのかなと思っています。

パニアケースの空力特性

パニアケースは、前方を斜めに切り落としたような形状とし、側面を構成する曲率に変化を付けることで、パニアケース表面の走行風の流れや後部に発生する乱流の補正を行い、空力特性を向上させている。

横川:そうした空力面もそうですが、ハンドリングや操縦性の仕様を決めるために、様々なテスト、工夫をしています。
開発スタッフもなかなか見たこと無いと思うんですけど、僕がCTX1300をテストコースでめいっぱい飛ばしているときって、たぶん想像以上のクルマの動きをしていると思いますよ。もちろん、スーパースポーツのようなバイクに比べれば限界は高くありません。でも、そういった場面でも、挙動は角が無く、穏やかです。
支持するポイントを増やしたホイールや、締結方法にもこだわって外乱をいなしやすくしたステアリング、しなりを活かしたフレーム、ワンピース構造のスイングアーム……全体が均等に応力を分担することによって、どこか一点に力がかからないようにしたことで、トラクションコントロールのセッティングにも幅を出すことができました。
ここまでこだわったからこそ、ゆったりとした動きを実現しながらも、スポーティにも走れちゃう。
開発をしているときは「あちらを立てればこちらが立たず」といったことの連続でしたけど、我々も欲張りなんで。

松井:そのこだわりが、いちばんHondaらしいところなんですよね!世の中に面白いバイクはたくさんありますけど、それ一台で何から何までこなせるかというと、それはなかなか難しい。
ところが、Hondaのバイクはバランス良く高い操縦性を備えているから、開発者が意図した使い方ではないのは十分理解しているんだけど、例えばCBRで林道行っちゃっても、案外なんとかなるね!みたいな。バランスが悪いバイクだと、絶対にそうは行かないし、まず恐い(笑)。
僕もこれまで何十台というバイクと生活をともにしてきましたけど、「楽しいけど、我慢を強いられるバイク」というのは、長くつきあうのは難しいですよね。

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