二輪車用スマートカードキーシステムの開発

※ 2004年の記事です


双方向通信による電子照合機能とすべてのロック機能を統合させることで、盗難抑止効果と利便性を向上させた、二輪車としては世界初のスマートカードキーシステム
※Honda調べ

概要

Hondaはこれまで、二輪車のセキュリティ性能の向上を目的として、オリジナルキー以外ではエンジンが始動できない電子制御イモビライザー、H・I・S・S(Honda Ignition Security System)や、メインスイッチにシートオープナー機構などを集約し、鍵穴へのいたずらも抑止するシャッター付キーシリンダーなどを開発し、多くの車種に搭載してきた。そして2004年に、盗難抑止効果と利便性向上の両立をめざして、二輪車としては世界初となるスマートカードキーシステムを開発し、大型スクーターに搭載した。

スマートカードキーシステム搭載車「フォルツァ」

双方向通信による認証システムを採用
ハンドルロック機構などのメカニズムとスマートECUをハンドルロックモジュールに一体化

Honda スマートカードキーシステムは、ユーザーが携帯するカードキーと、車体側のハンドルロックモジュールに一体化されたスマートECUとの間で双方向電波通信を行い、IDが認証された場合にのみメインスイッチノブの解錠、シートやコンソールボックスの解錠、燃料噴射ECUの動作が可能となるシステムである。

システム構成

新開発スマートカードキーシステムはハンドルロックモジュール、LFアンテナ、UHFレシーバ、及びユーザが携帯するスマートカードキーなどで構成されている。ハンドルロックモジュール内にメインスイッチノブ・ハンドルロックなどの機構部とスマートECUを一体化したことで、二輪車に適したシンプルなシステム構成を実現した。さらにシート及びコンソールBOXのアクチュエーター、燃料噴射ECU、メーターやウインカーと連動している。

「スマートカードキー」システムレイアウト

「スマートカードキー」システム構成

スマートカードキーシステムの電子照合

乗員がメインスイッチノブ、シートスイッチ、コンソールBOXスイッチのいずれかを押すと、スマートECUが起動し、車両からLFアンテナを介しスマートカードキーにIDをLF(Low Frequency)電波信号として送信する。スマートカードキーがそのLF信号を受信・認証すると、車両にIDをUHF信号として送信する。車両のUHFレシーバーがUHF信号を受信・認証すると押されたスイッチに応じ、解錠動作を行う。

解錠範囲と施錠範囲

解錠範囲は、メインスイッチノブを基点に半径80cm後方180°(高さ70~130cm)以内。メインスイッチノブの施錠範囲は、車両中央を基点に半径250cm以上としている。二輪車における解錠と施錠の使い勝手を考え、両方の操作性を満足させる通信エリアとして設定した。

システムの基本操作

スマートカードキーを携帯した状態でスイッチを押すだけで、メインスイッチノブの解錠、シートやコンソールボックスのオープンが可能。また、メインスイッチノブをONに回すと燃料噴射ECUがスマートカードキーシステムからのIDをもとに照合を行う機能を搭載した。

乗車時や荷物の出し入れ時のキー操作が一切不要になったことで、使いやすさが飛躍的に向上。ウインターグローブ装着時の操作性を考慮したメインスイッチノブ形状やメインスイッチノブ内に設置したトルクリミッター機構、スマートカードキーに設置した通信ON/OFFスイッチなど二輪車にスマートカードキーシステムを搭載する上での配慮を行った。

メインスイッチノブの施錠時、アンサーバックで確認が可能。また解錠中はスピードメーター内のSMART表示灯とメインスイッチノブ外周のブルー照明が点灯し、操作状態の確認ができるとともに美しさを演出している。

メインスイッチ/シートスイッチ/BOXスイッチ

施錠・解錠の操作数は1/2以下 安心を目指したセキュリティ性能

キーを取り出して鍵穴に差し込む必要がないというスマートカードキーシステムのメリットを最大限に活かし、施錠・解錠、そしてエンジン始動までの操作数を大幅に減らせるシステムを構築。すべての施錠・解錠操作において従来に対し操作数1/2以下(当社比)を達成し、利便性を飛躍的に向上させている。さらに盗難に対してもトルクリミッター機構の追加やFI ECUとの連携により、セキュリティー性能を確保している。

乗車時(メインスイッチノブ解錠)

スマートカードキーを携帯して車両に近付きメインスイッチノブを押すと、ハンドルロックモジュール内のスマートECUが起動してスマートカードキーと双方向通信を行う。相互認証するとメインスイッチノブが解錠(回せる状態)になる。解錠するとメータ内に設置されたSMART表示灯とノブ外周のブルー照明が点灯。さらにメインスイッチノブをONに回すとFI-ECUに動作許可IDを送信する。ECUが動作許可IDを認証すると走行可能状態となる。

スマートカードキー

降車時(メインスイッチノブ施錠)

メインスイッチをOFFすると、スマートカードキーと1秒間隔で交信を行い、相互認証が成立しているうちはメインスイッチノブを解錠状態で維持。ユーザーが車両から250cm以上離れると、メインスイッチノブを施錠(回せない状態)し、ウインカーを点滅させてユーザーに知らせる(アンサーバック機能)。ユーザーが車両の近くにいても、20秒以上放置した場合、またはスマートカードキーのスイッチをOFFした場合には、メインスイッチの施錠動作を行う。

アンサーバック

シート解錠時

シートスイッチを押すとスマートECUが起動してスマートカードキーと交信し、相互認証するとシートが開く。

コンソールボックス解錠時

BOXスイッチを押すとスマートECUが起動してスマートカードキーと交信し、相互認証するとコンソールボックスが手前に開く。


メインスイッチノブ トルクリミッター機構

二輪車のメインスイッチは外部からアクセスできる。このため、メインスイッチノブ内にトルクリミッター機構を設置した。過大トルクが印加されるとノブだけが空回りし内部を保護する。

スマートカードキーの通信ON/OFFスイッチ

Hondaスマートカードキーシステムの電波は、ガラスや住宅の壁の影響をほとんど受けることなく伝播が可能である。店鋪や住宅の中にスマートカードキーがある場合でも通信範囲内にあるとユーザー以外の人でもエンジン始動や解錠ができる。このような状況に配慮し、スマートカードキーに通信ON/OFFスイッチを装備しユーザーが通信を任意にOFFできるようにした。

テクノロジースマートカードキーシステム