Hondaは、1980年代からEVの開発に取り組んで以来、カーボンニュートラルへの取り組みのひとつとして、多岐にわたりEV技術を進化させています。
EVに最適なモーター、制御、バッテリーに関する技術はもちろん、新たな移動体験を提供するこれからのEVのあり方についても、Hondaが長年大切にしてきた、人を中心に考えるM・M思想(Man-Maximum、Mecha-Minimum、マン・マキシマム/メカ・ミニマム)や操る喜びの追求のもと、新たなコンセプトの構築・進化に挑み続けています。それらEVに関するHondaの取り組みについて、歴史を含めてご紹介します。

Hondaの電気自動車(EV)開発の歴史

Hondaは、1980年代から“人”を中心に考える開発思想に基づき、代替エネルギーおよび低公害車への対応としてEVの研究開発をスタートさせました。1997年には、専用設計された車体による本格的なEV「Honda EV Plus」を発表。これまでのHonda普遍のクルマづくりの基本であるM・M思想をEVの開発でも継承。使いやすくさまざまな用途に使用できるよう、広々とした4人乗りの居住空間を備えたハッチバックとしました。当時としては画期的であった高性能・長寿命なニッケル水素バッテリーを採用したのも、充電の手間を低減させる人中心の考え方からです。

その後、Honda EV Plusを原点とし、ハイブリッドカーや燃料電池電気自動車の研究開発で培った技術と新たな発想を注ぎ込み、走って楽しく、しかも賢く使えるEVを目指して、2012年、日本と米国で「フィット EV」のリース販売を開始。 人を中心とした開発を行い、「少ないバッテリー容量で、より長く走れること」「モータードライブの走りを、さらに究めること」「充電などにかかる時間のムダをなくすこと」に取り組みました。これらを実現するために、M・M思想によるコンパクトなボディサイズやしっかりとした居住性を持ったフィットの基本パッケージを採用。EVのエネルギー効率の最大化を図り、世界最高の電費性能※1を達成しました。

※1 Honda調べ(2012年8月末時点)

1997 Honda EV Plus

1997 Honda EV Plus

2012 フィット EV

2012 フィット EV

そして2017年、燃料電池車でありながら、M・M思想を徹底しセダンタイプのFCVとして世界で初めて※25人乗りを実現した「CLARITY FUEL CELL」と共通のプラットフォームを使用したEV、「CLARITY ELECTRIC」を開発しました。日々の通勤などで、EVならではのクリーンさと、セダンならではの上質で快適な広い室内空間の両方を求めるお客様向けに新しい価値を提供するモデルです。
2020年には、使う“人”に新しいライフスタイルをもたらし、かつ乗って触って楽しいEVの創造を目指して「Honda e」を開発。人を中心とした思考でEVの本質価値を見つめ、EVの性能を最も引き出せるステージとして都市での使用を想定。コンパクトなバッテリーを搭載し十分な航続距離を実現する、洗練されたデザインの都市型コミューターとしました。また、柔軟な発想で未来を見据え、世界初※3となる5つのスクリーンを水平配置するワイドビジョンインストルメントパネルや、クラウドAIによる音声認識と情報提供を行う「Hondaパーソナルアシスタント」を搭載。建物・家屋に給電するV2H(Vehicle to Home)や、機器などの電源となるV2L(Vehicle to Load)に対応する先進機能を時代に先駆けて採用しました。そして、コンパクトかつ強力なモーターをリアに搭載し後輪を駆動することで、Hondaらしい走りの楽しさも徹底追求しました。

※2 セダンタイプの市販予定車において。 Honda調べ(2016年2月時点)
※3 量産車において。Honda調べ(2020年8月時点)

2017 Clarity Electric

2017 Clarity Electric

2020 Honda e
V2H(Vehicle to Home)イメージ

2020 Honda e V2H(Vehicle to Home)イメージ

HondaのEVのラインアップ(2024年1月時点)

EVの普及を目指す過程において、黎明期ともいえる2020年代後半にかけては、主要市場となる北米、中国、日本など、地域ごとの市場特性に合わせたEVを開発し、それぞれの市場への投入を進めています。
2022年、HondaはグローバルでEVを30機種展開し、2030年までに年間200万台を超える生産に挑む計画を発表。その計画に基づき、2022年に「e:NS1」「e:NP1」を中国で、2023年に「e:Ny1」を欧州で販売開始し、2024年は北米でゼネラルモーターズ(GM)と共同開発したSUVタイプの「PROLOGUE」と「Acura ZDX」「Acura ZDX Type S」、日本で軽商用バンをベースにした「N-VAN e:」を発売予定。その後も積極的な機種展開に取り組み続けます。

HondaのEVのラインアップ(2024年1月時点)

e:Nシリーズ(中国、欧州)

Hondaは2022年、新たなEVシリーズとして、中国向けにe:NS1とe:NP1を、欧州向けには2023年、e:Ny1を発売しました。この一連のモデルは、Hondaのものづくりの独創・情熱のDNAと、最先端の電動化・知能化技術を融合し開発した「e:N」シリーズです。

e:NS1

e:NS1

e:NP1

e:NP1

e:Ny1

e:Ny1

EV専用の「e:N Architecture」を開発

Hondaらしいスポーティーで爽快な走りを実現するために、さまざまな走行シーンにおいて、発進直後からのスムーズで力強い加速と繊細な制御を実現する電動モーター、優れた航続距離を実現する大容量バッテリーや、EV専用のボディー骨格などで構築した「e:N Architecture」を開発。前輪駆動・全輪駆動・後輪駆動に対応する3種のなかから、中国と欧州には、シリーズ第1弾として、前輪駆動の「e:N Architecture F」を採用しました。
このe:NシリーズにおいてもHondaは、人を主役に開発を進め、スペックだけでは語れない独自の価値を提供しています。ステアリングホイールを握った瞬間から、人の感覚にしっくりと馴染み、さまざまなシーンで人の意思に忠実に応え、別次元の気持ちよさ、楽しさを極める独自価値により、EVの楽しさを再定義することを目指しました。

前輪駆動・全輪駆動・後輪駆動に対応する「e:N Architecture」

前輪駆動・全輪駆動・後輪駆動に対応する「e:N Architecture」

第1弾として中国・欧州モデルに採用した前輪駆動の「e:N Architecture F」

第1弾として中国・欧州モデルに採用した前輪駆動の「e:N Architecture F」

先進の「e:N OS」を開発

新たなEVシリーズとして、安全、快適でスマートな移動空間を提供するために、先進のHonda SENSINGやHonda CONNECT、スマートなデジタルコックピットで作り出される総合システム「e:N OS」を開発しました。

PROLOGUE、Acura ZDX(北米)

各地域の市場特性にあわせたEVの投入の一環として、北米におけるEV本格展開の先駆けとなる、Honda PROLOGUE(プロローグ)、Acura初のEVとなるZDX、ZDX Type Sを2024年に発売予定。両モデルとも、ゼネラルモーターズ(GM)の「Ultium(アルティウム)」バッテリーを搭載したGMとの共同開発モデルであり、カーボンニュートラル実現に向けた北米の電動化戦略を力強く加速させるモデルとなります。

Honda プロローグ

Honda プロローグ

Acura ZDX Type S

Acura ZDX Type S

ダイナミクス・航続距離・充電性能

プロローグの電動パワートレーンは、走行性能と航続距離の両立を目指しました。走行性能では、フロントとリアにプロローグのために最適化したサスペンションを採用。Hondaが培ってきたダイナミクス技術によるスポーティーな走りをベースに、ニーズに合わせて、シングルモーター(前輪駆動)とデュアルモーター(全輪駆動)の両仕様を設定し、選択の幅を広げました。特に高出力・高トルクを発生するデュアルモーター仕様は、最高出力約288hp、最大トルク約333lb.-ft.を発生し、よりパワフルな加速と意のままの走りを実現します。
航続距離は、85kWhのバッテリーを搭載し、EPA(米国環境保護庁)が定める基準で300マイル(約482km)以上を目指します。また、DC急速充電では150kW以上の高出力充電にも対応し、約10分※4で航続距離65マイル(約104km)相当の充電ができるなど、外出先での充電を素早く行うことができます。

※4 150kW以上の出力が可能な急速充電器を使用した場合。充電時間は充電機器やバッテリーの状態などによって変化します。

システム構成イメージ(プロローグ)

システム構成イメージ(プロローグ)

N-VAN e:(日本)

日本では、人びとの生活を支え暮らしに欠かせないクルマとして重要な軽自動車があり、EVの普及にあたっては優先して取り組むべき領域だと考えています。なかでも商用車は、環境負荷低減の観点で企業の電動化に対するニーズが非常に高いことから、2024年に軽商用EV 「N-VAN e:」を皮切りに軽EVを展開していきます。
N-VAN e:は、環境への優しさだけではなく、働く、暮らす、遊ぶというすべての時間を快適かつ楽しく豊かにすることを目指した商用・一般ユースの軽バンのEVです。
商用で用いる軽自動車の使い勝手を徹底的に分析し、ユーザーとなる人を中心とした開発により、床下にバッテリーを搭載しながら、ベースとしたN-VANガソリン車の積み降ろししやすい動線や低床大空間の荷室を徹底してこだわり抜いて継承し、パワフルなEVの走りをプラス。さまざまな人の使い勝手を考慮して、1人乗りから、タンデム座席の2人乗り、4人乗りのパッケージを生み出した、Hondaらしい軽バンのEVです。

N-VAN e:

N-VAN e:

EVでも実現したN-VANらしい荷室

EVでも実現したN-VANらしい荷室

写真はガソリンモデルのN-VAN。実際の仕様とは異なります

ニーズにあわせた2つのバッテリー方式を検討

交換式バッテリー「Mobile Power Pack e:」を動力源にした「MEV-VAN Concept」の開発にも取り組んでいます。
2023年11月から集配業務における実用性を検証する実証に着手。EVを導入するうえでは、充電による待機時間や、夜間の一斉充電による電力使用ピークの偏りなどさまざまな課題があります。そこで、日中に太陽光で発電した再生可能エネルギー由来電力を充電した交換式バッテリーを使用することで、充電による待機時間の削減や電力使用ピークの緩和など、より効率的なエネルギーマネジメントの実現を目指します。

実証で使用するMEV-VAN Conceptテスト車両

実証で使用するMEV-VAN Conceptテスト車両

実証で使用する交換式バッテリー
Mobile Power Pack e:

実証で使用する交換式バッテリーMobile Power Pack e:

EVとしての価値拡大を見据えた機能を搭載

N-VAN e:は、商用での使い勝手のよさを実現するために、より短時間で充電が可能な6.0kW出力の普通充電器に対応。充電時間は約5時間と、夜間に充電を行えば翌日はフル充電の状態で使用を開始することができます。また、充電時の使い勝手を考慮し、車両の前部に充電リッドを配置することで、充電・給電時にも充電コードなどを気にせずに、クルマの乗り降りやドアの開閉をしたり、複数台を並べて駐車しながらの前方向からの充電を可能としました。
さらに、使い勝手を考慮した充電口は給電口としても使用可能。AC車外給電用コネクターの「Honda Power Supply Connector」※5 の使用により、N-VAN e:のバッテリーで合計1500Wまでの電化製品が使用でき、レジャーなどに加え、停電・災害時にも簡単に電気を取り出すことができます。また、可搬型外部給電器「Power Exporter e: 6000」、「Power Exporter 9000」を使用することでそれぞれ最大6kVA、9kVAの高出力給電が可能となり、災害時などに出力の高い冷蔵庫や冷暖房器具など、複数の電化製品の同時使用を可能とします。

※5 ディーラーオプション

6.0kW出力の普通充電器に対応

6.0kW出力の普通充電器に対応

Honda Power Supply Connector

Honda Power Supply Connector

Power Exporter e: 6000

Power Exporter e: 6000

Power Exporter 9000

Power Exporter 9000

新たなグローバルEV、Honda 0シリーズ

2020年代後半以降のEV普及期においてHondaは、グローバル視点でベストなEVの展開を目指します。その1つとして、EVのハードウェアとソフトウェアの各プラットフォームを組み合わせた、EV向けのプラットフォーム「Honda e:アーキテクチャー」の展開を2026年から着手します。これは、バッテリーを始めとするEVハードウェアプラットフォームと、クルマの機能を後から進化させるために必要なOTA(Over the Air:インターネット経由で自動車のソフトウエアを更新する技術)の基盤となる次世代電子プラットフォームを組み合わせたものです。ハードとソフトを融合させることで、商品を販売した後も、商品を通じてお客様とつながり、さまざまなサービスや価値を提供することが可能となります。

Honda e:アーキテクチャー

Honda e:アーキテクチャー

原点に返りHondaらしさをあらためて追求したHonda 0シリーズ

Honda 0シリーズは、自動車の変革期にあらためてHondaのものづくりの原点に立ち返り、次世代のHondaにおける新たな起点とすべく、ゼロから新たなEVを生み出し、交通事故死者ゼロ・環境負荷ゼロの達成を目指す決意を表明する、これまでにない価値を持つHonda独自のグローバルEVシリーズの名称です。
Hondaのものづくりの原点とは、人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、クルマのスペース効率を高める、M・M思想と、自由な移動の喜びを味わうためにクルマと一体になる爽快感、自らハンドルを握りクルマとの一体感を大切にする操る喜びです。これからのグローバルEVに、Hondaらしいクルマづくりのスピリットを注ぎ込むことで、他にはない独創的な喜びを提供するEVを創造していきます。

コンセプトモデル「SALOON」

コンセプトモデル「SALOON」

コンセプトモデル「SPACE-HUB」

コンセプトモデル「SPACE-HUB」

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テクノロジーHondaの電気自動車(EV)