ノイズリデューシングホイール

タイヤ内部で発生する不快な共鳴音を
自ら打ち消す「ノイズリデューシングホイール」

高速道路をドライブしていると「パコーン、パコーン」という音が耳に障ることがあります。これは道路のつなぎ目などを乗り越える際にタイヤ内部で起こる共鳴が原因。快適な移動を追求する自動車メーカーにとって頭が痛い問題でした。ノイズリデューシングホイールは、中空構造のレゾネータ(消音装置)によって、こうした不快な共鳴音を抑制。静かで快適なドライブを提供します。

共鳴音には共鳴音で対抗する
画期的な発想で不快なノイズを大幅に低減

タイヤ内部で発生するノイズは「気柱共鳴」という現象によるもの。バスケットボールやバレーボールを床にはずませると「ポーン」「パーン」といった音が響いて聞こえますが、それと同じです。クルマの場合、タイヤが発する気柱共鳴音やそれに伴う振動が、ホイールからサスペンションを通じて室内に進入し、不快なノイズとなって乗員の耳に届いてしまうのです。

ロードノイズを悪化させる気柱共鳴現象

ロードノイズを悪化させる気柱共鳴現象

不快なノイズを抑えたい。そのために着目したのは、バスケットボールとバレーボールとでは音の高さが違うという特性でした。気柱共鳴音は、空気を密閉する容器の形状や容積によって固有の周波数を持ちます。つまり、タイヤのサイズがわかっていれば発生する気柱共鳴音の周波数が特定できます。ならば、それを打ち消すような音を発生させれば気柱共鳴音を抑えることができるはずです。

共鳴現象を使ってノイズを打ち消す

共鳴現象を使ってノイズを打ち消す

そこでHondaは「ヘルムホルツ共鳴」を利用できないかと考えました。空き瓶に息を吹き込むと「ポー、ポー」という笛のような音を発する現象で、瓶の形状や内部の空気量で音の高さが決まります。

ヘルムホルツ共鳴

Hondaはタイヤが発生する気柱共鳴音と同じ周波数の音が出せるよう、形状を工夫したレゾネータをホイールに取り巻くように装着しました。

レゾネータの各名称

レゾネータの各名称

気柱共鳴音が発生するとレゾネータが同じ周波数の音で共鳴し、連通孔と呼ばれる空気の出入り口付近で空気が干渉による振動を起こします。これによって気柱共鳴音を消します。

レゾネータの効果

こうして開発したノイズリデューシングホイールは、走行中 特に気になる220Hz前後のノイズを大幅に低減し、静かで快適な室内を実現しました。

レゾネータによるタイヤ内音圧消音効果(CAE計算)図

レゾネータによるタイヤ内音圧消音効果(CAE計算)図

実走タイヤ気柱共鳴音スペクトル消音効果グラフ
(ドライバーの耳元で計測)

実走タイヤ気柱共鳴音スペクトル消音効果グラフ(ドライバーの耳元で計測)

独自の軽量構造をさらに進化させ
静粛性のみならず燃費や走行性能の向上にも貢献

ノイズリデューシングホイールのレゾネータは、軽量な樹脂製であるうえ、考え抜かれた独自の構造によってボルトなどの締結部品を用いずにホイールリムに嵌合されています。しかも、遠心力によって嵌合力が強まるという革新的な構造。高速走行時、1,500Gにも達する遠心力を受けながらも、より強く嵌合し、変形することもありません。

これまで気柱共鳴音の対策として用いられてきた制振材やダイナミックダンパーなどを削減することができ車体の軽量化に貢献。また、走行性能に重要なバネ下重量の抑制にも寄与します。

ノイズリデューシングホイールは、静粛性のみならず燃費や走行性能の向上にも効果を発揮する画期的な技術なのです。

レゾネータとホイールの嵌合

レゾネータとホイールの嵌合

Hondaは2010年に世界で初めてノイズリデューシングホイールを実用化して以来、たゆまず研究を重ねてきました。その結果、第二世代のノイズリデューシングホイールのレゾネータは、第一世代に比べおよそ半分の重量で同等の効果が得られるまでに進化させています。Hondaはこの成果に満足することなく、静かで快適、そして燃費と走りに優れたクルマの創造に向け研究を続けていきます。

第一世代デバイス(レゾネータ4個体)

第一世代

第二世代デバイス(レゾネータ1個体)

第二世代

各種技術賞受賞履歴

第19回 日本音響学会 技術開発賞(2011年 5月)
受賞テーマ:「タイヤ空洞共鳴ノイズ消音用レゾネーターを内蔵した乗用車用消音ロードホイールの実用化」

第48回 市村産業賞 貢献賞(2016年 4月)
受賞テーマ:「タイヤ気柱共鳴音ホイール装着デバイスの実用化と技術進化」

第14回 新機械振興賞 機械振興協会会長賞(2017年 2月)
受賞テーマ:「タイヤ気柱共鳴音低減デバイスの技術進化」

テクノロジーノイズリデューシングホイール