世界初のカーナビ開発から震災時のビッグデータ活用へと進化を続ける、インターナビのドライブ情報サービス。

「インターナビ」情報サービスの歴史

台風やゲリラ豪雨、路面の凍結や吹雪による視界不良、さらには大きな地震など、クルマを運転中に遭遇しかねない危険な場面。Hondaは、こうした状況をドライバーに正確に、あるいは事前に知らせ注意を与えることで、少しでも多くの乗員を危険から守りたいと考えています。
Hondaでは現在、独自の双方向通信型カーナビゲーション「インターナビ」において、インターナビ会員に対して渋滞情報やその回避ルートのみならず、目的地の気象情報とともに、天候急変の予測情報、大きな地震や津波の発生情報などをリアルタイムで提供しています。また、クルマが震度5以上の地震に遭遇した場合にクルマの位置を家族などにメールで知らせる位置情報付き安否連絡などサービスを幅広く展開。さらに大規模災害発生時には被災地の通行可能と予測される道路が把握できる情報として、インターナビ装着車が実際に通行した走行データを地図上で示した「通行実績情報マップ」を公開するなど、気象や自然災害による道路交通環境の変化をドライバーに伝えることで危険の回避や対処を促す、「防災・減災支援情報サービス」に積極的に取り組んでいます。
Hondaはなぜこうした防災・減災につながる情報サービスに力を入れているのか。
世界初のカーナビゲーションシステムの開発から始まり、常に前例のないものにチャレンジを続けてきた進化と、そこに注がれた想いを、前・後編に分けてお届けします。まず前編では、インターナビのサービス開発やシステム構築を手掛ける、グローバルテレマティクス部(元インターナビ事業室)のスタッフに話を聞きました。


ないものはつくる。世界初のカーナビ誕生。

インターナビ事業を初期から牽引してきた今井武

インターナビ事業を初期から牽引してきた今井武

世界初のカーナビゲーションシステムホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ。1981年のアコードに搭載された。

世界初のカーナビゲーションシステム
ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ。
1981年のアコードに搭載された。

ナビのブラウン管の前にセットして使用された地図フィルム。

ナビのブラウン管の前にセットして使用された
地図フィルム。

目的地を入力すればそこに行ってくれる「自動運転車」を最終目標にしよう。
1970年代半ば、Hondaの電装品研究室では将来的な基礎研究を進めるなかで、クルマの自動化、電子化に着目。カーナビゲーションという呼び名もない当時、その機能は「コース誘導」と名付けられ、クルーズコントロールやABSとともに開発が始まった。
自車の位置を判定する装置に採用したのはジャイロセンサー。航空機や船舶では使われていたが、大型・高価格でクルマ用にはならない。開発者たちは思考錯誤とテストに継ぐテストの末、構造がシンプルなガスレートジャイロによる慣性航法を用いたシステムを開発。1981年、ついに「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」を実現した。世界初のカーナビゲーションシステムの誕生である。
しかしながらジャイロセンサーの精度はまだ甘く、ドライバーは自車位置の修正を強いられ、しかもシート状の地図を自車位置に応じて差し替える必要があった。
その後Hondaは、ジャイロセンサーに補正機能を加えたマップマッチング(後に世界共通語となる)技術を生み出すとともに、全国を網羅するデジタルマップを独自につくり上げた「デジタルマップナビ」を1990年レジェンドに搭載。さらにGPS(全地球測位システム)航法を利用した、より高精度なものへと進化していく。
1980年代半ばからナビゲーション開発に携わり、インターナビ事業を初期から牽引し現在に至るまで指揮を執る今井 武(いまい たけし=グローバルテレマティクス部 役員待遇参事/自動車技術会 フェロー)は当時を振り返る。
「まだ民間用GPS衛星が数機しか打ち上げられておらず、いかに速く電波を受信するかに苦労しましたね」
衛星が少ないため信号をキャッチし自車位置を割り出すまでに時間を要するのだ。
「ドライバーがエンジンをかけて早々に出発すると電波を受信する頃には自車位置が大きくズレてしまう。そのため、衛星が地球上のいつどこにあるかをインプットした時計を組み込むことで、何時でもすぐにピンポイントで衛星を探し当てるようにしました」
こうしてHondaは、GPS航法によって位置を把握しジャイロケータの自立航法によって補正するといった、現在でも主流となっているカーナビ車載機の基礎技術をいち早く確立したのである。

道は自分たちで拓く。カーナビと通信技術の融合。

 「主要道リアルタイム地図更新」 更新前 「主要道リアルタイム地図更新」 更新後

「主要道リアルタイム地図更新」は、携帯電話通信により、目的地までのルート周辺に新規に開通した主要道路を、数分で地図データに反映することが可能。開通後すぐに新しい道路データを使った最適なルート誘導を可能にした。
*写真は2007年当時のナビ画面

きっかけはお客様からの声だった。
地図が古い、道が出来ているのに地図に載っていないため遠回りをさせられた、といった意見が多く寄せられたのだ。
Hondaのカーナビは1990年代半ばから経路誘導機能を付加させていたが、実際の道路整備にナビの地図情報が追いついていかない。そのころはDVDの地図データを採用しており、新たに販売される車両には常に最新の地図が載っていたものの、すでに利用されているお客様への更新タイミングは車検時にDVDを差し替えることになっていた。
地図を常に最新のものにしていくには、通信を利用して更新するしかない。しかし当時は通信方法がアナログからデジタルに移行したばかりであり、地図のような大容量データを配信するには高速の通信環境と大容量の記憶媒体が必要であった。
それでもHondaは、将来を見据えたシステムとして、1997年、インターネット通信方式を採用した「インターナビシステム」を構築。インターナビのホームページを立ち上げドライブに役立つコンテンツを配信するなど、インターネットの普及とともにお客様との双方向コミュニケーションが可能となった。
その後、通信インフラがようやく整い、ハードディスクを用いたナビシステムへと進化した2007年、道路開通とほぼ同時に地図更新が完了する世界初となるシステム、「主要道リアルタイム地図更新」をついに実現した。
世にないものは自分たちでつくる。道がなければ自分たちで切り拓く。このスピリットは、その後のナビゲーションにまつわるすべての事例に貫かれていく。