食べ物の油ジミ、油汚れに強い新シート素材
ファブテクト

撥水性に加え、撥油性を備えた
新シート素材「ファブテクト

クルマの室内でこぼした食べ物や飲み物はシートに付着し、汚れや臭いの原因になります。
こぼしても簡単に拭き取ることができれば、汚れや臭いを防ぐことができるのに──。

これまでも、水を弾く撥水性を備えたシート表皮はありましたが、
それだけでは汚れや臭いを防ぐには不十分です。

汚れを防ぐために、布地への油の染み込みを防ぎたい。

そこで、水を弾くだけでなく、
油を弾いて飲食物を拭き取りやすくする、
新しいシート表皮、ファブテクト(撥水・撥油シート)を開発しました。

従来のシート素材
(ファブテクト未加工)

従来のシート素材(ファブテクト未加工)

食べ物などの油ジミがついてしまった従来のシート素材

ファブテクト

ファブテクト

食べ物などの油ジミがつきにくい新シート素材
「ファブテクト」

水や油を弾いて通しにくいフッ素樹脂加工

ファブテクト(撥水・撥油シート)は、シート表皮に加工したフッ素樹脂の表面張力によって油を弾きます。それにより、シートに接する水や油などの液体の接地面積も小さくなり、液体が玉状になることで油を弾くのです。ところが、撥油性だけを考えてシート表皮にフッ素樹脂加工を施すと、色落ちの度合いや傷つきにくさなどの自動車用シートに求められる基本性能を保証できなくなります。
そこで、特性が異なる3種類のフッ素樹脂を最適に配合することで、油を弾く性能と自動車用シートに求められる基本性能を両立しました。

油が染み込まずに弾いている様子

油が染み込まずに弾いている様子

Hondaの独自技術
3種類のフッ素樹脂を最適配合することで、
撥油性と自動車用シートに求められる基本性能を両立

クルマの使用環境を考えたファブテクトの機能性

01 臭いの原因が残りにくい構造

シート表皮の下にあるウレタン層まで飲食物の油が染み込んでしまうと、嫌な臭いの原因につながります。臭いの発生を防ぐには、飲食物に含まれる油をウレタン層まで染み込ませないことが重要です。そこで、ファブテクトはシート表皮の裏にあるバックコート層にもフッ素樹脂加工を施し、撥水・撥油性を持たせ、油を染み込みにくくしています。

シート断面図(イメージ)

02 暑い車内でも持続する撥油性

油を弾く撥油性にとって高い温度は大敵です。なぜなら、油は高温になるほど布に染み込みやすくなる性質に変化するからです。夏の炎天下では、車内の温度は80℃に達することもあります。こうした厳しい環境でも撥油性を確保するため、夏場の1週間に相当する温度環境を試験装置で再現し、油を弾く性能を確保しました。期間を1週間と設定したのは、一般的にクルマを掃除する間隔を考えてのことです。

炎天下の夏の車内温度は80℃に達することも

高温テスト後のマヨネーズの様子

03 シートが摩耗しても撥油性は持続

クルマに乗り降りするたびに、シートの表皮と衣服はこすれます。1日に2回乗り降りすると、1年間で1460回、3年間で4380回シートに触れることになり、その分シート表皮は摩耗して撥油性は落ちてしまいます。今回の開発にあたり、たとえシート表皮が摩耗しても油が表皮の下に染み込まないように、3年間使用した際の乗り降りを想定した試験を行い、撥油性が持続する性能を目指しました。

クルマの乗り降りの際もシートは磨耗

クルマの乗り降りの際もシートは磨耗

油が後ろまでしみにくい(※摩耗試験後のシート)

油が後ろまでしみにくい(※摩耗試験後のシート)

Hondaのこだわり
「油汚れを象徴する食べ物としてイメージしたのは、
テリヤキハンバーガーでした」

  • 「お客様が本当に困っていることは何だろう?」という疑問が開発の出発点

    シートに関する調査をしたところ、お客様は汚れに困っていることがわかりました。汚れの原因は食べ物や飲み物が多いこともわかりましたが、従来のシートでは水や油が染み込んでしまい、うまく拭き取ることが困難です。そこで、汚れが簡単に拭き取りやすいシート表皮を開発し、お客様に喜んでもらいたいと考えました。


  • テリヤキソースにマヨネーズが添えられたハンバーガーを想定して開発

    がんこな油汚れからイメージしたのは、テリヤキソースにマヨネーズが添えられたハンバーガーでした。これをシートにこぼし、夏の炎天下に1週間放置した後でも、汚れを拭き取りやすくお手入れしやすい。この厳しい目標を達成するために新しい材料と製造方法を開発し、水だけでなく油も弾くファブテクト(撥水・撥油シート)の製品化にこぎつけました。


  • 新技術の開発に立ちはだかった大きな壁

    自動車のシートは一定の難燃性を確保することが法規で定められています。困ったことに、油汚れを拭き取りやすくするためにシート表皮にフッ素樹脂加工を施すと、難燃性が損なわれてしまうことがわかったのです。この問題に対しては、表皮裏のバックコート層に難燃剤とフッ素樹脂加工の両方を施すHonda独自の技術を開発し、解決しました。


  • 目指したのは自動車ならではの厳しい環境にも耐えられる「タフネス」

    自動車シートは家庭で使うソファのようにカバーだけを取り外して洗うことができません。また、一般的に家の中が80℃になることはありませんが、日差しの強い日の車内は80℃になることがあります。座席に乗り降りするたびに、シートと衣服はこすれて摩耗していきます。開発にあたっては、自動車用シートならではの厳しい条件や過酷な環境に耐えられる「タフネス」にこだわりました。


  • 根気強い開発で、自動車用シートの基本機能と両立

    シート表皮にフッ素樹脂加工を施すうえで、自動車用シートとしての基本性能が保証できなくなる課題を解決するために、約200種類のテストの末、3種類のフッ素樹脂を最適に配合する技術にたどり着きました。
    「お客様に喜んでもらいたい」という強い思いをモチベーションとして、開発着手から実用化までに5年以上を費やしました。
    今まで食べ物によるシート汚れを気にしていたお客様にぜひ「ファブテクト」を使っていただきたいです。

ご使用に際して、知っておいていただきたいこと

  • ファブテクトの適用範囲は車種・グレードにより異なります。詳しくはオーナーズマニュアルを御確認ください。

  • 完全防水・防油ではありませんので、水分汚れ、油分汚れはできるだけ早く取り除いてください。

  • 汚れたときは乾いた布でこすらずに軽く拭き取ってください。(強く押し込まないでください)

  • ひどい汚れのときは水で湿らせた布で軽くたたきながら拭き取ってください。

  • 拭き取り時に界面活性剤(せっけんなど)を使用すると撥水・撥油効果が低減します。

  • 撥油性をHondaでは食物油(サラダ油やマヨネーズ等)でテストしています。
    油の種類や量によってはしみが残る場合があります。

テクノロジー撥水・撥油シート ファブテクト