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軽量化への新たなステップ

もっと軽くて、もっと剛性の高いフロントサブフレームをつくりたい…。 理想を追い求めるHondaエンジニアは、いくつもの困難を乗り越え、ゴールを目指しました。 文 / 生方 聡 (モータージャーナリスト)

エンジニア・トーク マンガ版

人も羨むフロントサブフレーム

——エンジンやフロントサスペンション、ステアリングなどを搭載し、ボディに組み付けるための骨格がフロントサブフレームです。普通は鉄(鋼板)でつくられていますが、Hondaが新たに開発したハイブリッド構造フロントサブフレームは鉄とアルミでできています。目的は、車両の軽量化ですか?

「軽量化とサブフレームの剛性向上、そして、製造エネルギーの低減が目的です。実際、以前のものに比べて、約6kg、25%の軽量化ができましたし、サスペンションの取付点剛性は20%も向上しています。さらに、サブフレームをつくるのに必要な電力が半減できました」。

——環境性能を高めながら、走る楽しさもアップさせるとは、なんともHondaらしい新技術ですね! この発想はどこから?

「HondaではアルミだけでつくったサブフレームをFCXクラリティやフィットEVに採用しています。実は、その技術を2008年のアコードに搭載しようと考えていました」。

——でも、実際は鉄のサブフレームにアルミパーツをボルト止めする構造でしたね…。

「アコードといえばHondaにとってはビジネスの柱といえるクルマですから、コストの壁がなかなか越えられず、フルアルミのサブフレームは諦めざるを得ませんでした。2008年のアコードのやり方でも、軽量化を図ることができましたが、もっと高いレベルを目指していた私の、そのときの悔しさといったら…」。

——その気持ち、わかります。そこで今回、リベンジというわけですか!

「軽量化できて、性能を上げることができて、コストの問題も解決できるサブフレームをつくるんだ、という思いから、新しいアコード用にアルミと鉄を接合したサブフレームを使おうと考えたんです」。

——以前のものもアルミを使っていましたが、どうして25%も軽量化できるんですか?

「軽くなったのは、単に鉄をアルミに置き換えたからではなく、実は構造が大きく異なるからです。見てのとおり、アルミの部分はひとつの部品でできています。これは以前なら鋼板を含めて40ほどの部品で構成されていたところです。その多くの部品を1部品に置き換えてまったく違う構造にしたというのがカギですね。ちなみに、これほど大きなアルミパーツをダイキャストでつくるというのは、世の中にあまり例がなく、これも私たちの自慢のひとつです」。

——なるほど、サブフレームの後半を1個のアルミパーツでつくったのがポイントですか。そうなると、課題は、どうやって鉄とアルミをくっつけるか、ということになりますね。

ヒントは失敗の中にあった!

——ハイブリッド構造フロントサブフレームでは、鉄とアルミを前回のようなボルト止めではなく、新しい技術でくっつけています。これが見どころというわけですが、そもそも鉄とアルミはくっつくものなんですか?

「以前は難しいといわれていましたが、ここ10年ほどのあいだにできるという考えが広まってきました、とはいっても、それは研究室のレベルでできるという意味で、実用化とはまた別の話」。

——ですよね? しかも、鉄とアルミが触れると錆びるんですよね?

「そのとおりで、少しでも水が入るとそこから錆びてしまいます。だから、鉄とアルミをくっつけた部品をシャシーに使うことは“禁じ手”でした」。

——にもかかわらず、禁じ手を使ってしまったわけですか!それだけの自信はどこから?

「実は、鉄とアルミがくっついて取れなくなったことがあるんです…」。

——どういうことですか?

「私たちは、アルミどうしを接合する方法として、10年以上前からFSW(摩擦攪拌接合)の研究をしてきました。FSWは、金属板をあわせて、その上から大きな力をかけながら回転ツールを移動させて、金属どうしをくっつける方法です。当初はエンジニアふたりで、現場の隅っこで細々と研究していました。そのころはFSWの研究が始まったばかりで、私たちもほとんど経験がないまま研究を進めていましたので、やるたびにいろんなことが起こり、それが貴重な経験として、蓄積されていったんです」。

——手探りの時代ですね。

「日陰の時代です(笑) それはいいとして、接合のときに1トン近い力をかけるので、アルミ板が動かないように鉄板で固定していたんですが、あるときその鉄板とアルミがくっついて取れなくなった。剥がそうとしてもアルミが千切れてしまうほどしっかりとね。作業としては大失敗。こうすると、鉄とアルミがくっついちゃうんだなと反省しましたが…」。

——それが貴重な経験になったわけですか。まさに“失敗は成功のもと”!