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クルマからのメッセージ

アクセルペダルを通じた対話が、ドライバーとクルマとの関係に新しい可能性を切りひらく。 文 / 生方 聡 (モータージャーナリスト)

エンジニア・トーク マンガ版

絶妙なバランス

——これがリアクティブフォースペダルですか?

「ご覧いただくとわかりますが、下の部分がアクセルペダルです。そして、上についているのがリアクティブフォースペダルの主要部です。この中にモーターやギヤが入っていて、アクセルペダルに力を加えています」。

——下のアクセルペダルは、普通のクルマと同じなんですか?

「リアクティブフォースペダルにつながるレバーを除けば、ごく普通のアクセルペダルですよ。なので、どのクルマにも比較的簡単に搭載できるというメリットがあります」。

——アクセルペダルとリアクティブフォースペダルを分けたというのがミソですか?

「最初は、このような汎用のモーターをアクセルペダルに無理矢理くっつけて、テストしてましたよ。そして、単体で確認するときにつかったのがこの“おかもち”です」。

——ずいぶんと活躍したみたいですね(笑)

「みんなで何度も踏みましたからね」。

——それにしても、使っているモーターが、最終的にはとても小さくなっていますね。

「大きくて強力なモーターのほうがつくりやすいんですが、コストやスペースを考えてどうしても小さいモーターを使いたかったんです。また、モーターを新規につくると高くなりますので、何か使えるものがないかと考えました」。

——ということは、これはもともと別の用途のものなんですか?

「実は前述のDBWのモーターです。システムをつくるにあたっては、当然モーターの耐久性が求められます。DBWのモーターなら、アクセルペダルを踏むたびに動いても大丈夫なぐらいの耐久性があるので採用しました」。

——でも、小型のモーターを選んで困ることはないんですか?

「大型のモーターに比べて、出せる反力が小さくなりますが、そこは力の出し方を工夫して乗り越えました」。

——“壁”にあたったとき、しっかりとした反力を感じましたよ。

「力の出しはじめに、ごく短時間、反力を強くしてやるんです。そうすると、壁があるように錯覚する。私たちはこれを“ひげ”と呼んでいます。最初だけピッと立てる。苦労して見出した方法です。こういった力の出し方の工夫で、小さなモーターでも十分な性能を発揮しています」。

みんなで困難を乗り越えた

——開発にあたり課題となったのはどんなことですか?

「わかりやすさと自然さの両立ですね。アクセルペダルを通じて、クルマからの情報をさりげなく伝えたほうがいいのか。それとも、はっきりわかったほうがいいのか。さりげなくしすぎると、『えっ、ついてたの?』ということになりますし、一方、はっきりわかるようにしすぎると、煩わしく思われてしまいます。ドライバーが主体となってクルマを操るのがHondaの考え方ですから、運転の楽しさはきっちりと確保したつもりです」。

——最終的にはどんな味付けに?

「クルマの状態をしっかり伝えたいと思い、チームとしては多くの人がわかりやすいほうを目指しました。ただ、運転が上手なドライバーには、玄人受けする自然なほうも残したかった。結局わかりやすいものと自然なフィーリングのものの2パターンを用意しています」。

——ところで、その長いチューブは何ですか?

「これは世界一シンプルな荷重計です(笑)。量産車の開発では電気的なノイズとか電波などを与えても誤作動しないことを確認しないといけません。その際、電気を使わずに、リアクティブフォースペダルの微妙な反力をチェックする必要がありました」。

——先に付いているのはスポイトのゴムですか?

「そのとおりです。それにホームセンターでも売っているチューブをつないでいます。力って目に見えませんよね。ふつうはセンサーを使いますが、センサーを使えない状況でどうするか。ワイヤーで引っ張るという手もありますが、微少な変化がわかりにくい。バネばかりでは動きませんでした。スポイトといってもゴムの部分はいくつかの種類があり、自宅のお風呂場でいろいろ試してみたところ、これがベストでした」。

——そこまでしたんですか! 色が付いていますが何が入っているんですか?

「最初はただの水を入れていたんですが、『透明な水だとわかりにくい』といわれたので、たまたま持っていたインスタントコーヒーで色を着けました」。

——あまりにおかしくて、涙が出てきました(笑) そこまでしてつくったリアクティブフォースペダルですから、たくさんのお客さまに使ってもらいたいですよね!

「とにかく一度試してください。アクセルペダルをふわっと踏んでいくと、カツっとくると思います。そのカツっがちょうどいいところです。これで運転に慣れると、優しい運転ができるようになります。助手席に乗っても違いがわかるはずです」。

—運転が上手ねといわれるかもしれませんね(笑)

「そのときは黙ってましょう(笑) ぜひデートでお試しください。冗談はともかく、私たちはこのリアクティブフォースペダルをひとつのインフラ整備みたいなものだと考えています。今回のヴェゼルでは燃費や雪道を走るときなどに価値をもたらしています。今後、このインフラで新しい価値を提供したいと考えていますので、第2弾、第3弾にもご期待ください」。