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M・M思想はひとつじゃない! エンジニアひとりひとりにそれぞれの M・M思想。 しかし、目指すところは皆同じです。

M・M思想
すべてのHonda車に"標準装備"されるM・M思想。 今回はFIT SHUTTLEのインテリアを担当したデザイナーと 設計エンジニアにインタビュー。 M・M思想は、Hondaを突き動かすエネルギー源でもありました。 文 / 生方 聡 (モータージャーナリスト)


インタビュー写真

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撮影協力:ブリヂストンサイクル株式会社

気づいたら頭の中がM・Mになっていました

人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に…。マン・マキシマム/メカ・ミニマム、すなわち、M・M思想こそ、Hondaのクルマづくりの基本コンセプトです。Hondaのエンジニアは、この考え方をどうやって学ぶのでしょうか?

エンジニアは、「入社すると、企業のフィロソフィーや"人間尊重"の考え方、そしてM・M思想といった話を聞かされますが、具体的にM・M思想がどんなものなのかと、教えてもらう機会はありません。でも、社内にはM・M思想が根付いているので、みんなと一緒に仕事をしていくうちに、何をやるにしても、効率よく、できるだけ広く、できるかぎり小さく、という考えが、自然に身についていく。気づいたら頭の中がM・Mになっていました」。

一方、デザイナーも、「スポーツカーでもミニバンでも軽自動車でも、デザインの基本がM・M思想という話は聞かされますが、M・M思想を教えてもらったという記憶はありません。何かをデザインして評価されるときに、M・M思想に基づく指摘があるんですよ。『どうしてこんな無駄な空間があるのか?』とか、『人(のエリア)を侵食してまで、この部分は必要なのか?』といわれて、だんだんとすり込まれていくものだと私は思っています」。

想像と違い、案外古風なやり方なんですね。すると、ひとりひとりの受け取り方が微妙に違うこともあるのでは?

「思想ってそういうものですよね。教育によって理解させることではない。文化とか思想は、自然にみんなが同じ方向を向くことで、はじめて出来上がっていくものですよ。だから、全員が同じ解釈でなくてもいいんです」。

そんな柔軟さを持つM・M思想が、FIT SHUTTLEにはどう活かされているのか、興味津々です。

315mmを料理する

M・M思想といえば、すぐに思い浮かぶのがスモールカーのFIT。前席の下に燃料タンクを配置する「センタータンクレイアウト」を採用したFITは、スモールカーとしては驚くほど広い室内空間を手に入れました。そのFITをベースに、ワンランク上のコンパクトカーを目指したのがFIT SHUTTLEです。インテリア担当の開発陣は、どんなクルマをつくりたかったのでしょうか?

「私たちに与えられたのは、うしろの315mmです。315mmという数字はさほど大きくないように思えるでしょうが、実際はクルマの世界観が変わるほどのスペースです。もともとFITのパッケージは優秀で、自転車だって横にすれば載せられるくらい何でもできてしまいます。それを315mm延ばして何をするかと考えたとき、ただ延ばしただけの空間ではかえって困ってしまうんです」。

確かに広すぎて困ることはよくありますよね。私自身、ステーションワゴンを所有した経験がありますから理解できます。大きな荷物を積むときはよくても、ふだん荷物が少ないときは、載せた物が荷室で動いてしまうのは困ります。

「広い空間をただどうぞ、と提案されても、お客さまは毎日段ボール箱を積んでいるわけではありませんから困ってしまう。実際、自分の生活を考えてみても、ただ広い空間があっても使えないし、反対にコンビニで買い物したときに荷物が引っかけられたほうが便利ですね。でも、いざというとき、たくさん荷物が収まるとか、スマートに自転車が入れられたりするとうれしい。そんな発想から、パッケージの全体を最大限に利用しながら、細かい収納にも対応しようと思いました」。

真剣だから時には喧嘩も

ガソリンエンジンモデル車では、広大なアンダーフロアが自慢です。ここを仕切るというのが手っ取り早いやり方だと思いますが、FIT SHUTTLEではあえてそうしませんでしたね?

「設計エンジニアの立場では、アンダーフロアを3分割して、それぞれを独立した収納スペースにしようと考えていました。ところが、デザイナーは荷室とアンダーフロアを最大に使いたいといいます。まったく違う方向でした。『そんなこといっても、大きな穴をふさぐフロアボードは荷重に耐えられないよ』と最初は喧嘩腰でしたね。でもデザイナーは『どうしても自転車を載せたい』『空間すべてを使いたい』と願い、『それが価値なんだ』と主張します」。

その結果、いきなり険悪なムードになったとは! そんなデザイン部門と設計部門が、どのようにして歩み寄ったのでしょうか?

「そんなとき、私たちは原点に戻り、お客さまのことを考えました。FIT SHUTTLEに乗るお客さまがどんな生活をしていて、何が一番喜ぶかを。こういう風に使えると便利だよね、と議論しながら、FIT SHUTTLEのあるべき姿を描いていきました」。

そして辿りついたのが、リバーシブルフロアボードというわけですね!

「他にもいろいろなアイディアがありました。たとえば、フロアを二重構造にして、必要なときにフロアボードを落とすやり方です。でも、いざ使うときにはフロアの下の物をすべて取り出さないといけません。そこまでしてフロアを落とす構造が必要なのだろうか? それよりは、ボードを半分立てたり、起こしたり、倒した後席に載せたりするほうが、お客さまには喜ばれるんじゃないかってね」。