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軽自動車からミニバンまで、いまやすっかりおなじみのオートマチックトランスミッションがCVT。独自技術で進化してきたHondaのCVTにこめられたエンジニアの思いとは? 文 / 生方 聡 (モータージャーナリスト)

エンジニア・トーク マンガ版

こだわりの”made by Honda”

——スムーズな走りと優れた燃費を実現するCVTは、日本ではとてもポピュラーなオートマチックトランスミッションです。このCVT、トランスミッションメーカーから調達する自動車メーカーが多い中、Hondaは自社でつくっていますね。

「1980年代、その可能性を信じるエンジニアが熱い思いを抱いて研究を始めたCVT。Hondaの独自性を盛り込みながら、1995年発売の6代目シビックにはじめて搭載しました。HondaのCVTはこのときから一貫して自社で生産しています」。

——なぜ"made by Honda"にこだわるんですか?

「Hondaは、企画からデザイン、クルマを商品として磨き上げるところまで、そのすべてのプロセスを自分たちの手で行っています。私たちは、これこそがHondaの強みだと思っています。トランスミッションメーカーが開発したCVTを調達するという方法もありますが、自分たちが理想とするクルマをつくるために、CVTも自分たちで開発し、生産しています。そもそも、Hondaのエンジニアは、一から十まで全部やりたい人間ばかりですからね」。

——それがHondaのエンジニア魂ですよね! これまでもそんなエンジニアにたくさん会いました。ところで、私がCVTと聞いてまず思い浮かべるのがベルトですが……。

「CVTには色々な方式がありますが、現在の主流はスチールベルト式です。Hondaもスチールベルト式を採用しています。スチールベルトは、400枚以上の小さなエレメントを、薄い板を重ねてつくったリングで束ねたもの。ちなみに、自転車のチェーンは引いて力を伝えるんですが、CVTのスチールベルトはエレメントが次のエレメントを押すことによって力を伝達するんですよ」。

——といわれても、うまくイメージできませんが(笑) ひょっとしてこのスチールベルトもHonda製ですか?

「そのとおり! 当初はヴァン・ドールネ(当時)というオランダのメーカーからベルトを購入していました。このタイプのスチールベルト供給は、ヴァン・ドールネ1社の独占でしたからね」。

——ヴァン・ドールネの名前は知っています。私が最初に乗ったCVTのクルマはヴァン・ドールネ式でしたから。でも、どうしてスチールベルトまで自社製に?

「たとえば、独占供給するメーカーに対して、私たちのクルマの性能に見あうベルトを希望しても、なかなか思いどおりにならない。だったら、自分たちでつくってしまおうと」。

——ないものはつくる。これもまたHondaらしい発想ですね! そして苦労の末、2001年発売のフィットシリーズに自社製のスチールベルトを採用したわけですか。

最高のCVTをつくる

——スチールベルトを自社でつくることで何が変わりましたか?

「クルマに見あったスチールベルトがつくれるようになったのはいうまでもありません。一方、モデルによっては現在もスチールベルトを購入していますが、私たちがスチールベルトの知識を獲得したことで、メーカーに性能を要求する際に話がしやすくなったというメリットがあります。切磋琢磨しているおかげでお互いに品質が向上しているのも確か。あるとき、『Hondaのおかげでウチの品質も向上し感謝している』といわれたときは、うれしかったですよ」

——青は藍より出でて藍より青し……というところでしょうか。

「耐久性ではわれわれのベルトが世界一という自負があります。また、開発担当者と量産担当者が密に連携することで、品質の向上にも努めています。とにかく、スチールベルトは信頼性が大切ですからね」。

——なんとも頼もしいですね! ところで、信頼性とともに重要なのがCVTの効率だと思いますが、効率を高めるためにどんなことをするんですか?

「スチールベルトが性能を左右するのはいうまでもありませんが、もうひとつ大切なのがオイルポンプです。CVTはスチールベルトとふたつの"プーリー"によって力を伝えるものです。その際、プーリーがベルトを挟むのに高い油圧を必要とします。油圧を発生させるオイルポンプが仕事をすれば、それにともなうエネルギーのロスは避けられません」。

——それでオイルポンプが重要になってくる、というわけですか。考えもしませんでした……。Honda独自の技術は、どんなところに?

「細かい話ですが、たとえば、オイルポンプは、トルクコンバーターのハブで直接駆動するのが一般的です。しかし、HondaのCVTは、直接ではなくチェーンを使って駆動しています。こうすることでオイルポンプのローターを小型化でき、摩擦による損失を減らすことができるのです。最近は他社もこの方式に変わりつつあります」。

——Hondaは一歩先を進んでいたんですね!

「他にもHonda独自というのが油圧の制御です。油圧回路はCVTを動かすハードウェアの心臓ですが、この油圧を低くすれば、オイルポンプによるロスも小さくなります。Hondaでは、1999年登場のインサイトから新しい油圧制御を採用していますが、これを使うことで油圧を下げることができました。その方式はいまでも続いていますし、さらなる進化も目指しています」。

——CVTはどのメーカーのものも同じと思っていましたが、HondaのCVTは最先端を走っているんですね! CVTは何種類ありますか?

「いまHondaには大きく分けて4種類のCVTがありますが、それに対してオイルポンプのタイプは3種類あります。ふつうはサイズの違いだけで、タイプはひとつでしょう」。

——そこにもこだわりが?

「それぞれに最適なものを選ぶのも、私たちのこだわりです。こういうクルマをつくりたいから、こんなCVTがほしい。それには、こういったオイルポンプが必要……というように決めていけるのも、CVTを自社でつくっているから。それがHondaの強みですから、ついこだわってしまうんですよ」。

——それもHondaのエンジニア気質ですね!