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ドライバーとともに目指す事故ゼロの世界

より幅広くドライバーをサポートするようになった進化型CMBS。先進のドライバー支援技術にこめられたHondaエンジニアの変わらぬ思いとは? 文 / 生方 聡 (モータージャーナリスト)

エンジニア・トーク マンガ版

さらに難しい挑戦

——進化型CMBSでは、対向車との衝突にも対応しましたね。

「従来のCMBSは、ふつうのお客さまが、ひやりとする場面、日常で危険と感じるところをまず救おうということで、追突被害軽減をテーマに開発しました。しかし、事故というのはそれだけではありません。歩行者事故や正面衝突事故など、非常に被害の大きな事故がたくさんあり、命を落とす人が後を絶ちません。そういった重大事故にきちんと向き合いたいという思いがあり、最初のCMBSを実用化したころから、対向車に対応できるよう開発を始めていたのです」。

——苦節10年ですか……。追突に比べて実用化のハードルは高そうですね?

「そのとおりです。まずは対向車を検知しなければなりませんが、前走車を認識するよりもはるかに難しいんです」。

——それはどんなところが?

「対向車は相対速度が高いため、あっというまに近づいてきます。それだけに、より遠くのもの、より速いものを検知できるレーダーが必要です。また、対向車の動きを把握するのも困難です。追突の場合は、基本的には自車の前に前走車がいてそれに近づいていきます。ところが、対向車の場合、いろいろな道路形状がありますし、いきなり正面に現れて自分の横をすり抜けたり、自分の前を横切ったりと、動きが複雑なのです」。

——人間が見ても判断が困難なくらいですからね......。

「衝突の危険を判断するのに、自分がどう進んでいて、対向車がどう進んでいるのかを予測しなければなりません。そこが技術的に一番難しいところでした」。

——あまり危険じゃないけれど、とりあえず警報を出しておくか……というわけにもいきませんしね。

「それをドライバーが煩わしいと感じてしまっては、使ってもらえない技術になってしまいますから。警報が必要なケースと不必要なケースを的確に判断するために、テストを重ねましたが、これも大変な作業でしたね。最初のうちは、30分のテストを分析するのに2時間ほどかかりました。長時間のテストのあとは、一日中データと睨めっこということもよくありました」。

——それは大変。ところで、自車のミスと対向車のミスの両方に対応するんですか?

「どちらかというと、自車のドライバーが適切に運転していない場合に助けようという発想でした。自分が対向車線にはみ出しているのは、うっかりしていることが原因ですからね」。

——ここでも、有能なアシスタントという考え方が貫かれていますね!

難しいさじ加減

——対向車と衝突する恐れがあるとき、ステアリングを振動させたり、弱い反力を付けてドライバーに知らせるということでしたね。

「振動といっていますが、実際は電動パワーステアリングの反力を変化させて、ドライバーに危険を知らせています。これだと、ドライバーがふだん無意識に感じ取っている反力と違うということで、素早く気づいてくれるのです。また、振動させるための特別の装置が不要ですので、高級車だけでなく軽自動車など幅広いモデルにも対応が可能です」。

——アイデア賞ものですね! ただ、ステアリング制御の頻度が多くなると、それこそ煩わしいですよね?

「そうなんです。ステアリング制御の頻度だけでなく、制御の強さにも気を配りました。あまりステアリング制御を強くしてしまうと、不快感や違和感につながったり、びっくりして反応が遅くなったりしますからね。そのあたりのさじ加減が難しいところです」。

——でも、難しいといって諦めないのがHondaのエンジニアですよね!

「私たちが目指すのはクルマによる悲しい事故をゼロにすることです。自動でブレーキをかけたり、対向車との衝突を回避する事で、少しでも事故を減らしたいという思いが、私たちを支えてきました。最後まで粘り強く頑張ったおかげで、実用化に漕ぎ着けられたのはうれしいことです。また、これからの技術を自分たちの力で切り拓いていくというのも、大きなやりがいでした」。

——その成果を多くのお客さまに感じ取ってほしいですね!。

「それはむしろ逆で、私たちエンジニアとしては、お客さまがCMBSを使わずにすむのが一番です。ふだんはお客さまを見守り、万一の場合にお客さまの役に立てたらいいなぁと思います」。

——このCMBSがたくさんのクルマに搭載され、ドライバーをひっそりと、しかし、強力に支えてくれることを期待しています。