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ドライバーとともに目指す事故ゼロの世界

より幅広くドライバーをサポートするようになった進化型CMBS。先進のドライバー支援技術にこめられたHondaエンジニアの変わらぬ思いとは? 文 / 生方 聡 (モータージャーナリスト)

エンジニア・トーク マンガ版

自動ブレーキを体験

——百聞は一見に如かず。まずは実際に自動ブレーキを体験してみます。それではよろしくお願いします。

「速度を25km/hくらいまで上げて、前方に見えるターゲットに向かっていってください。ブレーキは踏まずに」。

——わかりました。発進します……(約10秒後)……おおっ、止まりました! 音と表示による警報のあと、シートベルトが締まりながら軽いブレーキ。そのあと急ブレーキがかかりました。ターゲットが近すぎてよくわからないんですが、ぶつかっていませんよね?

「おそらく 50cmほど手前で止まっていると思います」。

——それにしても、最後のブレーキがギリギリのタイミングだったのでドキドキしました。

「それを経験すると、ドライバーは自動ブレーキに頼ろうなんて思わないでしょう?」

——できることなら、自動ブレーキのお世話にはなりたくありませんね(笑)

「実はそれが狙いです。あくまで自動ブレーキは、ドライバーが危険に気づかないときの最終手段。もしも、もっと手前から弱いブレーキをかけてクルマを止めてしまうと、ドライバーは『自分は何もしなくてもいいんだ』と思ってしまいます。ドライバーがCMBSに頼るようでは困るのです」。

——それはなぜ?

「状況によっては、必ず停止できるとは限らないからです。もちろん、自動ブレーキで停止できなくても衝突は軽減できますが、ドライバーにはその前の警報に気づいてもらい、みずから衝突を回避してほしいのです」。

——そういえば、試乗中の警報に反応し、とっさにブレーキを踏んでしまったときには、もうすこし手前で止まれました。

「ドライバーに衝突の危機を知らせ、適切な回避行動をとってもらう、というのがCMBSの基本的な考え方です。あくまで主体はドライバーであって、CMBSはアシスタントに過ぎないのです」。

変わらないコンセプト

——CMBSが実用化されたのは2003年でした。自動ブレーキの先駆けとして注目を浴びましたね。

「Hondaの安全運転支援システムというのは、あくまでドライバーと協働して事故を防ごうというのがベースにあります。まずはできるかぎり危険を知らせてあげる。そして、衝突の回避が難しい場合やドライバーが適切な行動をとらなかった場合は、クルマが助けてあげようという考えです。ドライバーの正しい運転を支援するのが目的なのです」。

——これまでのCMBSは自動で止まりませんでしたよね。それはどうして?

「その当時はまだ自動ブレーキが世の中に出ていませんでしたから、『いきなり急ブレーキをかけていいものだろうか』とか、『自動的に危険を回避するとドライバーが頼り切ってしまうのではないか』という意見がありました。そのため、当時の技術指針では、自動で衝突を回避してはいけない、自動で止まってはいけない、ということになっていたのです。そういう状況のもとでも、できるかぎりのことをしようと実用化したのが最初のCMBSでした」。

——やりたくてもできないという事情があったんですね。そして時は流れ、自動ブレーキのありかたが変わってきたわけですか。

「基本的に、ドライバーに危険をきちんと知らせ、適切な回避行動をとってもらうという考え方は変わってはいませんが、自動での衝突回避が許可されたことから、Hondaとしても、ドライバーが危険を回避できないときには、自動ブレーキで止まる機能を盛り込みました」。

—そのわりには大々的にアピールしていませんよね?

「商品として見れば、そういった技術がもたらす安心感は伝えていくべきですが、条件によっては止まれないこともあるということをしっかり説明したうえでアピールするなど、技術への過信が起きないよう細心の注意を払うことが必要だと思うからです」。

—エンジニアの良心ですね!