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長年の夢だった電子制御式のリアルタイムAWD。 「新技術を生み出すんだ!」という強い意思が エンジニアたちを前へ前へと駆り立てました。

独創のリアルタイムAWDは、どんな想いから生まれたのか? そして、不安とプレッシャーのなか、エンジニアたちはどのような課題を乗り越え、完成に漕ぎ着けたのか? 担当エンジニアが開発当時を振り返ります。 文 / 生方 聡 (モータージャーナリスト)


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使命感が不安を吹き飛ばした

「新しいリアルタイムAWDは本当にできるのだろうか? 不安がなかったといえば嘘になります」。

そう語るのは開発チームを率いてきたエンジニア。もし開発が遅れていたら、4代目CR-Vには間に合わなかったかもしれない、ということですか?

「最悪の場合、その可能性もありました。でも、不安より、"自分たちがやらなければ!"という使命感のほうが強かった」。

相当プレッシャーを感じていたようですね。Hondaの4WDといえば、1993年にデビューしたインテグラ4ドアハードトップに初搭載され、以後、さまざまなモデルに採用されていった「デュアルポンプシステム」が主流です。ふだんはFFの軽快な走りが楽しめて、いざというときには自動的に4WDに切り替わるこのシステムは、FFと4WDの切り替えを機械的に行い、軽量・コンパクト、そして、低燃費を実現したのが特徴でした。現在も幅広いモデルに搭載されていますが、新しい4WDを開発した狙いは?

「一番の狙いは、最新の技術によってお客さまにより大きな安心を届けることです。デュアルポンプシステムは、前のタイヤが滑ると、システムがそれに反応してクラッチがつながり、後輪に駆動力を伝えます。これにより、滑りやすい路面で威力を発揮するんですが、新しい技術を使えば、たとえば雪道での発進をさらにスムーズにすることができたり、運転の不安を軽減できるのではないかと思ったんです。そのために、クルマの各種センサーから得られた情報をもとに、システムが走行状況に応じてクラッチを断続する電子制御の4WDシステムを提供したかった。これまで何度もチャレンジしてきましたが、なかなかモノにできずにいたんです。だから今度こそはとね」。

皆さんに大きな期待がかかっていた、というわけですね。ところで、ヨーロッパ各社のように、部品メーカーから必要なシステムを丸ごと調達するという選択肢はなかったのですか?

「それは考えもしなかったことです。核となる部分は自社開発するのが、私たちのやり方です。そうすれば、狙いどおりの性能に仕上げられますし、存分な実車テストも可能です。テスト担当者の意見もすぐに設計に反映できます。極端な話、テスト中にトラブルが見つかったときには、内線1本で設計担当者に修正を頼めますからね」。

これぞHonda流! こだわりを貫くためには苦労をいとわない……。もちろん、自分たちの技術力を信じているからこそ、そんな挑戦ができるのでしょう。

独創的なだけに、完成までの道のりは遠く険しい

「インテリジェント・コントロール・システム」と呼ばれる新開発のリアルタイムAWD。その核となるのが、電子制御クラッチです。「安く、軽く、小さく」仕上げるため、Hondaのエンジニアが考案したのが、小さな電動ポンプで油圧を発生させ、クラッチを自在に断続するやり方でした。

「クラッチを操作する方法として、油圧を使うのではなく、電磁石(ソレノイド)で直接動かすやり方もあります。しかし、それだと大きな電磁石が必要になり、重量もかさんでしまうんです」。

そこで、オイルの流れを堰き止めて、油圧をつくり出すというユニークな方法を選んだのですか?

「こうすることで、小さな電動ポンプで高い圧力を生み出すことができます。また、オイルの量を少なくすることができるので、電動ポンプを動かす時間が短くなり、低燃費にも貢献します」。

なるほど、いろいろなメリットがあるのですね。それだけに実現するのは難しかったのでは?

「苦労の連続でしたね(笑) たとえば、耐久試験をしているときのことです。朝、出社して様子を確認すると油圧が上がっていない。原因を突き止めるために、油の流れが外から見られるような装置をつくりテストすると、空気が溜まっていました」。

オイルに空気が混じるのはあらかじめ予想されていたことで、その対策も採られていました。よくよく調べて見ると、直前の構造変更が原因で空気が溜まるようになってしまったというのです。ほかにも、クラッチには付き物の「ジャダー」(振動)をいかに抑えるかなど、課題は山積でした。新しい機構だけに、予想できないトラブルとの戦いが続いたのでしょう。しかし、これに屈しないエンジニアたちの努力が実り、試作品が完成。クラッチ部分は軽く仕上がり、必要な耐久性も確認できたというのですが……。