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ミニバンに新たな価値を

Part1「わくわくゲートという発想」

人が乗り降りできるドアをテールゲートの中に設置したら、どんなに便利だろう……。そんな奇抜な発想から生まれたのが「わくわくゲート」です。

お客さまが不自由しているシーンを見つけ出す

家族のためのミニバンとして、1996年の登場以来、多くの人々に愛されてきたステップ ワゴン。その最新型である5代目を開発するにあたり、Hondaエンジニアはミニバンの使われ方をじっくり観察することから始めました。

「ミニバン、とくに5ナンバーミニバンは成熟した商品で、パッケージひとつとってもすでにアイデアは出尽くした感があります。もうこれ以上のものはないだろうと思われる状況ですが、さらに使い勝手のいいクルマにするために、まだ何かアイデアを盛り込む余地があるのではと考えたのです」(インテリアデザイン担当 萩原光太)

そんな想いを胸に、関係するデザイナーとエンジニアは総出でミニバンユーザーの行動をつぶさに観察しました。そのなかで、いくつかの光景をまのあたりにしたといいます。

「混み合ったショッピングモールの駐車場でのこと。荷物を積もうとしたら、後ろのクルマとの間隔が狭いためにテールゲートが開けられず、クルマを少し前に出している人が多くいました。また、高速のサービスエリアでは、3列目にお孫さんが乗るのをクルマの外で待つおじいちゃん、おばあちゃんを見かけました」(萩原)

そんな悩みが解消できるテールゲートを創りたいという想いが、エンジニアたちに芽生えたのです。そこで、アイデアを出し合う“ワイガヤ”が開かれました。

「ひとしきり意見が出尽くしたあとに、開発責任者の袴田 仁が、ホワイトボードにつたないマンガを描き始めたのです。四角い枠の中にさらに枠を描いて、『こういうの、できる?』とメンバーに問いかけた。これが“わくわくゲート”誕生のきっかけでした」(萩原)

  • インテリアデザインを担当した萩原光太

    インテリアデザインを担当した萩原光太

  • インテリアデザインを担当した萩原光太

第5のドア

「エンジニアもデザイナーも最初のうちは『これが本当にモノになるのか?』と思っていました。そこで、先代を改造してわくわくゲートの試作品に付け替えたら、それまでピンとこなかった人も『こんなことができるんだ!』と驚いたのです。『これは絶対にモノにしよう!』と開発メンバーの気持ちがひとつになった瞬間です」(萩原)

過去に例のないわくわくゲートをつくるにあたって、デザイナーは特別な想いをこめたといいます。

「この世界で初めての機能をデザインの特徴として表現したいと、エクステリアデザイナーはスケッチを描きました。一方、インテリアは従来のテールゲートというよりも、ユーザーが快適に使える5枚目のドアという気持ちでデザインをしています」(萩原)

もちろん、最初から正解がわかっているわけではありません。納得する形に仕上がるまでにはいつも以上の時間を必要としました。

「とにかく人の動きがスムーズになるにはどうしたらいいかを検討するために、私たちデザイナーはモデルをつくり、実際に乗り降りする動作を検証するというプロセスを繰り返しました。その結果、『いちばん気持ちがいいのはこれだよね』という、いまの形を探し当てたのです」(インテリアデザイン担当 政谷好孝)

  • 開発責任者の袴田 仁がホワイトボードに描いたイメージ図

    開発責任者の袴田 仁がホワイトボードに描いたイメージ図

  • 新しい機能・アイデアを形にした政谷好孝

    新しい機能・アイデアを形にした政谷好孝

Part2 新しい“カタチ”をモノにする試練

お客さまが喜ぶ商品として、わくわくゲートという新しいカタチをどうやってモノにするのか? その一方で受け継ぐべき伝統を守りたい。エンジニアの試練が始まりました。

「変えなきゃいけない」モノ

わくわくゲートの開発は順風満帆のスタートではありませんでした。特に問題になったのが、企画の初期段階にゲート中央にあった大きなピラー。これを見た役員が、安全性に疑問があるとして採用を猛反対したのです。

しかし、お客さまの利便性を向上させたいと思うエンジニアは、次のような高い目標を自ら掲げることで役員を説き伏せたのです。

100km/h差で走行する後続車の接近を3秒前に発見できることを目標とし、対象は一番厳しい二輪車のヘッドライトがピラー越しに認識できること。

「わくわくゲート中央のピラーは、当初は倍くらい太かったのですが、テールゲートとドアの合わせ部分を横ではなく縦にならべるという思い切った設計により、最終的には半分近くまで細くすることができました。これならドライバーがミラー越しに後ろを見たときに邪魔になりませんし、後続車や後ろの二輪車も容易に確認できます」(わくわくゲート設計担当 山口友樹)

さらに、エクステリアのデザイン性を高めるために、設計者は美しさにもこだわりました。

「難しかったのは、サブドアの開閉機構を設計する際に、いかにデザイン性を高めながらドア同士の干渉を防ぐかということ。サイドと違ってリアにはライセンスプレートがあったり、いろいろ凸凹している部分があるので、デザインを考えないとヒンジが飛び出してしまうのです。それを避けるためにテールゲート側をえぐるのもスマートじゃありません。そこで、ヒンジの入っているところを目立たないように表面に出しながら、合わせの部分の形状をデザイナーとともにギリギリまで攻めることで、すっきりとしたデザインに仕上げたのです」(山口)

こうした努力により、縦にも横にも便利に使えるわくわくゲートが実用化できたのです。

  • わくわくゲートの設計を担当した山口友樹

    わくわくゲートの設計を担当した山口友樹

「変えちゃいけない」モノ

わくわくゲートの使い勝手をさらに高めているのがマジックシート(3列目シート)です。簡単に床下に格納ができて、広い荷室が確保できるのは先代のステップ ワゴンから受け継ぐ特徴のひとつですが、当初は商品性の問題から両側跳ね上げ式のシートが検討されたといいます。この方針に対して、異を唱えたのが政谷でした。

「先代からの床下格納シートを知っているお客さまは『このすっきりした荷室こそステップワゴン』と思っていますから、いまさら跳ね上げ式に戻したくはなかったのです。やはり、クルマの開発はお客さまの立場に立つことが一番ですからね。開発責任者に右側だけでなく左側も床下格納にするようかけあいました。おかげで“しつこいオヤジ”といわれましたが(笑)」(政谷)

そうなると、なおいっそう3列目シートの薄型化が必要になります。

「実際、先代よりも今回のほうが3列目シートは薄くなっています。そこでまず、シートの収納方法を変更しました。先代では収納時にシートクッションが上になりましたが、新型はシートクッションは下です。シートクッションの下に隙間ができるのでそこにS字バネを入れることで先代以上の乗り心地が確保できました。また、シートバックが上になる収納方法を採用したことで、ホイールハウスを避けるために削る部分が肩口になり、リクライニング機構を乗員から離すことができたので、座ったときの柔らかさが出せるようになりました」(シート設計担当 佐々木忍)

ところで、サブドアから乗り降りするときには、床下格納した左側シートを踏むことになりますよね。

「床下に格納したとき、ボディとの間に隙間ができてしまいます。そこに足を取られないよう、反転して隙間を埋めるボードを設定しました。さらに、左側だけ脱着式のマットを付けて、汚れたら外して洗えるようにしたのです。実際には泥汚れなども水拭きだけでほとんど落とせるのですが、取り外して洗えると安心感がありますからね」(佐々木)

  • 3列目シートの設計を担当した佐々木忍

    3列目シートの設計を担当した佐々木忍

Part3 創る喜び

紆余曲折を経て「わくわくゲート」という新発想をモノにしたエンジニアたちに、創る喜びを感じる瞬間が訪れました。

お客さまの笑顔が最大のご褒美

わくわくゲートだけでなく、3列目シートにもさまざまな工夫を凝らすことでミニバンの新しい使い方を提案した新型ステップ ワゴン。お客さまにより便利なミニバンを提供したいという想いが、この技術を完成させました。

「ステップ ワゴンの発売後にHonda Carsを訪れたとき、お子さんがニコニコしながらわくわくゲートから乗り降りを繰り返していたんですよ。あれはうれしかった。ちょっとうるっときましたね(笑) 実際に購入されたお客さまも、買う前の印象よりも便利だと実感して頂いています。」(政谷)

お客さまの笑顔に出会うときこそが創る喜びを感じる瞬間。そのために、エンジニアはどんな課題にも立ち向かっていくのです。

「お客さまから『Hondaらしいね』といってもらえるのはとてもうれしい。わくわくゲートはHondaにしかつくれないものだと自負しています。その他にも新しいことがぎっしり詰まっていますが、写真だけではわからないので、ぜひ実際に触れて、このクルマの良さを感じ取ってもらえたらうれしいと思います」(萩原)

独創的な技術を生むことが目的ではない。お客さまにとって使い勝手のいいクルマ創りを進めた結果として、世界初や世界一の技術が生まれる——それこそがHondaらしさを生み出す原点であるということが、このわくわくゲートの開発にも息づいています。