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Bonneville Speed Week 2016 白い平原を駆け抜けろ!時速450kmの限界チャレンジ。

2016年9月、アメリカユタ州ボンネビルで開催された「ボンネビル・スピードウィーク」に参戦したHondaのプロジェクトメンバーたち。20代、30代の若手メンバー16名が目指したのは、時速450kmで走るレーシングカー(S-Dream)の開発でした。期間はわずか1年間。前人未到の記録に挑んだ開発ストーリーを「国内編」「アメリカ編」の2部構成で紹介します。 2016年9月、アメリカユタ州ボンネビルで開催された「ボンネビル・スピードウィーク」に参戦したHondaのプロジェクトメンバーたち。20代、30代の若手メンバー16名が目指したのは、時速450kmで走るレーシングカー(S-Dream)の開発でした。期間はわずか1年間。
前人未到の記録に挑んだ開発ストーリーを「国内編」「アメリカ編」の2部構成で紹介します。

Hondaのチャレンジとは?

2015年5月、本田技術研究所はボンネビル参戦を決定。プロジェクトメンバーを社内公募し、100名を超す応募者から若手を中心に16人を選出。目標は「軽自動車用エンジンを用いて500〜750ccクラスの新記録を樹立すること」です。1年間でHondaとして未経験の速度記録専用車をゼロから作り上げなければならず、車体は完全なゼロ設計となり、数々の困難が予想されました。

Bonneville Speed Week 2016 白い平原を駆け抜けろ!時速450kmの限界チャレンジ。

地理紹介地理紹介

塩の平原での最速チャレンジ塩の平原での最速チャレンジ

「ボンネビル・スピードウィーク」とは?

アメリカユタ州にある塩湖跡、ボンネビル・ソルトフラッツで開催される、2輪、4輪の最高速記録イベント。この分野の競技会としては世界最大規模で、2輪、4輪を含め600台以上が参加。塩湖が干上がってできた平原に、5マイル(約8km)前後のコースを設定して開催します。

Bonneville Speed Week 2016 白い平原を駆け抜けろ!時速450kmの限界チャレンジ。

選ばれし招待チームのみで競われるFIAランド・スピード・レコード選ばれし招待チームのみで競われるFIAランド・スピード・レコード

FIAランド・スピード・レコードとは?

ボンネビルと同じ塩の平原で行われる最高速度記録会。開催時期はスピードウィークの8月に対してこちらは9月。また、一般に門戸が開かれたスピードウィークと異なり、記録樹立の可能性が高い少数のチームだけが招待されて参加します。片道だけでなく、1時間以内に往復する義務があるのもボンネビル・スピードウィークとの相違点です。

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国内編/車体
手探りで始まったプロジェクト 手探りで始まったプロジェクト

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人命最優先でのスピードチャレンジ

今回のチャレンジでは、軽自動車用のエンジンで時速450kmの速度記録を達成することを目標にかかげる一方で、プロジェクトとしては「人命最優先」が貫かれました。時速400kmを越える速度域では、些細なミスが取り返しのつかない事態を招きます。Hondaが、4輪の「ストリームライナー」と呼ばれる速度記録専用マシンを開発するのは今回が初めて。1年間でマシンを完成させ、記録会に挑まなければいけません。若手で構成されたプロジェクトメンバーにとってハードルの高い挑戦となりました。

Engineer's Comment

酒井 敬史PL

車体開発責任者酒井 敬史PL

「ボンネビルの規則書は1ページ目に『この競技会は死と隣り合わせ』との記述があり、内容の9割は安全性に関するもの。安全性については入念に議論しました」

宇佐美 雅貴

車体・ビークルダイナミクス担当宇佐美 雅貴

「始めに手を付けたのは規則書を読み込み、その後参加チームの情報収集と分析を徹底的に行いました。特に、1度事故を起こしたチームについては、翌年にどんな改良を施したかを確認することで、自分たちが想定した事故モードやそれに必要な性能を照らし合わせることができると考えて行いました」

16名の若手エンジニアで編成されたプロジェクト

16名の若手エンジニアで編成されたプロジェクト

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塩の上を走破する未知なるレース

マシン開発はその車両がどのような環境、つまりどのような路面環境や気候条件で使われるかが、設計すべき内容を左右します。レーシングマシンではサーキットという環境に限定することで、設計すべき内容をある程度まで最適化することができ、その最適化によって量産車の性能を遥かに上回ることが可能になります。ボンネビル・スピードウィークは、塩の上で行われますが、塩という未知の環境への最適化と高性能化は困難です。チームはコース状況を把握しようと、事前に競技会の舞台であるボンネビルを訪問しようと思いましたが、2015年大会は悪天候のため中止。競技場周辺は環境保全のため立ち入りが制限されており、路面調査は叶いませんでした。メンバーは、過去の事例を徹底的に調査するとともに、さまざまな環境にも対応できるセッティング幅が広いマシンで世界記録を目指すこととなりました。

ボンネビル・フラッツの塩の路面

ボンネビル・ソルトフラッツの塩の路面

Engineer's Comment

酒井 敬史PL

車体開発責任者酒井 敬史PL

「エンジニアリングとは、本来、推測して、設計して、製作して、テストして、結果をフィードバックするというサイクルで完結するもの。しかし、今回は、我々にとって見たことも触ったこともない塩の上をHondaが経験したことのない速度で走るという課題ゆえに、第一歩となる推測という部分さえ容易にできない難しさがありました」

宇佐美 雅貴

車体・ビークルダイナミクス担当宇佐美 雅貴

「他チームの過去車載映像から車速、時間、修正舵量、横移動量そして横加速度などの関係を分析しました。こうした地味な解析から、未知の塩の上を未知の速度で走るという事象を可能な限り科学的に推測しました。例えば、先ほど述べたような解析から、路面の縦方向や横方向の摩擦係数(μ)を科学的に推測し、未知の路面環境において必要とされる車体のビークルダイナミクスを設計しました」

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量産車とまったく異なるマシン

ステアリングシステムは、量産車のような円形ホイールを回す形式ではなく、2本のレバーを両手で操作するダブルレバー式をゼロから設計。これは万一の際にステアリングコラムがドライバーを負傷させる危険性が低いほか、レイアウトの自由性、ステアリングシステムの現地セッティングが可能となるような形で設計できる点などから、新規で設計、製作することにしました。また、前面投影面積を最小化するために、ドライバーの着座姿勢を工夫。転覆限界を高めるためにも、ドライバー、エンジン、冷却水、消火器などをできるだけ低く配置し、重心位置を下げました。さらに、規則に則りながら車体を強固な構造にするとともに、万一の際にもドライバーの保護を担保できるような車両の要件を整理し、設計しました。

新規で製作したステアリング設計

新規で製作したステアリング設計

最高速アタックのためのフレームレイアウト

最高速アタックのためのフレームレイアウト

Engineer's Comment

酒井 敬史PL

車体開発責任者酒井 敬史PL

「趣味は航空機の設計。ダブルレバー式のステアリングシステムは、以前設計したことがある航空機用リンクのジオメトリーから着想を得て設計したものです」

宇佐美 雅貴

車体・ビークルダイナミクス担当宇佐美 雅貴

「ゼロ設計したこのマシンを未知の塩の上を未知の速度で安定した状態で走らせるには、ステアリングシステムを中心としたクルマ1台分の空力から、タイヤ力を含めた運動方程式を考えてあげることが重要です。過去の事故モード解析や、他のチームの車載映像分析から、どんな外乱を受けてもスピンしないことやステアリングシステムとクルマ1台分が共振を起こさない条件を理論的に導き出し、限られた日程で製作も含めて成立するステアリングシステムをチームメンバーと毎朝、毎晩、一日中議論しました。S-Dreamの目玉のひとつであるゼロ設計のステアリングシステム。これを考えるのに『性能観点でこうしたい』と言うと、チームメンバーから『設計観点でこうならいける』とスパイラルアップをしていく毎日は、エンジニアとして最高の場でした」

チャレンジの結果
蔦 佳佑 / LPL
S-Dream開発責任者

「1年間の準備期間を経て本番に挑んだチームは、見事、「1マイル測定区間の記録として261.875mph(時速421.446km/h)※1」、「1キロ測定区間の記録として261.966mph(時速421.595km/h)※2」という2つのFIA速度記録樹立。最高速記録を樹立しました。また、非公式ながら9月のレース時の往路では267.998mph(時速431.476km/h)を記録。何度もプロジェクト終了の危機に直面してきたメンバーらは、レース終了時にはあまりの歓喜で泣き崩れたほど。困難を乗り超えてプロジェクトを成功に導いた経験はかけがえのない財産です。事故を起こさなかったこともまた、重要な成果。すべての経験が、Hondaの独創的なクルマ作りにつながると期待しています」

※1/スタート地点から5~6マイル地点の1マイル(約1.6km)の計測区間を1時間以内に往復した速度の平均値
※2/スタート地点から5.5マイル地点の前後500メートル(1km)の計測区間を1時間以内に往復した速度の平均値

このプロジェクトで得た経験をクルマづくりに活かす

このプロジェクトで得た経験をクルマづくりに活かす

フォトギャラリー

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~ Bonneville Speed Week 2016 ~

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