経営 2022.04.19

【記者発表】カーボンニュートラルを目指す、EVロードマップ

【記者発表】カーボンニュートラルを目指す、EVロードマップ

「2050年までにHondaが関わる全ての製品と企業活動を通じて、カーボンニュートラルを目指す」。社長就任会見で三部が宣言してから、約1年が経ちました。さまざまな製品をもつ、Hondaならではのカーボンニュートラルに向けた取り組みとは。その中で、四輪の電動化をどのように進めていくのか。四輪の電動ビジネスについて語られた2022年4月12日の記者発表の内容をダイジェストでご紹介します。

「Hondaの脱エンジン宣言?」という驚きの声とともにさまざまな反響をいただいた2021年4月の社長就任会見。

それから約1年が経過した今回の記者発表は、三部が改めてここ数年のHondaを振り返りながら、既存ビジネス強化の成果と、本業の拡大にもつながる新領域についてお話しするところから始まります。

三部 敏宏

本田技研工業株式会社
代表執行役社長
三部 敏宏(みべ としひろ)

1987年Honda入社。 本田技術研究所 代表取締役社長を経て、2021年4月より現職。本田技術研究所では自動車エンジンを中心とした多様な研究開発に携わる。

2021年のHondaを振り返る

三部

Hondaは、前任の八郷体制時から、「既存事業の盤石化」と「新たな成長の仕込み」を方針に掲げてきました。この方針のもとで進めてきた取り組みは、「商品」「事業」「新たな成長につながる先進技術開発」、これらの領域それぞれで芽吹き、そして、着実に実を結びつつあります。

まず四輪の電動化の足場固めとなる経営方針について言及した三部。「既存事業の盤石化」への取り組みとして挙げたのが、四輪事業における「強い商品」「事業体質の強化」です。

2021年、Hondaは新型ヴェゼル・新型シビックに高い評価をいただいた一方で、各モデルのプラットフォームのレイアウト統合や部品共有化などを実現する「Hondaアーキテクチャー」を採用。また、グローバルで車種ごとのタイプや装備の組み合わせである派生の数を削減したりと、合理化へも取り組んできました。

三部は「事業体質の改善は、『電動化』そして『新たな成長の仕込み』への投資を生み出す」と語ります。

三部

「eVTOL」「アバターロボット」「宇宙領域へのチャレンジ」という3つの領域は、どれもHondaの既存事業からつながる技術をコアにしており、モビリティカンパニーとしての本業の拡大だと考えています。

都市間の快適な移動を実現する「eVTOL」。バーチャルな移動を可能にする「アバターロボット」。月面での有人活動を可能にする循環型再生エネルギーシステムや小型ロケットによる「宇宙領域へのチャレンジ」。

二輪や四輪と同じように、この3つの新領域も「人々の自由時間を創り出し、人が活躍できる時間や空間を拡げる」「移動の自由を制限しないようにする」もの。人の生活圏や行動圏を拡げるとともに、社会をも変えていく原動力になることを目指しています。

電動化だけじゃない、Hondaのカーボンニュートラル

2050年の「カーボンニュートラル実現」。長くエンジン開発に取り組んできたHondaがなぜこれらの目標を掲げ、電動化を目指すのでしょうか。そこには世界一のパワーユニットメーカーとしての責任があります。

三部

Hondaは「二輪車」「四輪車」「パワープロダクツ」「船外機」「航空機」まで、幅広い製品を提供するモビリティカンパニーであると同時に、合計すると年間で約3,000万台規模の世界一のパワーユニットメーカーでもあります。

私たちHondaが、意志を持って動き出そうとしている世界中の人を支える原動力であり続けるためにも、Hondaが目指す「自由な移動の喜び」を環境負荷ゼロで達成していきたい。

そのために、まずは私たちの提供するモビリティ。そして、その動力源であるパワーユニットのカーボンニュートラル化を進めていきます。

自動車メーカーのカーボンニュートラルへの取り組みとしては電動化のイメージが強いですが、二輪、航空機、船外機などさまざまなモビリティを提供するHondaの場合はその限りではありません。

三部は「エンジンからバッテリーへの単純な置き換えではない、多面的・多元的なアプローチが必要」だと強調します。

三部

我々の提供するモビリティの多様性、そしてそれを活用いただいているお客様の多様な使い勝手や生活環境、再生可能エネルギーの普及状況などを考慮すること。さらに製品ライフサイクルでの視点、社会全体でのエネルギー総量や効率性にも貢献していく観点が求められます。

二輪やインドのリキシャなどの商用コミューターでは交換式バッテリーを、車体重量が重く、長い航続距離が求められるモビリティは、水素燃料電池を活用する。このように、Hondaではモビリティごとに最適なカーボンニュートラルの方法を模索しています。

また、社会全体の移動効率の視点ではモビリティサービスを。そして各モビリティから得られるデータを集約、分析するコネクテッドプラットフォームを構築することで、社会全体の利便性や効率性の向上を図ります。

Hondaが考えるカーボンニュートラル達成のための多面的・多元的なアプローチ。四輪の電動化は、その重要な1ピースという位置付けなのです。

四輪の電動化、どうやって実現する?

これらのビジョン達成に向けた動きを加速させるため、Hondaは2022年4月に組織改編を行いました。

「電動商品とサービスの企画」「バッテリー」「エネルギー」「モバイルパワーパック」「水素」を繋げる「コネクテッド・ソフトウェア」。これら従来の製品別の事業部から独立させ、束ねる「事業開発本部」を新設しました。今後10年で約8兆円の研究開発費を投入。特にターゲットとなる「電動化」と「ソフトウェア領域」には、投資と合わせて今後10年で約5兆円のリソースを投じる予定です。

そして、この事業開発本部の責任者になる青山 真二へ、話し手をバトンタッチ。青山から四輪の電動化に至るための具体的なロードマップが話されました。

青山 真二

本田技研工業株式会社
執行役専務
青山 真二(あおやま しんじ)

1986年Honda入社。北米地域本部長を経て、2021年7月より電動化担当。同年10月に執行役常務に就任。2022年4月より新設された事業開発本部の責任者。

青山

EVの時代において重要な課題は、皆さまご承知の通り、グローバルでのバッテリー調達です。これに対する基本的な考え方は2つです。

1つ目は、現在から当面の間必要となる液体リチウムイオン電池については、外部パートナーシップの強化により、安定的な調達量を確保するということ。

2つ目は、2020年代後半からは、現在、独自に研究開発を進めている次世代電池の開発を加速させ、技術を「手の内化」することです。

将来を見据えた、段階的アプローチを掲げた青山は、当面の液体リチウムイオン電池の調達のキーワードとして「地産地消」を掲げます。

青山

液体リチウムイオン電池の調達については、EVの製品ライフサイクルの観点でも競争力を担保するために、地産地消の考えに基づき、主要な市場ごとに方針を固めました。

北米は、GMから「アルティウム*」の調達を計画しています。その他にもバッテリー生産を行う合弁会社の設立を検討しています。中国では、既に公表した通り、CATLとの連携をさらに強化していきます。

そして、日本においては、まず始めに投入する軽EV向けに、エンビジョンAESCから調達することで合意しました。”

*アルティウム・・・GMが開発する次世代バッテリー

そして青山は、もう1つの次世代電池の進捗についても言及しました。

青山

既に発表している通り、Hondaは全固体電池の開発に取り組んでいます。ラボレベルで技術、生産の検証を行い、目標とする性能を決めました。

現在、生産技術の「手の内化」を目指し、量産レベルでの性能やコスト、安全面での優位性を確保するため、生産プロセスも含めた設計に取り組める実証ラインの建設を定めました。

2024年春に、栃木県さくら市での立ち上げに向け、約430億円の投資を計画しています。2020年代後半のモデルに採用できるよう、研究を加速していきます。

より航続距離を延ばせたり、充電時間を短くできるなど、次世代電池の最有力と目されている全固体電池。

Hondaは、2020年代後半のモデルへの採用に向け、全固体電池の実用化を目指していきます。

HondaのEVロードマップ

次に今後のEV製品の投入についても具体的な発表がありました。まず、EV普及における黎明期とみる現在から2020年代後半までは、各地域の特性に合わせた商品の投入を予定しています。

青山

“北米では、まずGMと共同開発している中大型クラスのEVを投入します。2024年には既に計画を公表しているHondaブランドの新型EV「Prologue(プロローグ)」に加え、Acura(アキュラ)にも大型SUVタイプのEVを1機種投入します。

中国では、EV普及が他地域に先行する、EV先進市場としての特性を生かし、現地独自開発でスピーディーに対応していきます。既に昨年発表した通り、今後5年、2027年までに合計10機種のEVを投入します。

他地域に比べて、ハイブリッド車が大幅に普及している日本では、まず2024年前半に商用の軽EVを投入し、配送業など、稼働率の高いプロフェッショナルユースの領域からEVの普及に取り組んでいきます。

EV普及に取り組むべく、この商用軽EVを100万円台で提供することを目指しますが、インフラ全体での再生可能エネルギーの普及状況なども見ながら、パーソナル向けの軽EV・SUVタイプのEVも適時投入していきます。”

なぜHondaが日本における商用軽自動車からEV化を始めるのか。そこにはEVを普及させていくための日本の特性を鑑みた判断があります。日本では商用の主力である軽自動車から始め、小型車のプラットフォームを展開。それを日本からアジアへ広げていく予定です。

一方、EVの普及期に入っているとみられる2020年代後半以降においては、各地域ベストから、グローバル視点でベストなEVを展開していくことが語られました。

そのカギを握る1つとして、EVのハードウェアとソフトウェアを組み合わせたEV向け新規プラットフォーム「Honda e:アーキテクチャー」を2026年から展開。ハードとソフトを融合させることで、商品を売って終わりではなく、その後も商品を通じてお客様と繋がり、サービスを提供することが可能です。これらを四輪車だけでなく、その他のモビリティにも適用していくことで「Hondaならではの付加価値を提供する」ことを目指します。

そしてもう1つのカギとして語られたのが、先日発表されたソニーとのEV合弁会社についてです。

青山

モビリティメーカー単体では成し得ない、新しい移動の価値を探求する、いわば「モビリティの概念の拡張への挑戦」だと位置付けており、2025年を目標に、両社の強みを融合させた、ソフトウェアディファインドな、高付加価値モデルを投入します。

また、GMとのアライアンスの中で、コストや航続距離などにおいて従来のガソリン車と同等レベルの競争力を持つ量販価格帯EVを、2027年以降に北米から投入する計画についても語られました。

そして一連のEV製品の投入について、青山は次のように総括しました。

青山

以上のような取り組みにより、2030年までに、軽商用からフラッグシップクラスまで、グローバルで30機種のEVを展開し、年間生産は200万台を超える計画となります。

こうした台数を支えるEVの生産体制については、中国の武漢にEV専用工場を建設することを発表しましたが、中国では武漢の他に広州にも建設を計画しています。また、北米でも専用の生産ラインを計画しています。

先程のバッテリー生産と同様に、EVの生産も、ライフサイクル観点での地産地消が競争力を生むことから、主要な市場ごとに、必要な能力を適時検討していきます。”

また、EV普及に欠かすことのできない充電ステーションについても、地域・国ごとの状況を見ながら対応し、北米ではHonda自ら積極的に充電ステーションへ投資していくことも検討しています。

ソフトウェア・コネクテッドで実現する「複合型ソリューションビジネス」

電動化に加えてもう1つ、Hondaが今後注力していくのがソフトウェア・コネクテッド領域。

「二輪」「四輪」「パワープロダクツ」「船外機」「航空機」「モビリティサービス」など、さまざまなHondaの製品がネットワークとつながる未来について、青山が語りました。

青山

“製品単体に留まらず、さまざまなHondaの製品が連鎖し、クロスドメインで繋がっていくことで、より大きな価値を提供できること。これがHondaの強みであり、私達が目指す姿です。

その実現のために、電動モビリティや製品を「端末」と位置付け、各製品に蓄えられたエネルギーと情報をユーザーや社会と繋げていくことで、新しい価値を提供していく「複合型ソリューションビジネス」の社会実装が必要となります。

そこで、その実行において重要なキーとなるクロスドメインでのコネクテッドプラットフォーム構築に取り組んでいきます。

今回、現在Hondaが持つ「ソフトウェア・コネクテッド領域」の能力を、新しい本部で1つに束ねましたが、今後は、開発のさらなる加速のために、バッテリーをはじめとした「電動領域」、そして「ソフトウェア・コネクテッド領域」については、外部からの採用強化も含め開発能力の大幅な強化を図っていきます。

これまで、モビリティのハードウェアの領域で強みを発揮してきたHonda。これからはハードウェアの領域での強みは磨きながらも、ハード売り切り型のビジネスから、搭載したソフトウェアを随時アップデートしていく、いわゆるリカーリングビジネスへ移行しようとしています。これによって、お客様に購入いただいたモビリティを購入後も常に鮮度が高いモビリティに進化させ続けることができます。

その後、本田技研工業 副社長の竹内 弘平が新たな挑戦を下支えする財務戦略についてお話しました。

コロナ禍や半導体不足の影響により四輪の販売が落ち込む中で、経営の健全性の指標となるROS(売上高営業利益率)を高水準で維持していること。

そして、電動化・ソフトウェア領域などの研究開発費と投資、「eVTOL」「アバターロボット」「宇宙」などの新たな成長の仕込みへの資源投入を発表。

カーボンニュートラルにも、HondaらしいFUNを

そして、最後に記者発表の締めくくりとして、バトンは再び三部へ。

「カーボンニュートラルや電動化に挑む中でも、Hondaは、常にFUNもお客様に届けていきたい」という想いとともに、最後にスポーツモデルが紹介されました。

三部

操る喜びを電動化時代にも継承し、Honda不変のスポーツマインドや際立つ個性を体現するような、スペシャリティとフラッグシップ、2つのスポーツモデルのグローバルへの投入を検討しています。
皆様のご期待に応えられるよう、こだわって開発していきたいと思います。
電動化によるカーボンニュートラルへのチャレンジも、レース、スポーツモデルでのチャレンジも、いずれも高い目標を掲げ、より一層取り組んでまいります。

今回の記者発表では「カーボンニュートラル」の実現に向けた戦略の第一弾として「四輪の電動化」のロードマップを示しました。しかし、電動化だけが答えではありません。Hondaは環境負荷ゼロの循環型社会のため、さまざまなアプローチで社会を変えていくことを目指します。

変革の時を迎えているHondaは、カーボンニュートラルの実現に向けてHondaらしく取り組み、これまでと同じように皆さんにワクワクをお届けしていきます。

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