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2021.10.25

未来をつくる挑戦
~研究所社長が語る新領域の研究開発

2021年9月30日、Hondaは、モビリティの可能性を“3次元”や、時間や空間の制限に縛られない“4次元”、 さらには宇宙へと拡大する新領域へのチャレンジを発表。具体的には「Honda eVTOL(電動垂直離陸機)」、 「Hondaアバターロボット(分身ロボ)」、そして「宇宙への挑戦」、3つの領域の方向性を示しました。

なぜHondaはこうした新領域にチャレンジするのか。 本田技術研究所の代表取締役社長 大津啓司に研究開発に秘めた想いや狙いを聞きました。

大津啓司

株式会社本田技術研究所
代表取締役社長 
大津 啓司 (おおつ けいじ)

1983年、本田技術研究所入社。四輪車用エンジンの開発に長く携わり、 2018年、本田技研工業執行役員として、品質管理を担当。2021年4月より現職となり、未来技術の開発の舵を取る。

我々が “未来” をつくる

ーーーー 社長就任から約半年。Hondaでの本田技術研究所の役割とは。

本田技術研究所は、1948年に本田技研工業が設立されたあと、目先の業績に左右されずに、 より自由な発想で研究開発に専念できるようにと、1960年に本田技研工業から独立した会社です。
お客さま一人ひとりの役に立ち、夢を叶え、喜びの総和を拡げていくことが、 結果的に世の中を良くしていくという想いで、人に役立つ技術を研究開発しています。

大津啓司

これまで研究所は、量産開発から先進技術開発まで、すべての研究開発を担っていました。 それが、ここ数年で量産開発はすべて本田技研工業に移し、研究所は既存領域に捉われず、より将来の成長に向けた仕込み、 つまりは先進領域に集中して、「未知の世界の開拓を通じた新価値創造」をさらに強化する体制へと進化しました。

従業員一人ひとりにもそういう理解が深まっていて、「自分たちで未来をつくっていくんだ」という熱が研究所全体に広がってきています。 eVTOLもロボット分野もそう。まさに開発スピードが上がってきていると実感しています。 単純な比較はできませんが、昔の体制のままだったらここまでうまく新領域の開発も進まなかったのではないかと思います。

eVTOL、アバターロボ、宇宙への挑戦はそれぞれ、移動にまつわる価値を変え、社会をより良くしていくためのもの。 つまり、モビリティを変革して新しい未来をつくることです。 まさに、それを独創的な技術やアイデア、デザインで実現するのが、われわれ研究所のミッションです。

陸・海・空と4次元への挑戦

ーーーー 「Honda eVTOL」や「Hondaアバターロボット」でお客さまに提供する価値とは。

時間の価値の最大化を考えています。ひとつは、eVTOL。これは空のモビリティで、3次元モビリティと表現しています。 飛行場に縛られず、一定のスペースがあれば、施設の屋上などさまざまな場所で乗り降りすることが可能になります。 さらに、そこから地上のモビリティとつながることで、シームレスに目的地に行けるようになる。 つまり、移動プロセスと時間の最短化ができます。

「Honda eVTOL」と「Hondaアバターロボット」

もうひとつはアバターロボットで、4次元モビリティですね。アバターロボットでは、「アバター」、日本語で「分身」という意味が示すとおり、 自分がその場にいなくても作業や体験ができるようになります。地球の反対側の人と会ったり、宇宙に疑似的に行ったりすることもできるのです。 できなかったことができるようになる。4次元で言えば、移動の時間の概念をなくすということです。

3次元モビリティでは、時間を最短化する。時間の価値を高める。さらに4次元では時間の概念をもなくしてしまう。こういう価値の提供を考えています。

ーーーー 「Honda eVTOL」で目指す“モビリティ変革”とは。

「Honda eVTOL」でいうと、ただ機体をつくるだけではなく、eVTOLを中心とした新たなモビリティエコシステムをつくり出し、 お客さまの生活の可能性を拡げること。これが、私たちが目指していることです。

私たちがつくり出そうとしているのは、飛行機よりももっと地上に近いところにある新しい空のレイヤーで、eVTOLを中心にした移動のネットワークです。 eVTOLを中心に、予約システム、インフラ、さらに自動車などの地上のモビリティをつなげ、ひとつの大きなエコシステムを完成させることで、 シームレスな移動をサービスとして提供したいと考えています。

今の時代、新しいモビリティを考えると、ハードだけ提供すればいいという世界ではなくなっています。 技術について一番にわかっている我々が、機体を作るだけではなく、移動をトータルで考えて、 家を出たときから目的地に到着するまでを、サービスとしてつないで価値を提供していく。そういうものを目指すべきだと思っています。

また、他社のeVTOLがオール電化で100km程度の航続距離なのに対して、Honda のeVTOLはハイブリッド。400km程度の航続距離を確保しようとしています。

日本で言うと、東京~大阪が約400kmですから、eVTOLを使えば、東京~大阪がドアtoドアでたったの2時間になります。 従来の飛行機移動だったら、時間の余裕を持って空港に行って、さらに飛行機から降りたら電車に乗り換えて…と。 2時間というわけにはいきません。

このエコシステムが実現すれば、まさに “モビリティの変革”と言えると思っています

ーーーー 新たな領域への挑戦にもかかわらず、早期に研究開発が進んだ理由は。

Hondaは、創業以来いろいろな商品や技術を提供してきました。 改めてどのような技術を手の内に持っているのかを整理してみると、実は今回の新領域に必要なピースは埋まっていました。

eVTOLで言えば、HondaJetのガスタービン技術や空力技術が生かされています。また、四輪車で培ったハイブリッド技術も生かされている。 ガスタービンとハイブリッドを組み合わせることができるのは、Hondaだけなんじゃないでしょうか。 さらに、航空機の安全性を証明する認証取得の経験も私たちにはあります。

「eVTOL」の風洞テストの様子 「eVTOL」の風洞テストの様子

こうした技術を重ねていくことで、eVTOLもできる。 決して夢追いでやっているわけではありません。“われわれの技術があればできる”と思ってやっています。

また、こういった技術を低コストで実現できるのも自動車会社の強み。自動車会社は普段からコストもかなり意識していて、 当たり前のことなので、意外に気づいていなかったりするけれども、これも強みになってくると思っています。

これは、アバターロボットでも、宇宙領域でも一緒です。宇宙領域では、 ロケットの姿勢制御や誘導制御にクルマの自動運転技術が応用できますし、燃焼技術は内燃機関で培われています。 ロケットエンジンは、2019年末から開発をスタートし、わずか2年で驚くほどの進歩を見せています。 このようなスピードで研究開発が進められているのは、Hondaにこれまで培ったさまざまなコア技術があるからこそです。

大津啓司

次世代を後押しして未来につなぐ

ーーーー これからのHondaを担う若手に期待することは。

Hondaのチャレンジの源泉となる、独創的な技術やアイデアを生み出すのは“人”です。 Hondaは創業から73年を迎えて、これから100年企業に向かっていきますが、 Hondaをこれからも未来永劫輝かせていきたい。お客さまに、よい商品や技術を提供し続けたいと思っています。

“今のHondaをつくる”のは、まさに私たちの役目です。けれど、10年先、あるいは100年企業になって、 その後も魅力的な商品をつくるのは、若い人たちです。Hondaを未来につなげようと本気で思えば思うほど、 人材を大切にし、育てることが重要になるんです。

Hondaには、“正しいことは正しいと認める”文化があります。若い人の提案だろうが、 ベテランの提案だろうが、正しい技術を正しいと認める。それがHondaのいい文化です。技術は特にロジックが大事ですから。 やりたいという気持ちだけではGOは出せませんが、なぜできるかを論理的に説明できれば60~80%くらいの確実性だったとしても背中を押します。

実際、ロケット開発についても若手エンジニアの声でスタートしています。こういった若手の声は大事にしていきたいですし、 どんどん若い人たちを育てていきたいですね。

ーーーー 技術開発をするにあたり大切なこと、次世代につなぎたいことは。

私は常々、「不可能はない」と言っています。これまで技術開発でいろいろな課題に直面してきたが、すべて解決してきたのでそう言っています。技術開発はうまくいかないことも多い。ただそこで「諦めないこと」が大事。逃げたくなるのも、人だから仕方がない。でも、途中で諦めると、それは失敗になってしまいます。でも、3回、4回……とトライして成功すれば、1回目と2回目は“失敗”ではなく、“経験”に変わります

さらに、その中で大事なのは、うまくいかなかったときに原因や本質を見抜いていくこと。何でOKなのか?何でNGなのか?と考えて本質に迫るというプロセスを諦めずに繰り返す。それを何度も繰り返せるようになると、技術ができあがります。そうなれば、もう次は失敗しません。そうやって人は育っていくし、そういうことをやっていくべきだ、というのが今の私の考えです。

ーーーー これからのHonda、そして研究所がつくるものは。

いろいろな新技術や新商品を世に送り出すことで存在価値を高めてきたのがHondaで、それはこれから先の未来でも、当然そうでならなければいけないし、もっと面白い会社にしていけると思っています。

量産開発は、本田技研工業に移りましたが、逆に言うと、本田技研工業は数年先まで。その先は全部、研究所がちゃんと技術を出していかないといけないので、これはもう役割的には相当重い。でも、それを期待されているのが研究所ですから

技術の難易度や市場が形成される予測も含めて、最低でも10年先の技術をつくっていく。それができるように、若い人たちを育てながら、強い研究所にしていくのが最大の私の役目です

何十年先もお客さまに存在を期待されるHondaであるために、新しい技術をどんどん出していって、お客さまに新たな価値を提供していきたいと思います。

※新型コロナウイルス感染症対策を実施した上で取材・撮影を実施しています。

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