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Honda発のベンチャーが、視覚障がい者の自由な移動をサポート
起業までの挑戦を支えた制度「IGNITION」とは

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※写真撮影時のみマスクを外しています。



「視覚に障がいを持つ方にも、自由に歩くことを諦めないでほしい」という想いを持ったHondaのエンジニアが、“起業”という方法で、その技術を世の中に送り出します。

そんな従業員の熱い想いを現実のものにするための制度が、Hondaの新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」。今回新たに、起業・事業化のサポーターを外部から迎えました。

エンジニア、Honda、外部サポーターの三者に共通していたのは、“社会課題に向き合う”という姿勢。実は、これこそが、HondaのDNAそのものなのです。



社会課題に向けたチャレンジ、HondaのDNA

Hondaは創業以来、「技術は人のために」という考えを基本に、数々の社会課題の解決にチャレンジしてきました。Hondaと言えばチャレンジングスピリットをイメージしてくださる方も多く、挑戦していくことがDNAとして脈々と息づいています。

また、従業員が日々の行動指針とする「Hondaフィロソフィー」には、運営方針の一つとして「理論とアイデアと時間を尊重すること」と記されています。今から50年以上前の1970年には、創業者・本田宗一郎の音頭で「アイコン(アイデアコンテスト)」の開催が始まるなど、常に従業員のアイデアを大事にしてきました。

そんな社風から、社内には優れた技術やアイデアが多く存在しますが、実際に商品やサービスとして形にするにはピースが足りず、眠っているアイデアも多いのです。

このような従業員の想い・眠っているアイデアを育て具現化することで、社会課題を解決すると同時に新しい価値の創造に繋げたい、そして挑戦のDNAをさらに鼓舞していきたい。こうした目的で、2017年にHondaの研究所で始まった公募制の新事業創出プログラムが「IGNITION」です。

IGNITIONには様々なアイデアが集まり、その中には、社内で事業化の検討が進むものも出てきました。子どもたちの交通事故を少しでも減らしたいという想いで生まれた、交通安全アドバイスロボ「Ropot」もその一つです。



革新的なアイデアや技術をより早く社会に提供するために。
IGNITIONに加えた「起業」という選択肢

IGNITION発足から4年を経る中で、より多くのアイデアを事業化すべく、様々な制度改革が行われてきました。Hondaの事業との親和性が高いものは社内事業化を目指す一方で、ベンチャーを起業し、その特性を活かして取り組んだ方が、より早く社会に価値を提供できる提案もあったため、「起業」という選択肢を追加。さらに、2021年4月からは、研究所だけでなく、本田技研工業の従業員へと対象を拡大し、在籍年数や所属部門も不問としました。

世の中の課題解決に、Hondaのアイデアで「火をつける」

今回、IGNITION発のベンチャー第1号として、「株式会社Ashirase」が誕生。視覚障がい者向けナビゲーションシステム「あしらせ」を開発しています。

Hondaから新しい風を吹かせるこの試みについて、IGNITIONの運営事務局・羽根田里志と、あしらせ開発者の千野歩、そしてIGNITIONの審査員であり、今回起業に至るまでのサポートを担当してくれた投資ファンド「リアルテックファンド」代表の永田暁彦さんに話を聞きました。

羽根田 「IGNITIONは『点火』という意味で、『従業員個人の中に眠っている、社会変革に対する“熱い想い”へ火をつける』という意味合いを込めています。IGNITIONでの提案の中には、内部で事業化を進めるものもあれば、ベンチャー起業・事業化というプロセスがふさわしいものもあります。手段はいずれにしろ、『社会の役に立ちたい』という熱い想いを持ったHondaの従業員たちをサポートし、アイデアを形にしていくのがこの制度です」

IGNITIONの事務局 羽根田里志
IGNITIONの事務局 羽根田里志

羽根田 「Hondaの中には、様々な技術・アイデアが眠っていて、チャレンジ精神もあります。しかし、既存事業の枠にはまらないアイデアの場合は、なかなかカタチにはなりにくいことも。そんな夢を持った社員の技術やアイデアをどうすれば世に出せるかを考え、IGNITIONという制度を作り、さらに起業という選択肢も加えたんです」

重要なのは技術ではなく、人。強い意志があれば、それは原動力になる

起業という新制度において、協力者として欠かせないのが、外部投資家やベンチャーキャピタルの存在。こうしたHonda社外の方には、IGNITIONがどんな制度に見えているのか、永田さんが説明してくれました。

リアルテックファンド代表 永田暁彦さん
リアルテックファンド代表 永田暁彦さん

永田さん 「ベンチャーキャピタルの視点から見ても、IGNITIONは非常に魅力的です。Hondaは日本を代表するグローバルカンパニーであり、ものづくりメーカーとしての素晴らしさは誰もが知るところですが、その向こう側にいるHondaのエンジニアや研究者がもっと浮き出てくることこそが、IGNITIONの価値だと思います。

世間一般からリアルテックファンドは、技術に投資する会社だと思われがちなのですが、実際には、社会課題に対するソリューションに投資をしているんです。この点において、弊社とHondaのIGNITIONは方向性が一致しています。

スタートアップをサポートする立場からすると、起業するにあたって重要なのは技術ではなく『人』であり、『世の中の課題を解決したい』という強い思いがあるかどうか。そこに強い意志があれば、目の前の壁を乗り越える原動力になりますし、何よりその想いがあることで、多くの人に応援され、仲間が増え、さまざまな企業が手伝ってくれるようになりますから」

永田さん 「また、投資家の観点から特筆したいのは、Hondaが送り出したベンチャー企業に対して、出資を20%未満にすると定めていること。この20%という数字は、外部株主としてのマジョリティ感が出ないぎりぎりのラインです。送り出したベンチャー企業は、卒業生だけど支配下ではない。そんなHondaのメッセージがこの数字からも読み取れますよね」

自由に歩くことを諦めないでほしい。「あしらせ」に乗せた想い

ここからは、IGNITION発のベンチャー企業を立ち上げ、「あしらせ」の開発を行う千野に話を聞きました。

シューズイン型のナビゲーションシステム「あしらせ」
シューズイン型のナビゲーションシステム「あしらせ」

あしらせは、靴にデバイスを取り付けると、スマートフォンのナビゲーションアプリと連動し、直進、右左折、停止といった情報を振動で通知し、視覚に障がいを持つ人の歩行をサポートするもの。「歩く」ことをモビリティととらえ、視覚障がい者にも自由な移動を実現してほしい。そうした想いが「あしらせ」開発の原点です。

千野 「Hondaはクルマやバイクなどのモビリティメーカーです。Hondaで自動運転や電気自動車の開発などに携わっていく中で『モビリティの本質とはなんだろう』と考えるようになりました。

そんなとき、視覚に障がいをもつ身内が川に落ちて命を落とすというつらい事故があり、その事故をきっかけに、歩くことも、ひとつのモビリティだと改めて考えるようになりました。

その後、視覚障がい者の方々とお話をする機会が増えていったのですが、『歩く』という私たち健常者にとっては“普通”のことを、諦めているという事実に気づかされました。視覚障がい者の皆さんに、自由に歩くことを諦めないでほしい。そんな想いから、あしらせの開発に乗り出しました

千野は、あしらせの製品化に向けて、視覚に障がいを持つ人へのヒアリングを何度も重ねたといいます。

千野 「ヒアリングで分かったのが、視覚障がい者の多くは、主に聴覚と触覚を駆使することで日々の生活を送っているということ。だから、足に注目することにしました。

あしらせは、シューズに取り付けるタイプのデバイスで、足に振動を与えてナビゲーションをしていきます。聴覚を邪魔せず、白杖を持つ手もふさぎません。また、歩行時には足裏の触覚を大切にしているという視覚障がい者の声を取り入れたことで、足裏にデバイスを設置しない立体構造のシューズ取り付け型という発想に至りました」






改良を重ねたあしらせを実際に使用した方からは、うれしい声も。

千野 「視覚障がい者の方にあしらせを実際に使ってもらった際、歩行に余裕ができたおかげで、『花屋の前で、花を選ぶ人の声が聞こえるようになった』という感想をもらいました。その何気ない言葉がうれしく、とても励みになりました」

どこまでも社会課題に寄り添って考えたからこそ、「あしらせ」ができあがった

ついに起業へとこぎつけた千野ですが、ここに至るまでの道のりは平たんなものではなかったとのこと。

あしらせ開発者 千野歩
あしらせ開発者 千野歩

千野 「私は、1年前にIGNITIONに応募しましたが、そのときは最終選考で落選しています。ただ、IGNITIONに落ちたからといってあしらせの開発を諦める気はありませんでした。

あしらせというモビリティは、きっと多くの視覚障がい者の『諦めない』につながる。そう信じていろんな機会に挑戦を続けていました。そんなときに、羽根田さんから起業という選択肢を加えたIGNITIONで、もう一度チャレンジしてみないか、と声をかけてもらったんです」

千野 「起業に向けて、自分たちには何が足りないかを徹底的に洗い出したのですが、事業面の弱さを痛感しました。チームは技術屋集団で、経営などの事業的な観点が弱かったんです。そこで、リアルテックファンドの皆さんから意見をもらい、事業計画などを磨いていきました」

永田さん 「Hondaの創業時に、技術やアイデアでどんどん突っ走る本田宗一郎さんを、経営や営業面で藤沢武夫さんが支えたという話は有名ですよね?ベンチャーキャピタルとして、僕らは藤沢武夫さんのような存在になりたいんです。今回は、技術と信念を持つ千野さんのアイデアを、僕らは事業的観点でサポートしました」

千野 「なんとしても、あしらせを世に出すという想いの強さには自負がありました。でも、それを、どうやって事業として進めていくのか、計画を作り直していく中で具体的な視点をいただいたことはもちろんありがたかったですし、情熱や信念が大切だというアドバイスには背中を押される気持ちでしたね」

永田 「今だから言えますが、当初は足りないところだらけでした(笑)。ただ、千野さんの信念はとても強かったので、心配はしていませんでした。実際に少しのアドバイスで改善点を理解し、事業計画もどんどん現実的なものになっていきました」


永田さん 「起業においては、技術やプロダクト以上に、どれだけ社会課題に寄り添えているのか、その課題をかみ砕いて理解できているのか、どれだけエンドユーザーのことを考えられているかが大切なポイントになります。その点、千野さんはどこまでも『視覚障がい者の歩行』という社会課題に真剣に向き合っていました。

今回、リアルテックファンドとしては、IGNITIONを通しての支援のほか、株式会社Ashiraseに対しての出資も決めています。千野さんの社会課題への寄り添い方に共感し、弊社としてもぜひ同じ方法を向いて、あしらせを世に出していきたいと考えたからです」



Hondaの「新しい風」を、一歩ずつ、外の世界へ

HondaのDNAとも言えるチャレンジングスピリット。IGNITIONは、さらにそれを活性化し、社会課題の解決や新たな価値の創造を加速させていく一つの手段です。

羽根田 「意志をもって動き出し、社会の役に立ちたいと考える従業員たちを本気でサポートすることで、世の中を少しでも良くしていきたいと考えます。

この制度がきっかけとなり、社内業務でも、起業という形でも、皆がより様々なチャレンジをし、新しい風を起こして、世の中にないモノ・コトを創り出してほしい。そして、そういった挑戦が、社会の課題をひとつでも解決し、ひとりでも多くの人の移動と暮らしの可能性を拡げられることを願っています

今後も、あしらせに続く新しいソリューションをご紹介できるときがやってくるはずです。Hondaの新たな挑戦にご期待ください。



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