歴代VTECエンジン紹介突き抜ける加速と超高回転サウンド・F20C

歴代VTECエンジン紹介突き抜ける加速と超高回転サウンド・F20C

高回転用・低回転用という2種類のカムを使い分け、痛快なスポーツ性能と日常の扱いやすさや経済性を高次元に両立させる、Honda独創の可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」。歴代のVTECエンジンを振り返りながら、Hondaスポーツに共通するキャラクターに迫っていきます。今回は、1999年にデビューしたS2000に搭載された「F20C」についてご紹介します。

スペック(1999 S2000)

エンジン形式F20C
エンジン種類水冷直列4気筒縦置
弁機構DOHC チェーン・ギア駆動 吸気2 排気2
総排気量(cm³)1997
内径×行程(mm)87.0×84.0
圧縮比11.7
燃料供給装置形式電子燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
最高出力(PS/rpm)250/8,300
最大トルク(kgm/rpm)22.2/7,500

主な搭載車種

1999 S2000

「リアルオープンスポーツ」のためのVTECエンジン

S2000のエンジンを開発するにあたり最大のテーマとなったのは、高出力と低排出ガスを両立させながら、レスポンスを高め、しかもコンパクトなサイズとすること。
最高出力250PS/8,300rpm、リッターあたり125PS、最大トルク22.2kgm/7,500rpmという世界最高水準のスペックは、進化したVTEC構造を中心に、ショートストローク化、吸気ポートのストレート化、容量の最適化などにより達成している。

ローラー同軸VTECロッカーアーム

世界最高水準の高出力を得るためのフリクションの低減と高回転化、コンパクト化を達成するためにDOHC VTEC機構を進化。その中核をなすのが、新設計したローラー同軸VTECロッカーアームである。

フリクション低減のためにカムとの接触部にローラーを適用。その上で慣性重量を低減するために、ローラーの中にVTEC切り替え用の連結ピンを内蔵させた一体構造を新開発した。また、金属射出成形法を新たに採用してロッカーアームを高精度に仕上げることとあわせ、ローラー同軸VTEC構造を実現。動弁系のフリクションを70%低減させている。
充填効率の向上により優れたトルク特性を得られたこと、最高許容回転数9,000rpmという超高回転技術によって、5,850rpm~9,000rpmという広い回転域をハイバルブタイミング域に設定し、高レスポンスと高出力を実現した。

コンパクトな動弁系

カムシャフトは中空構造としてカムジャーナルへの給油通路とすることで油路を集約化。バルブスプリング形状、カムシャフトを駆動するギアの小径化、バルブ挟み角の狭角化などにより、DOHC VTECながら、従来のSOHCと同じレベルにまでヘッドをコンパクト化しているのもポイントである。

その後の進化・展開

2005年には、ストロークを90.7mmまで延長することでエンジンを2.2L化した「F22C」へと進化。高回転での痛快な伸びをスポイルすることなく、低・中回転域でのトルクを強化し、デビュー以来貫いてきた「速いだけでなく、乗り手が『楽しい』と思える性能」の熟成をさらに進めた。
10年におよぶS2000の生産期間を通じて、このクルマを手にしたオーナーは世界で11万人以上にも及び、いまなお多くの方がサーキットで、ワインディングで、ストリートでこのクルマを楽しみ続けている。リアルオープンスポーツという唯一無二のコンセプトを世界中のスポーツカーファンに印象づけた一基である。

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