
高回転用・低回転用という2種類のカムを使い分け、痛快なスポーツ性能と日常の扱いやすさや経済性を高次元に両立させる、Honda独創の可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」。歴代のVTECエンジンを振り返りながら、Hondaスポーツに共通するキャラクターに迫っていきます。今回は、1995年の「インテグラ TYPE R」に搭載された「B18C(96 spec.R)」についてご紹介します。
スペック(1995 インテグラ TYPE R)
エンジン形式 | B18C 96 spec.R |
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エンジン種類 | 水冷直列4気筒横置 |
弁機構 | DOHC ベルト駆動 吸気2 排気2 |
総排気量(cm³) | 1797 |
内径×行程(mm) | 81.0×87.2 |
圧縮比 | 11.1 |
燃料供給装置形式 | 電子燃料噴射式(ホンダPGM-FI) |
最高出力(PS/rpm) | 200/8,000 |
最大トルク(kgm/rpm) | 18.5/7,500 |
主な搭載車種
- 1995 インテグラ TYPE R
ダイナミックレスポンス&加速フィール
1992年にデビューした「NSX-R」の考え方を身近なライトウエイトスポーツである「インテグラ」に採り入れて開発された初代「インテグラ TYPE R」。そこに搭載されていたのが、この「B18C 96 spec.R」である。
ベースとなったのは、1.8L自然吸気エンジンとして初めてリッターあたり100馬力、許容回転数8,000回転を実現した1993年モデル「インテグラ SiR」の1.8L DOHC VTECエンジン。もともと量産モデルとして究極とも言えるポテンシャルを持ったこのエンジンに、吸排気系を中心としたチューンアップを敢行。約60点におよぶ専用パーツを新たに開発し、通常のエンジンであれば息つきが始まる領域からさらに伸び上がる爽快感と、自然吸気エンジンとして世界最高峰のリッターあたり111馬力の高出力を実現。高回転特性を活かすクロスレシオのトランスミッションを採用し、ドライバーの意思に対してより忠実に反応するピックアップ性能を実現した。

高出力化のためのチューニング
伸びのあるエンジンフィールを実現するために、ピストンの形状を変更。単にピストン冠面を盛り上げるだけでなく、内部の肉厚を削り込み、ピストン重量を増加させることなく圧縮比の大幅アップ(10.6→11.1)を実現している。
燃焼室により多くの混合気を送り込むため、インテークマニホールドはシングルポート化。シンプルかつ口径を広く取れることにより、特に高回転域での吸気量を増加させている。バルブも傘部を薄くして軽量化するとともにエアインテーク、スロットルボディも径を拡大した上でバルブシート開口角度も鋭角化。
外気の導入はフェンダー内に設置した開口部から行うことで吸気温を下げ、高出力化を図った。
排気は各部のパイプ径をアップさせるとともに、エキゾーストパイプの集合部を鋭角にして高回転域の排圧を低下。中・低回転域の排気慣性を高めて吸気効率を高めている。

エンジン回転がハイカム領域に突入した際の加速感と、はじけるようなサウンドは、いまでも多くのスポーツカーファンの語り草となっている。「VTEC」のエキサイティングなイメージを確固たるものにした一基であると言えよう。

B18C 96 spec.Rを搭載したインテグラ TYPE R。