非常に楽しいクルマですね。今のクルマにはない、操る楽しさに満ちています。パワーステアリングがついていないし、ブレーキにもサーボがついていません。自分の力だけが頼りで、途中に余計なものを介していないので、すごくフィーリングが良いんですよね。
2013年の7月に定年退職したのですが、実はもともとHondaのクルマが好きでHondaに入って研究所に勤務していました。当時、僕が入社する時には第一期のF1は終わっていたのですが、F1を設計したくてHondaに入ったんです。Hondaにはレーシングカーを作る人達がいて、このクルマはそのレーシングカーをやっていた人達がそのまま市販車を作ったようなものなのですよね。だから、ずば抜けた性能を出せたのだと思います。このS800クーペは、元々フランスから輸入したそうですが、研究所の詳しい人に見てもらったら、これは西ドイツ仕様なんだそうです。S800クーペはボディの四隅にサイドマーカーがあるはずですけど、これはついていないんです。それが西ドイツ仕様の証だということでした。とても稀少なモデルです。